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出会いとは、つまりすなわち |
6月29日 |
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小さな花束を買うつもりだった。前にも何回か書いたように、今日は市進の
事務職員(常勤さんという呼称です)が退職する日だ。
僕のような非カタギの講師と違って、パートである常勤さんは円満退社であ
る。彼女自身から今年度内に退職することは1月に教えてもらった。
常勤さんとはパートの事務職員である。
予備校は事務作業の多い現場なので、正規の事務社員だけでは仕事が回らな
い。テキストや解答の準備、出欠確認、お茶くみ、簡単な掃除、受付対応、教
室のチョーク管理など、つねに予備校の校舎の中の作業的なマネジメントをす
るわけだ。
言い換えれば、予備校の黒子(くろこ=裏方役のたとえ)。目立たず、確実
に仕事をして、予備校を動かす部分だ。電車にたとえれば車輪である。車体や
エンジン(なのかな?)だけでは走れない。車輪があるから重い物体が前に進
む。
退職する彼女は見事に黒子を演じていた。勤務時間が講師とかぶることが少
ない職種なので、講師は基本的に常勤さんの名前も覚えないことが多い。でも
僕は彼女の名前を知っていたし、たまに軽口を叩きあうこともあった。
花束じゃつまんないな。時間がないのでプールはパスしてサウナで汗をかき
ながら考える。そうだ、小さな手紙を書こう。
かけられる時間は10分。枚数は2枚。この日記の10%くらいの文章で収
めなければいけない。推敲する時間もない。一発書き。
1コマ目が始まる前に受付に駆け寄って渡す。
2コマ目が始まった直後くらいが常勤さんの退社時間だから、15分の休み
時間で話す暇はないだろう。その時間は受付が混雑するのだ。直後に授業があ
るのに、湿っぽくなるのもイヤだ。
「××さん、今日が最後ですよね? 花束の代わりにラブレターです」
メールと違って、文章が手元に残らない。今こうやって夜の12時過ぎにな
ってしまえば、正確な記憶も残らない。残るのは彼女が手にした現物だけだ。
現実的に彼女ともう1度会う可能性は少ないだろう。同じ千葉県民だからゼ
ロではないだろうが、現実とはそういうものだ。手紙の最後を30秒で考えた
。
>またいつか、どこかで。
この後に何が続くのだろう。
会いたいですね、と僕は書きたかったのだろうか。
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