一話一膳
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本日のお品書き
皮むきがちょっと下手だね。
しめさば
 つくるのが難しそうな料理がある。
 「そんなの素人にできるのか?」と素人は思うが、ある程度の手間をかけるだけで作れる料理がある。

 たとえば、しめさばだ。
 スーパーや魚屋さんなどでは、完成品をよく売っている。半身のままで、切り分ければ食べられるようにしてある。昆布で〆ていることも多いだろう。

 もちろん、それもおいしい。
 しかし、自分で作るともっとおいしい。さりとて人は、つまり料理の素人さんは、

「そんなの素人にできるのか?」

として諦める。


 なーに、そんなに難しいことじゃない。
 ちょっと手間をかけるだけで、すごく旨いものが食える。料理人になった気分を味わえる。技術はほとんどいらない。手間だけだ。

 まずは、真サバを買ってくる。
 「サバの生き腐れ」という言葉があるように、原則的に刺身では、つまり生では食べられない魚である。そこで、お店の人に訊いてみよう。

「しめさば、できますか?」


 この質問が、手間の第一歩である。
 素人が見てもわかるわけがないから、お店の人はハッキリと答えてくれる。最近は、この手のコミュニケーションも取れない奥様が増えているから、「しめさばできます」などの表示がされていることが多い。

 さばくのは、2枚下ろし。
 これは、素人さんでは無理だろう。お店の人に「しめさば可能」という答えをもらったら、即座に

「しめさばにしたいんで、おろして下さい」

と頼もう。


 2枚下ろしは、頭と内臓を落としたもの。
 片身に背骨が残り、もう片身には小骨が残る。。背骨を外すのは素人さんでも簡単。小骨を抜くには毛抜き(調理器具売り場に必ず売っている)が必要だが、これも道具さえあれば簡単。ピンセットでも、まあ、何とかできる。なーに、多少なら身が崩れてもいいじゃないか。

  え、パッドがない?
 銀色の、四角の、薄手の箱のような調理器具がない。なーに、深めの皿で構わない。片面ずつ漬けるから、それほど深くなくても大丈夫。豪快に行こうじゃないか。じゃあ、レシピいこうか。

◆材料(2人前)
真サバ 半身
小さじ2
カップ1
砂糖 大さじ1
◆手順
1.サバの両面に塩をふって新聞紙に包み、冷蔵庫へ。

2.酢に砂糖を混ぜてパッドに入れる。

3. 3〜24時間放置した1を水で洗って塩を落とし、クッキングペーパーで水気を取る。

4. 3の小骨と背骨を取り、胸のあたりの肉を落とし、薄皮をむく。

5.4を片面15分づつ2に漬ける。

6.刺身に切り分けてできあがり。


 手順の1は、適当で良い。
 「あれ、こんなにかけて大丈夫かな、味が濃くないかな」と不安になるが、あとで洗い流すから大丈夫だ。

 2の酢と砂糖の加減も、適当で良い。
 このレシピ通りだとちょっと甘めになる。

 3が味をわけるポイント。
 サッパリ味が良ければ、あるいは待ち切れなければ3時間で充分。24時間たつと塩がしみこむので濃い目の味になる。

 4が、二歩目にして最大の手間だ。
 多少は身が崩れてもいい、それを合言葉に進める。薄皮をむくときは、頭の側から包丁を入れると、あとは手で一気にむける。わきの肉が多少落ちても、いいじゃないか。

 5は、背骨を取った部分に酢が入るように注意。
 サバの身にお酢がかかると白くなるので、「赤身がほとんど消えたな」くらいの加減になれば良い。

 ふつうの刺身として、しょう油とワサビで食べる。

 うまいぞッ!

と、漫画『クッキングパパ』のような論調で仕上がる。

 なお、保存するにはお酢を少々かけて、ラップにくるんで冷蔵庫へ。
 素人の料理でも3日後くらいまでは日持ちする。乾燥しないように、さらに密封タッパに入れるとベスト。


 さあ、2日後。
 家族の前で言ってみよう。

「ああ、一昨日しめたサバがあるんだ」

 あなたはこの瞬間、料理人になれる。


追記:本レシピは『クッキングパパのレシピ366日』を参考にしました。名著。
 



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