予備校講師でわるかったな!





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ウソがつけない 6月7日
  城南予備校では5月の「進研模試」が返却されたようである。講師の元には全ての担当クラスの生徒の成績一覧表が配られる。チューター諸氏は「偏差値がどうの、素点がどうの・・・」というけれど、僕はそんなものに興味はない。もちろんちゃんと見るにしても、全体の平均偏差値が65を超えるクラス(僕の担当レベルだと80%はそうである)に関してはそんなものはゴミと同じなのだ。

  僕はどうも生徒に恐れられる講師のようだが、それはきっと毒舌のせいであろう。毒舌とは正確には笑いの対象なのだが、多くの生徒にとってそうではない。毒舌は吐けば吐くほど本人は楽しくなるのでどこまでも行ってしまう。毒舌を吐かれる生徒には実に気の毒である。

「はあああ? この問題で3を選ぶやつがいるのか。おめでたいねえ。だから、ただ授業を聞いているだけなんだろ。あれほど言ったじゃないか、andはそしてじゃないって。どれとどれを繋ぐが考えるだって。(中略:具体的な説明)説明聞いてるだけならサルでもヨダレたらしてその辺あるいているアホ高校生にもできるんだよ。あんたらが解けるかどうかなんだよ。へっ、セツメイ書き取って楽しいか。ノンキだねえ。お前のメモやノートが試験を受けるのか? 脳入ってないんじゃないの。お前が試験を独りで受けるんだよ。3を選んでくれたら問題作ったやつは大喜びだよ。うちの大学から馬鹿を排除できたって。(後略)」

  本当はこの後にもっとすごい毒舌をしても良かったが、横須賀のマンションから26メートルダイブをされても困るので遠慮しておく。

  特に浪人生クラスでは常にこの調子である。ただし、それにはいくつかの条件がある。その場で演習させて間違えた場合と、教えた項目である場合と、単純な知識ではなく思考を要求する設問の場合と、ある程度の大学レベルを目指す生徒の場合と、ある程度のレベルの大学の問題の場合である。

  そう、それは偏差値なんか問題にはならない高いレベルの大学で要求される大切な実力を訊いている場合なのだ。偏差値が大切なのは進研模試なら平均が65以下のレベルまでだ。そこから上は難しい問題で本番と同じ条件で正解を出す力が要求される。そのレベルにある学生に、たかが模試の数字を気にさせるほうがおかしいのである。

  疲れ果てて千葉県の某駅にたどり着く。切符を5年ぶりになくした。改札に行きその旨を申告する。
「どちらから?」
「横浜です」
「お支払いいただくしか・・・」
  僕は黙って払う。ウソをつけないのだ。
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