予備校講師でわるかったな!





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ゆるめない 2月3日
  家を出る30分前に香水を挿す。オーデトワレなので、挿した2時間後あたりがもっと も香るはずだ。それはちょうど授業の始まる前だ。
  慎重にシャツを選び、ネクタイを合わせる。
  「ネクタイをしめると気が締まる」言う人が多いけれど、僕はカフスボタンをして時計 をつける瞬間にそれを感じる。緊張感の中でネクタイをしめる。

  ネクタイを緩めるという行為が大嫌いだ。緩めるくらいなら、ハズせばいい。緩めたネ クタイは、ネクタイじゃない。それはただの薄汚いヒモにすぎない。衣服に対する礼儀が 尽くせないなら、それは2流の人間である証だ。僕はその結び方を1つしか知らないが、 慎重にネクタイの絞りを考える。納得がいくまで、10分かけてでも締めなおす。


  今日は今年度初の体験授業だ。残念ながら参加者は多くない。予備校の冬の時代の終わりは節分 の今日でも見えてこない。
  「MARCH目標」と「早慶上智・国公立目標」の2本立て。体験授業でも緩めちゃい けない。この時期に参加する熱意ある生徒様ですら、1年後の合格率は50%にはるかに 届かないだろう。戦いはもう始まっているのだ。

  かなりのハイペースで授業を終わらせる。昨年と同じテキストだが、少し趣向を変えて みた。センター試験の結果に見られる学力低下に配慮して、ハイレベルのクラスですら「 主格のof」の説明を省いてみた。微調整をしながら、最善を探す必要がある。


  帰宅する。鏡を見る。ネクタイは曲がっていない。緩んでもいない。パソコンを開き、 カフスをはずした瞬間に、緊張感は切れる。まずは開幕したのだ。
  さあ諸君、ビールの時間だ。
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