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眼鏡越しの空 11月1日
  早寝したので4時に目覚めてしまう。雨だ。新聞を少し読んでからもう1度布団に入る。ウトウトしたところで目覚まし時計が鳴る。パターンだよな。

  さすがに朝はテレビでニュースを観るが、「今日はあったかいですね。湿気も高いから蒸し暑く感じたりもします」などと言っている。そうかな?
  おかしいなあと思いながら、やっぱり寒いのでカーディガンを半そでの上に着る。念のため長袖のシャツもリュックに入れる。電車に乗っても、まだ寒い。

  あ、風邪を引いたんだ。


  頭痛がする。確かに熱っぽい感じがする。まいった、唯一の一日仕事の月曜日に朝に引くなんて。それでも無理やり朝飯を食べる。食べなければ授業に集中できない。
  コンビニでユンケルとオレンジジュースを買う。とにかく水分を取って汗をかき、熱を出してしまわないといけない。
  2限が終わる。苦しいが昼食。酢豚弁当と野菜スープ。やはり米が食べにくい。
  熱があるとどうしてもナチュラルハイになる。目がくらむので生徒様と視線を合わせるのが難しい。グラグラしているので、何を喋っているのか把握できなくなったり、言葉の順番が逆になったりする(だからあ、toがit以下を指すから、名詞の後ろは形容詞だって何度も言ったじゃないか、とか)。

  どの授業でも、最初に必ず体調が悪いことは告知する。そうすれば生徒様は(多少は)大人なので気を使ってくれるからだ。いや、正確に言えば「少しおかしい先生がさらにおかしいのか、しょうがないな」とあきらめてくれるからだ。
  それでも「きちんと授業はできる。俺はプロだ」と宣言するのがズルイというか。


  現役N1。何かの説明をしていたら、どうしてもドリカムの「眼鏡越しの空」を唄いたくなってしまった。ナチュラルハイだとわかっているのだが止まらないかもしれない。

♪あ〜なたのように、なれたらと憧れる〜


  身の危険を感じ、最前列の生徒様たち(なぜか全員女子だった)に手を上げさせる。
  「さて、最近の若い皆さんはドリカムというグループを知っているか? 知っているものは手を上げなさい」

  全員手を上げる。何人か笑っている気配がある。あきれているのかもしれない。
  「そうか。俺もそんなにおじさんではなかったのか。安心した」

  仮定法の説明だったのだ。熱があったのだ。今日も生徒様の信用を失った。
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