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読者に配慮する独り旅 10月21日


  10時50分起床。
  あっぱれな寝坊。昨晩の就寝は2時半近くになったから、時間の絶対量として はちょい寝坊くらいかな。帰宅後の

仕上げビールと冷酒

は良くなかった。きのう書いたようにお店の飲み物がいまひとつの味で、しかも 痛恨の寝過ごしということでやや飲みすぎた。二日酔いレベルは5段階で1くら い。やや生活に支障が出る、というほどでもないくらいだっけ、自分で書いてい て忘れるか。まあ、

人は分類を好む生き物

という一般論でお茶をにごしておく。ゴマカスこと。


  暑いくらいの秋晴れ。
  お昼前に干した洗濯物は4時には乾いた。もちろん布団干しも良好。今日は日 常瑣末の記述を省略。たいしたことをやってないので。読書感想文。


  『時刻表ひとり旅』宮脇俊三を読了。
  テツという言葉のなかった時代に書かれた、テツ世界への誘いの本。
  講談社現代新書に所収されるには奇書なれど良書。

  宮脇俊三先生の本はだいたい読んだつもりだった。
  が、多少は読み落としがあるようで、本書をたまたま新古書店の棚に見つける ことができた。昭和56年(1981年)初版の本だが、名著ゆえに新装再版がなった ようで上記リンクは新装のもの。

  先生がもともと編集者であったことから推察できるように、読者への気配りが バツグンである。
  テツの世界なんてのは異常者の世界としか言いようがないのだけど、それを何 とかマトモな人間(非テツ)に理解してもらおうとする苦心の筆遣いが良い。序 章から。

>だから、時刻表とは何なのか、どこに魅力があるのか、それについて一度、詳 しく細かく綴ってみたいとの気持ちを抱き続けてきた。
  それを、これから試みようと思う。
  もとより対象が大き過ぎて、象を撫でるようになるだろう。また、四十余年に わたって時刻表を愛読してきたといっても、私なりの偏頗(信原注:へんぱ=片 寄っていること)な関心の域を出ないから、広く深い全容を言いあらわすことは 、できっこない。たぶん、時刻表のおもしろさの一部に触れた断片集のようにな るだろう。
  けれども、それらの断片から時刻表が無言で表現している広い背景と深い事情 を感じとり、大の男が熟読するに値する書物だとわかってくださる賢明な読者も おられるにちがいない。

  品があり、読者への配慮がある。
  僕も見習いたいと思うが、たぶんムリだと思う。宮脇俊三先生は鉄道紀行文の 最良の書き手として君臨している、と言っても過言はないはず。まあしかし、

こういう本を読むってのはいったいどういう人種なんだ

という疑念は晴れないけれど。文句なしにすばらしい本だ。


  校舎へ。
  某科目講師から最近の生徒様の日本語力について情報をいただく。某講師が生徒様から相談を受けた。選択肢から正解を選ぼうにも、

選択肢の日本語の意味がわからない

という相談だったとか。わからない選択肢(しかも正解となるそれら)の例。

・「物色する」
・「奥ゆかしい」
・「詮索する」

  まあ、日常的に高校生が使う単語(日本語ですw)ではない。
  自分で書くのはムリでも、読んで意味がわかれば良い単語たちと言えるだろうか。だいたいああいう感じ、くらいの理解で足りるとも言える。

僕「ってかそれ以前に、詮索なんて読めないんじゃない?」
某「いや、ちゃんと(選択肢自体に)フリガナはふってあるんだけどね」


  いくつかの問題点がある。
  日本語力の遅れという問題はもちろんあるし、小学生に英語なんか教えていいのかという問題はある。だいたい、たぶん今まで3回くらい書いたと思うけど、小説『セカチュー』をマンガにしないと読めないという時代である。言語を自分の存在する世界(あるいは存在しても良かった世界)と結び付けられないという問題がある。

  ま、それはいい。
  そんなことは教育評論家にでも言えること。むしろ、そんな選択肢を用意しない入試問題を設定する必要があるだろう。予想される反論を書いておこう。

・「それでは入試が成立しない」
・「あの科目にはそれ以外の力が働いているから仕方がないのだ」
・「じゃあ現代文なんかどうするんだよ」

僕の意見はない。あるけど書かない、が正しいかな。


  2年生は出席率が非常に良くなかった。
  5割以下。学校の中間試験とか、修学旅行といったところかな。慣れてはきたけれど、ちょっとビックリするよね。少人数だと授業ピッチが上がるので、余談をする暇もあった。定例試験の結果。最上位、中間位、最低位の順番。

71.4→61.0→54.1

少しだけとはいえ、下位レベルの底上げができてきただろうか。まだわからない。

  休み時間に某カンフェリー(生徒様の進路指導担当者)と話す。
  特定の生徒様が話題。もちろん僕のクラスにいる生徒様についてである。あの科目がどうで、志望校がどうで、将来の職業志望がどうで、といったこと。僕のような講師の立場だと受からせるのが最後かつ最強の目標ではあるけれど、個人的に生徒様を担当するカンフェリーはそうでもない。

この生徒がこの大学に行って、そのあとどうなるのか

に配慮することにもなる。個人的なコミットメントの度合いが高いからだ。大変な仕事だなと思う。しかしそれでも、僕の立場は崩さない。あくまで、

あなたが行きたい大学に行く具体的な方策を講じるのが仕事だ、その後のことは知らない

である。少なくとも、ウェブなんぞで本音はめったに書かない。「めったに」というところが奥ゆかしい。


  授業で「シリコン時代」という表現が出てきた。
  これは文脈的にどういう意味か、という話をした。えーと、the Bronze Age とかthe Stone Age といった固有名詞化している言葉との対比の問題ですね。長文の内容は「コンピュータは生活のスミズミに入り始めた」というものである。そもそも内容が古いと思うが、それはともかく。

シリコン○○○

  この○○○に何が入るかな、というクイズを設定。
  指名してみると、「バレー」という回答を得た。う〜ん時代だね。シリコンバレーという地名はIT先進地域という文脈で使われる固有名詞だから、テキストの本文とは合致しない。

  しかしそれでも、シリコンバレーという言葉が自分のゴイにあるのは、高校2年生としてはたいしたものである。
  たとえ聞いたことがあるだけでも、大事な知識である。本文に準拠した解答は「チップ」なのだが、質問する相手によってはとんでもない回答が戻ってきただろう。

「おっぱいに入れる奴だろ!」

と思ったあなたはオヤジです(^。^)


  夕飯。
  ナメタケをエノキダケではなくブナピーで作ったが、ハッキリしない味になった。ブナピーはブナシメジとエノキを掛け合わせた白いキノコのことだったと思う。モヤシとウインナーの炒め物。カブの甘酢漬け。刺身はイシガレイ。ヒラメに似て美味。

  日本酒は新潟の『雪鶴 純米酒』。
  常温で飲むとするり口当たりが良い。中口。ヌル燗にしても同じ印象。ラベルに「飲み飽きしない」とあるように、悪く言えば特徴がなく、よく言えば安定感がある。地味ながらもきちんと造ってあるという古きよき日本酒だろう。日常飲みにはうってつけな、地味で良い仕事というところ。独り旅は永遠に続くだろうか?
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