一話一膳
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本日のお品書き
メインディッシュとしては厳しいか。
鶏ひき肉とゴボウの炒め物
 主婦たるもの、献立に悩まなかった日はないだろう。
 まあ、主夫でも良い。家族という生き物、特に男・子どもというワガママな物体は、いつもこう言うのだ。

「ええぇ、また××××〜」

 伏字の部分には、主婦が日常的につくる献立が入る。
 カレーライス、アジの干物、けんちん汁、ロールキャベツ、ひじきの煮物、湯豆腐、ハンバーグ、ヤマイモの千切り、何が入っても同じことを言うのだ、男・子どもという脳タリンどもは。

 毎日のように、ではなく、そのまま毎日献立を変えるということが、どれほど難しいのかを彼らは知らないのだ。
 そこで賢明なる主婦たちは、必死に献立を考える。しかし。きっと確実に、あなたは思う。

「そんなにあれやこれやと手を替え品を替え、そんなことやってられるかぁぁぁ!」

と。悲痛な叫びである。


 そんな貴女に、解決策を与えよう。

 料理は常に創作である。
 ゆえに、聞いたことも見たこともない料理を作るのだ。そして、それがあたかも太古の昔からあったように、平然とした顔で食卓に供するのだ。

「今夜は『鶏ひき肉とゴボウの炒め物』よ」

 また、愚かなる男・子どもは、「こんな料理知らない」とか言うだろう。  
  気にすることはない。何食わぬ顔で言ってあげよう。夫には、

「うちの実家では定番なのよ」

と。子どもには、

「おばあちゃんがよく作るのよ」

と。どうせわかりゃせんのだ、あいつらは。


◆材料(1人前)
   鶏ひき肉 50グラム
   ゴボウ 20センチ
  しょう油小さじ半分
 A  
  ダシ汁50ML
  小さじ半分
  砂糖小さじ4分の1
  みりん小さじ1
  大さじ1
◆手順
1.ゴボウはピーラーで皮むきして、笹がきにして、水につける(10分以上)

2.フライパンに油を敷いて、中火で鶏ひき肉をざっと炒める。

3. 2に1のゴボウとAを投入し、弱火にして炒める。

4. ゴボウが食べられる硬さになったら、しょう油をふって火を止めて完成。



 材料にこだわることはない。
 鶏ひき肉にはモモとムネがあり、モモのほうが柔らかく脂身も多く高価なのだが、どうせ男・子どもには違いなどわかりはしないのだ。

 ゴボウも同じだ。
 これは値段よりも、土つきを買ってきて下ごしらえしたほうが香りが良い。笹がきされて水につけたパックでも売られている(こちらのほうが手間賃コミで高価)ものの、香りは落ちる。どっちにしても、どうせ男・子どもには以下同文

 Aの味付けは適当で良い。
 ダシ汁を加える料理は調味料を少なめにするのが原則。ダシそれ自体が味になることはご存知だろう。

 2では、鶏ひき肉を細かく砕くように注意したい。
 菜ばしでは難しいので、木ベラなどを使うと良い。この料理は鶏肉からでるダシを味わうものでもあり、丁寧に進めたいプロセスである。「ざっと」というのは、赤い部分がほとんどなくなったか、というくらいの状態。

 3では、ゴボウの水をよく切ること。
 お子様が小さい場合は、笹がきより千切りに近づけたほうが食べ易い。ただし火の通り方を均一にするために、大きさはできるだけそろえること。食感という点では笹がきのほうが勝るので、各家庭の家族構成・力関係などで調整していただくのがよろしい。

 4では、ゴボウのみ味見すること。
 固いゴボウは嫌われる。男・子どもという軟弱な生き物は、固い=食べにくい=まずいという公式を勝手にこしらえる。味覚が発達していない劣等動物なので、食感が全てだと思っているフシがある。料理のことなぞ何も知らないのに、「筋がある」などと苦情を言うことには長けている。たべやすい=旨いというレベルで判断していると思ったほうがいいだろう。

 とくにこのレシピにこだわることはない。
 ひき肉を炒めて野菜と一緒に出せば、一応は、メインディッシュ扱いされる。男・子どもにとって重要なことは、

「とりあえず最近これを食べた記憶はない」

ということなので、遠慮なく創作すると良い。賢明なる主婦の皆さんは、料理とは食材の使いまわしに左右されるものだ、ということをご存知だろう。そう、その料理のために食材を揃えるなんてことは、日常的に継続するのが難しいのだ。

 いいではないですか。

「ほら、今日は牛ひき肉とレンコンの炒め物よ!」
 



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