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幻想としての内覧会

６月２日

  どの部屋に行っても布団が引いてあるのだ。
  僕を見習って干せとは主張しないが、押入れにしまうくらいできないのか。自堕落なんだよ、お前らいいかげんにしろよと叫んだときが目覚め。何かの暗示だろうか。ただの夢のような気もする。

  朝から新居の「内覧会」へ。
  工事が完了した物件を引渡す前に、「これで、ＯＫ？」と買い手（僕ですね）に確認させる重要な行事。参加者は僕を含めて５人。たっぷりイチャモンつけまっせ。

  詳しいレポートエッセイは後日に譲る。
  結論としては「見つかるわ見つかるわ細かいキズ」だった。木材のささくれ、フローリングのヘコミ、板の歪み、クロス（壁紙）のコスレなど、パッと見ではわかりっこない項目がたくさん出てきた。26箇所ほど修繕を頼むことになった。そのうち２箇所くらいは「まあこのくらいなら許せるか」というもの。つまり24 箇所くらいは直してもらわないと話にならない。

  書類にまとめてハンコを押して・・・という事務作業が１時間弱続いた。
  新聞社３社が勢揃いして契約を取ろうとするとか、掃除用品のお試しセットを申し込めとか、エレベーターや宅配ボックスの使用法説明とか、えんえんと続く。申し込み用紙だチラシだと紙をたくさん貰う。全てを終了して外に出ても、家具屋さんがチラシ配りに来ている。

「内覧会に来ていた方ですか？　これ、××にありますうちの店のチラシなんですが・・・」

  これだけチヤホヤされるのは大学の入学式以来かもしれない。肝心の確認会（指摘箇所の修理をチェックする）は２週間後。どうなることか。

  お昼過ぎ。
  集ってもらった４人は先に帰ってもらった。最寄駅まで歩く途中に韓国料理店を発見して石焼ビビンパ840円。悪からず。小皿料理が３点サービスだったので全体的にはまずまずか。この町に住むんだなあという感慨も出てくる。いい天気。ちょっと暑いくらい。

  スーパーに寄ってから急ぎ帰宅して原稿仕事。
  あれこれ組み立てるだけなので原稿作業というほうがいいのかも。この手の仕事、完成する原稿量に比べてウンウン唸りながら考えている時間が非常に長い。オリジナルの原稿を書くわけでもないのに、資料とにらめっこする時間が長いのだ。お金を払うほうは「これだけの量でこんなに金を取るのかよ」と思うだろうなあ。でもね、見えない部分に手をかけるのがいい仕事なんですよぉ。

  ２時43分ごろに久しぶりの地震。
  震度３くらい。焦るよなあ。また傷が増えたんじゃないか？　原稿作業は１時間半。トータル300分になった。全体の枠組みができたから、明日からはワープロ打ちだの整理だのに移ることになる。

  焼きソバ食って校舎へ。
  Ｌクラス「質問してください」アンケートの最終日。何を質問してもいいというルールなので、成績下位のクラスのほうが面白いものを思いつくだろう。成績がふるわないから真面目に人生を生きていないということではなくて、何かが気になって勉強という具体的・社会的な営みに入っていけないのかも、ということだ。まあ、こういうのは心理カウンセラーが偽善として言いそうなことだが。
  では質問例を１つだけ。

Ｑ：「愛」って・・・何ですか？

Ａ：幻想です。

  うそうそ(^_^;)
  抽象概念に定義を与えるのって虚しいんだよね、ハッキリ言って。「あの、例の、ホラホラ、ああいうさ、そうそうそれそれ」という事象（物事のありよう？）に仮に名前をつけるだけなんだから。で、その名前で一応は共通認識にしようっていう社会的な取り決めなんだから。現代文やっている人は知ってるはずだけど、「記号」ってやつですね。
  こっち方面は、また僕の不明領域である言語学方面に行っちゃうからやめとこ。

  本の話題に持ってけ。
  愛と言えば、瀬戸内寂聴のエッセイがあるね。高校生には難しいかな。じゃあ、辻仁成と江国香織の『恋するために生まれた』なんてどうかしら。ビミョーなところもあるけれど、恋だの愛だのについて言葉を尽くしたリレーエッセイの名著だからね。

  僕の意見を書けって？
  信じることと同義。「無償の愛」とか「人類愛」とか「性愛」とか「愛の流刑地」とか、ちょっと最後のは関係ないけど（あれ、あるかな？）、全て説明がつきます。そうですね、どこまで行っても幻想で、それを消さないために消したくないために消そうとする自分を認めたくないために「愛って何？」と自問するしかないんですよ。問うているうちは信じているんですよ。だから幻想なんですよ、やっぱり。
  イヤな大人だなあ(^。^)y-.。o○

  帰宅して夕食のメインはクロダイの刺身。
  めずらしくサクで買った。もうタイの旬は過ぎているが、見た目の良さと値段の安さで買ってみた。なかなか旨い。副菜は茹でたアスパラガス（これから１ヶ月が旬で旨いのだ）、厚揚げとブナピーの煮付け（白ネギの輪切りをのせて京都名産黒七味をかけていただく、美味）など。

  久しぶりにビールを２缶飲む。
  たぶん３ヶ月ぶりくらいだろう。ダイエットが続いていたからね。しかし、そろそろビールの季節である。今日はかなり長い一日でぐったりと疲れていたため。そうか、ついに嫁が来るんだな・・・、長かった、いやこれからの１ヶ月も長いな・・・あおい、愛しているから・・・。

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