一話一膳
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本日のお品書き
こんな盛り付けでは大変なことになります
いくら丼
 きちんとした職業なのに、世間から「ああ、あの仕事ね」と「特殊=ゆえに異常」の烙印を押される職業はいくつかあります。

 ・・・いまアナタ、「いくつか」を想像しましたね?
 想像したからには、今後の人生で「職業に貴賎はない」なんてキレイごとを言っちゃいけませんよ。そんなキレイごとが言われるようになったからには、貴賎があるってことを人々が隠したいと思っていることになります。

 それはさておき、代表例は警察か・・・じゃなくて、一膳の話題です。
 あぶないあぶない。料理を作ることを生業にしている人っていますよね。広義の言葉なら料理人とかコックさん(なぜかこっちには「さん」がつきます)です。

 しかしもちろん、料理人にはいくつかの種類があります
 まずは料理のジャンル別で分類できます。フランス料理の人と日本料理の人ってちょっと違いますよね。中華料理の人とイタリアン(なぜかこれには「料理」がつかない)の人も違いますね。大まかに言えば、どの料理を作るかで分けられる、またあるいは、その料理の「国籍」で分けられるってことになります。

 ところが、日本料理の場合。
 普通の日本料理、まあその懐石とか、会席とか、肉豆腐とか、えびしんじょう揚げとか、抽象度がまちまちですけど、そういうのを作る人がいますよね。そのかたわら、日本料理でありながら、その料理人はそのジャンルの料理しか絶対に作らない、っていう一派がいますよね。

 ソバ職人?
 それもそうですね。ソバしか打てないような気がします。他には?

「あの、マクラの話題となんか関係あるんすか?」

 ・・・何も言ってませんよ。


 正解は、寿司職人です。
 寿司の世界は日本料理の中でもかなり特殊。ネタとシャリに「仕事をしておく」なんていう言い方すらあります。ただでさえ、料理人またはコックさんの世界は修行が厳しいのですが、寿司職人の修行はとりわけ厳しいのです。

 新入りがご飯を炊いたとします。
 うまく炊けていない。そこで親方、

「こんなもんがシャリになるかぁ!!」

と絶叫し、炊飯釜を新入りに向かって投げる(新入り流血の事態)なんて当然らしいですよ。

 さて、問題は寿司飯なのです。
 あ、「スシメシ」って読みます。ではいきます。

◆材料(2人前)
ご飯 1膳半
お酢 大さじ1
砂糖 小さじ半
焼きノリ ハガキ半分大
いくらのしょう油漬け
大葉 1枚
◆手順
1.できれば固めにたいたご飯をボールによそって、粗熱を取る

2.お酢と砂糖を混ぜ、1に加えて混ぜ込む

3. 2を丼によそい、いくらのしょう油漬けを好きなだけのせる

4. 3に手でちぎったノリをちらし、刻んだ大葉をあしらって完成


 1ではボールでなく木製の寿司桶を使うのが正しいのですが、ま、寿司職人さんも見ていないことだし、これでいいでしょう。

 2では混ぜ合わせる加減が厳密に問われるのが普通ですが、ま、寿司職人さんも見ていないことだし、これで(以下略)。

 3と4にも手順に間違いがあれば包丁が飛んできますが、ま、寿司職人さんも見ていないことだ(以下略)。


 漫画家の東海林さだおさんが、寿司屋さんの恐怖体験について書いておりました。
 正確な記述は忘れましたが、以下のような様子だったとか。

1、さだお、地方の名店らしき寿司屋さんに勇気を持って入店。
2、さだお、カウンターに座り、本日のネタを確認しようとネタケースをのぞく。
3、さだお、マグロやタコやウニはそれとわかるものの、何の魚かわからないものをいくつか発見。
4、さだお、「それは何ですか?」と寿司職人に恐る恐る質問。
5、寿司職人、以下のように答える。

「・・・魚です」。


 ・・・。
 恐怖に縛られて客が食べさせていただくのが寿司、その世界を構築するべく鍛えられるのが寿司職人さま。

 食事くらい、気楽に作って気楽においしく頂きたいものです。
 



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