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何となくえっち 5月23日
  テスト中にケータイが鳴った。
  彼女は軽々と電話に出て「えー、へいき。うん、すぐ終わるから。大丈夫だよ 。うんうん」と大声で喋りだす。僕はプッチンと切れてケータイを奪い取り、教 室の外に連れ出す。猛烈に説教をするが、説教の意味が理解できないらしい。も う、本当にどうなっているのかこの国は?

  という夢で目覚めたのが8時半。
  今日もよく晴れている。眠いけど起床することに。この手の怒り系の夢をみた ときは意外に目覚めがいいのだ。予知夢じゃないといいんだけど、いつかはそう なりそうなんだけど。


  30分かけてメールを3通書いてから予習。
  意外にと言えば誤解されるかもしれないが、最下位レベルであるLクラスの予習 に時間がかかる。テキストにある問題は大学入試レベルであるから、それをどこ まで噛み砕くか考えるのに苦労する。もちろん彼ら・彼女らなりに真剣にやって はいるのであろうが、前置詞の後ろに動詞の原形を置くくらいの事態は常に予想 されるからだ。

  解くのも簡単で、教えるのも簡単だ。
  ルールだけ使えば解けるし、ルールさえ話せば(書けば)教えられるからだ。 しかし現実には、教えるという行為を受け取った側(生徒様だ)が「学べる」と いう保証はない。だから逆に、「学ぶ」という立場に身を置いて「教わる」とい うことがどういうものであればベストなのかを想像する。それがとても難しい。 他人のクツを履く人はいないのだ。


  お昼ごはんはキツネそば。
  またかと思うなかれ。今日はダブルキツネそばだ。賞味期限が昨日で切れた油 揚げが2枚あったからだ。あほかと思うなかれ。そばは長野県の戸隠産の生ソバ (きそば)である。戸隠そばと言えばグルメも脱帽する・・・というほどのでは ないが、まあ有名なのだよ。だからどうした、と思われるとどうしようもないけ どね。

  恒例の食後読書。
  今日も晴れているので布団も洗濯物も絶好調に干せる。もう少し日本語力を磨 こう。じゃなくて感想文だ。


  『えっち主義』菜摘ひかるを読了。
  著者は元風俗嬢で現在はライター兼漫画家。漫画誌『ヤングチャンピオン』に 連載されていたエッセイ集。あなどれず好著。

  僕は風俗に行ったことがない。
  興味がないというよりも、少し潔癖症的なところがあって、湿度の高い場所が 嫌いなのだ(ゆえに、布団を干しがち)。その代わりになるのかどうか知らない けど、本書のような風俗ルポ的エッセイを比較的読むほうだと思う。しかも古本 で100円だったし。

  本書は前半が風俗にまつわるエッセイ。
  まあその、アッチ系の話ばかりなので文庫でまとめて読むと食傷気味になるこ とはあるが、毒舌ながらも軽妙でリズムがいい。たとえば、「どんな客が嫌いか 」というありがちな質問の答え。

>この際ハッキリ言っちゃおう。なにが嫌いって、そりゃーもちろんバカですわ 。一も二もなくバカですわ。
  身も蓋もないいい方だけど、バカな客ほど迷惑なものはない。普通の知り合い とかならまだしも、客でいながら、さらにバカなのだ。うっわ、タチ悪いなあオ イ。
  バカ退場。バカNG。バカ出禁。以上。しゅーりょー。


  ところが、本書の中ほどで著者は風俗嬢であることをやめる。
  その後も風俗に関係するネタのエッセイが続いていくが、現役を離れた自分が 風俗について語る資格はないだろうと語りだす。風俗ライターとして現場にいる のは大きな、唯一の武器「だった」。連載最終回から引用。

>このまま同じ場所でダラダラとやっていたら先は見えていると思った。風俗嬢 だった自分の幻影にいつまでもしがみついて、細々とネタを切り売りする姿はみ っともないと思った。

  前半の「湿度の高さ」がだんだんと失われていくのが良い。
  たいしたレベルではないにしても、こういう気楽で楽しいエッセイを読ませて くれた著者に感謝・・・とまで書くと大げさかもね。


  2回目の昼食は鮭チャーハン。
  鮭は昨日の残り物で。校舎へ。我慢の限界を超えて、生徒様をかなり厳しく注 意(実況中継略w)。並べ換えだ。途中経過から。

Taking turns in conversation is same all over the world.

