一話一膳
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本日のお品書き
インゲンの配置に新妻の色気を感じる。
高野豆腐とインゲンの煮物
  煮物といえばお惣菜業界の家老である。
  決して主君にはなれないが、それがいることで人心が和む、そんな一品である。
  まだ修行過程にあるわたくしにもわかることは、

                              煮物は具が多すぎるとまずくなる。

ということだ。
  一部の地方に見られる「がめ煮」のような食事のメイン=主君になるようなものは別だが、わたくしがここで取り上げるのはあくまで家老としての煮物である。その具は多くても3つ、基本は2つである。

  さて、今回とりあげるのは技術レベルがもっとも低い「高野豆腐とインゲン」である。何しろ調理過程は「アジつけしたダシ汁にぶち込む。のちに裏返す」であるから、そう簡単には失敗できない。まさに初心者の新妻にはうってつけである(このページの閲覧者に新妻がいるとは思えないが、まあいいや)。
  まず、だし汁。ためらわず「ほんだし」のようなお手軽なものを使うべきだ。わたしくがここで扱うのはあくまで家庭料理であり、マンガの「美味しんぼ」における美食倶楽部のそれであってはならない。このマンガによればだしのとり方はこうなる。

1、ふんだんに削りたての鰹節を使う
2、昆布は「引き出し昆布」(ほんの3秒しかお湯に通さない)に限る

                      こんなことを毎日の料理でやってられるか!

◆材料(2人前)
だし汁 300cc
40cc
しょうゆ 大さじ1杯
みりん 大さじ1杯
砂糖 大さじ1杯
小さじ半分
高野豆腐 2ケ
インゲン 6本
◆手順
1.   だし汁300CCに酒、しょうゆ、みりん、砂糖、塩を加えて煮立てる。
2.   中火のまま高野豆腐を加えて、6分たったら弱火にして裏返す。
3.   4分たったらインゲンを加える。
4.   3分たったら出来上がり。

  繰り返すが、ダシを手抜くべきである。
  本格的な煮物でない限り、ダシを真面目に作る必要はない。ただし、「ほんだし」などのパッケージにある希釈割合を遵守すること。

  味付けの酒、醤油、みりん、さとう、塩は適当で問題ないが、いくつか知っておくと便利なこと。

・一般のレシピでは砂糖が多すぎる。高野豆腐のパッケージには「1個につき大さじ1」程度の指示があるが、その半分以下で問題はない。

・新妻は醤油や塩を入れすぎないように注意してほしい。基本的にはダシで味がついていると考えてほしい。醤油は香りつけ、塩はもう一息の味を加える程度、というスタンスを死守するといい。

・煮物では、「しょうゆとみりんは1対1」が原則。魚を煮るときはベツの配合になるが、野菜系はあくまで対等の関係にする。


  素直で素朴で手のかからない一膳がここにある。
  新妻はこれをメイン料理として提示してはならない。あくまで家老、引き立て役である。まるで「栄養バランスのために」提示されたかのように、そっと出す。感想は期待しないほうがいい。旦那は何も言わなくても、小さな満足感を得ている。

  家老は、いつまでも主役にはなれない。
  でも、家老がいなければ幕府は安定しない。家庭も、きっと同じだ。




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