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荒くれ者の街でタイ料理 7月13日
  ビールが到着するまでは順調だった。
  以下は、在日外国人をおとしめる日記ではない。


  夕方5時、店いた客は我々だけだ。
  タイ人とおぼしきご夫人、オーダーを取るだけの日本語リテラシーはあるよう だ。タイ料理を食べなれない我々は、内容などを質問しつつオーダーする。

  我々は魚料理を指差す。
  これが旨いよとご夫人は言う。煮魚にトマトのチリソースをかけたものだと、 一応は日本語でメニューに書いてある。僕はトマトを積極的に食べないので、そ の脇にある蒸し魚の料理はどうかと提案する。

ご夫人「それは生の魚が必要。いま店のものが仕入れに行っている。もうすぐ戻 ってくるが出るまで時間がかかる」

  そうか。
  ご夫人は電話でご主人らしき人に連絡を取る。やはり仕入れには時間がかかる ようだ。他のメニューを検討しよう。


  野菜炒め、肉の唐揚げ、サラダなどを注文。
  その2分後にご主人らしき人が店に戻ってくる。彼は日本人のようだが、はて 。

  ご夫人は厨房に入る。
  ご主人が注文の確認にやってくる。日本語のつたないご夫人だったので、確認 したいのだろう。それはわかる。

ご主人「それは辛い。辛くても大丈夫なのか」

  我々は3人とも辛いものが好きだ。そうでなければタイ料理店に来るものか。
  大丈夫だと伝えると、ご主人は「やめておけ」という。


  なんだと言うのだ。
  しかし、ご主人は身長180センチくらいのいかつい男である。元プロレスラー 、と言われても納得できなくもない。

  我々は「わかった。日本人が食べられる辛さにしてくれ」とご主人の意向を飲 む。
  ご主人、安心して厨房に向かってメニューの確認をする。


「その野菜炒めは、さっきの注文と違っている。どっちなのだ?!」

と振り向きざまに言う。
  「さっきの注文」はご夫人が薦めてくれたもので、「その野菜炒め」はご主人 が薦めたものだ。タイ料理に慣れない我々は「はい、それそれ」とテキトーに返 事をしたのだ。

僕「はい、わかりました。それでいいです。その、今、頼んだほう」


  我々に不安の気持ちがよぎる。
  本当に日本語は通じているのだろうか。するとすかさず、ご主人がまたまたや ってくる。

「これ、サービスだ。食え」

  これとは、玉ねぎを何かの調味料に漬け込んだものらしい。ビンに詰められて いて、箸で取って食べる。
  美味しく頂いていると、3分後にまたご主人がやってくる。

「それ食うか食わないか。食ったら、フタを閉めろ」

  おっかねえ。
  ってか、先に言ってくれよ。我々は店のチョイスに問題があったかどうかを検 討している(心の中で)。


  1分後、また主人が怒鳴る。

この料理は作れない、とコックが言っている。これは辛すぎる。食べられない !」

  どういう店なのだ(;一_一)
  さっき、普通の辛さにしてくれって言っただろうが。ってか、「この料理は作 れない」って、ここは『美味しんぼ』の美食倶楽部か。コックとは、どうやらさ っきのタイ人らしきご夫人のようだ。

  ヘイコラしていると、やっと料理が出てくる。
  料理はどれも美味しい。文句ない。確かに辛さは日本人 向けに調整されている。あえて難点を挙げれば、「翌日にケ×で味わう」と言わ れるほどの辛さではない点か。


  4時間近くたって、店を出る。
  2次会に向かう時点で我々は(やっと)気がつく。

  ご主人とのやりとりからすると、ご主人は日本語が堪能なだけで、日本人では ないだろうと。だから「この料理は作れない、とコックが・・・」のくだりも、 ベツのニュアンスによる発言を翻訳した結果であろうと。

  辛さの件も土地柄から判断して、「辛すぎる!」というクレームが相次いだの だろうと。荒くれの客が暴れるのが日常の土地なのであろうと。それを未然に防 ぐための必死の説得であったのだろうと。

  いやはや、東京都もA立区(仮名)となると、こういう店もあるもんですな。


追記:「健志、英語を語る」中級文法編『仮定法』をアップしました。
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