一話一膳
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本日のお品書き
京都人激怒の恐れあり。
カブの炒め物
 京の冬のおばんざい、ってありますよね。
 なんだかよくわからないけど、体に良さそうな気がします。お野菜のお煮しめとか、ダイコンさんのお惣菜とか、「お」とか「さん」とか名前をつけて、野菜をからめて、京都で食べればおばんざい、みたいなイメージがあります。冬でなくてもいい気がするんですけど、「京の冬」とつけるから美味しそう、とでもいいますか。

 ここで京都の人に質問してみましょう。
 おばんざいってどういうものかって。教えておくれやす。

「はぁはぁ、おばんざいねぇ。まいにち食べるおかずですわ。いやいや、たいしたものやぁおまへんわ。でもなぁ、うちら、あんまりおばんざいとは言わへんなあ。よそさんがつけてくれた名前とちゃいますかねえ。ありがたいことですわ。ほな、ぶぶ漬けでも食べてっておくれやす」

 ……ほらほら、始まった。
 京都名物「いけず」が始まった。「うちら」で京都人が特別であることを示唆。相手の言葉を認めておいて、卑下するようなフリをして、相手を持ち上げておいて、「でもなぁ」で引っくり返す。あげくに、「よそさん」で排他精神を明確にし、なおかつ「つけてくれた」でよそ者にヨイショ。思ってもいないくせに「ありがたいことですわ」。トドメが「ぶぶ漬け食えゆうとるんやから、はよお帰り」ですからね。おそろしいおそろしい。

 というのが、我ら非京都人が京都に持つイメージ。
 本当に京都人がこんなことを言うかどうは不明だが、

「あの人たち、そういうこと言いそう」

というのは我ら非京都人の本音。

 京都人は京都人で、期待に応えなきゃいけないと思っているらしい。
 いいかげんにうっとうしいと思いながらも、選りすぐられた良民として

「伝統芸能的いけず」

を披露してくれる。まあ、どっちもどっちなのだ。

 さあ、おばんざい風な料理でも作りますか。

◆材料(4人分)
     カブ中 2個
     サラダ油 大さじ1
    小さじ1
    みりん小さじ1
    大さじ1
     ショウユ 小さじ半
◆手順
1.カブの実は皮を剥いて、イチョウ切りにする

2.カブの茎は5センチくらいの長さに揃える

3. フライパンに油をしき、暖まったら1を投入(中火)

4. カブの実に油が回ったあたりで2を投入

5. ショウユ以外の調味料を入れて炒め続ける

6. 仕上げにショウユを入れて、香りが出たら完成


1では皮を剥かなくてもいいのだが、お上品に作りたければ剥くべき。
3と4で時差をつけるのは、火の通りを均一にするため。カブの茎は火の通りが早いから、これ以上にタイムラグをつけても良い。
5の調味料は厳密にする必要はないが、6の「仕上げのショウユ」は香りつけの役割もあるので遵守してもらいたい。

 京都人に食べさせてみましょう。

「あらあら、おかぶらさんやないの。おいしゅうおますなあ。白と緑がきれいですわ。うちら、こんなお上品なものよう作りませんわ。ほんま、よそさんのお料理にはかないまへん」

 本当にこんなこと言うのかしら。
 カブのことを「かぶら」、鶏肉のことを「かしわ」と言うらしいとは聞いていますが、今でもそうなのかどうかは不明。イメージって怖いですね。カブは冬が旬だす。ほな、作ってみておくれやす。仕上げにぶぶ漬けでも食べてっておくれやす。さっさと帰っておくれやす・・・。
 



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