  ここまで作った時点で、まだ選択肢に the が余っている。
  さあどうするか。ここでは take turns in doing (交代で〜する)を共通知識( 教える人と教わる人の了解事項)としてあることにする。もし読者様が教えると したら、どこから教えますか。

1、形容詞 same は通例 the と同時に使う
2、conversation の前に the を置かない理由

  生徒様のレベルや残り時間などの条件があるので一般化はできない。
  まず普通のコースは1から説明することだろう。王道で、外しはない教え方だ 。実際に、1の事実は知っておくべきことだ。あまねき受験参考書はそこからス タートし、そこで終わるだろう。

  工夫する人は2から入る。
  生徒様の間違いポイントを意識するタイプの教え方だ。もちろんその後で1を 説明する必要はあるが、予習の誤り=生徒様の弱点をつくということで、まあ普 通よりちょっと良い説明だろうか。

  ここでどうするかを考えていくのが予習で、ここで実際にどうするかを判断す るのが生の授業だ。
  失礼なことを言えば、説明していてラクで確実な方法は1に決まっている。学 習者にとって覚えるべきポイントが明確になるからだ(イヤミじゃないよ)。高 校野球にたとえれば、「とにかくゴロを転がせ」という監督のアドバイスみたい なものだ。

  しかし僕は、1の道はもちろん2の道も選ばない。
  1なら参考書でも学べること、2なら凡庸な授業を受けることになるからだ。 その程度で「満足」を与えられるなら、時給は1,500円くらいでいいだろう。誤解 を恐れずに書けば、その程度の授業で満足する生徒と講師のレベルと言える。


  ではどうしたか?
  もちろんそれはここには書かない。職務上のヒミツなので。大学生で塾講をや っている人は考えてみてください(メールしてくれれば教えます)。結果的には 2と1は説明するが、その前に2つのステップを置く。

A=2と1の習得を「この授業内で完成」させるための方法
B=「より応用が利く」考え方を与える方法

  以上がヒント。これ以上書くと一般読者に迷惑だろう。ここで書くのは、この タイミングで「我慢の限界を超え」たということだけ。


「てめえの問題意識がなくて聞いてるだけならバカでもできるんだッ! ビデオ でも見てろッ! 問題集でも買って読んでろッ! バカ退場。バカNG。バカ出 禁。以上。しゅーりょー」

と言いたかったが言わず。また問題になるからね(-_-;)
  しかし、弱くなったもんだよなあ。僕が、じゃないですよ。


  このあたり、いつも書いているが、学ぶことが授業を真剣に聴くことだと思っ ている子どもが多すぎる。
  これはむしろ子どものせいではなく、親や教師といった大人が教育をサボって きた結果ではないかと思う。真剣に聴くというのは聴かないよりはマシという程 度で、それが何かの習得につながることはほとんどない。自分の思考能力の立ち 位置と、そこで語られる内容とのズレを探していくことが「学び」なのだが。ま あ、もうこれはあきらめるべきなのかもしれないなあ。


  帰宅して夕食。
  暑いのになぜか湯豆腐。実に件名だ。ヘンな想像をした男子の皆様、すいませ ん。


追記:上記の本を紹介するためアマゾンのリンクを検索したときに、著者の菜摘 ひかるが物故者であることを発見した。2002年11月死去(この文庫が発売された 3ヵ月後)。享年29歳。ご冥福をお祈りします。

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