各ページのご案内はコチラ
Copyright (c) 2004
takeshi nobuhara All Rights Reserved.
|
|
もう20年くらい前になるけど、少年チャンピオンに「青い空を、白い雲が、かけてった」という(ようなタイトルの)漫画があった。たしか中学生を描いたものだったと思う。特別なストーリーも人気もなく20回くらいで終わってしまった。おそらく中学生の成熟過程を描いたようなものだったと思われる。「推測」の言葉が多くて申し訳ない。だって、今の高校生の皆様が生まれてもない時代の話だから、と言い訳。
迷子の旅も3日目にして晴れ。7時半に宿を出てひたすら南下する。どうやら仙台の近くにいたらしい。福島まで2時間かかる。
一人旅のうえにドライブだから、いろいろ考えたいと思う。話し相手はいないし、実際に話したのは宿を取るときだけだった。考えるべきことはたくさんあるはずだ。だからかえってなおさら、まるでall the 比較級構文のように運転に意識を集中する。裏磐梯と言われる高原に出たのはお昼過ぎ。素敵な高原型のリゾートホテルを見つけてランチ。鴨のローストと鮎の何とか焼き。もちろん生ビールを1杯。庭があるので許可を貰ってそこで休む。淡い酔いを覚ます必要がある。
広い庭の目の前に沼が広がる。かたわらにはテニスコートがあり、「宿泊者無料」の流水で洗われた冷やしトマトがある。ウッドチェアがいくつか。沼から出てきた鴨(ガチョウ? アヒルではない)が庭を散歩している。わずかな宿泊者の中の子どもが餌をあげていて、鴨が群がる。鳥の声、弱い風の音、そして静寂。たまに子どもをなだめる母親の声。僕はウッドチェアに座る。
沼の向こうに森があり、そのかなたに力強い尾根を持つ磐梯山が見える。「サウンド・オブ・ミュージック」の日本版。僕の座るチェアにトンボが止まる。秋だ。
何かを考えたいと思う。磐梯山の青い空に白い雲がかけてゆく。なんだ、本当にそういう景色があるんだ。目を閉じて思考に力を入れる。そして僕は気がつく。なんだ、34年も生きてきたくせに、僕には何もないじゃないか。そうだ、僕はカラッポなんだ。僕は今まで何も自分に残してこなかったんだと。
一人旅をするたびに、あることを考える。でももちろんそうはしない。だから今こうして日記を書ける。僕はある意味でロマンチストだけど、ある意味でリアリストでもあるから。迷子はいつか見つかるから。 |
|