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集中力 5月19日
  小説を選ぶのが難しいからエッセイに逃げる。エッセイは飽きるから新書を読む。新書に進むとハウツーものが目に付いて読んでしまう。

  伊集院静の「母の男言葉」。週刊文春に12年にもわたって連載された「二日酔い主義」の最終巻である。ちょうど僕が大学生のころに連載が始まったはずで、実際に当時は文庫本になるたびに読んでいた作家だ。心が感じたことを小説ではなくエッセイにしていく、そういう姿勢がハッキリとした固いエッセイが多い。だから東海林さだおを読むのは違った心持で読めるエッセイだ。
  しかし残念ながらこの本を読む限り、面白くなくなってしまった。とにかく新しいことは全て否定して、最近の若者・子どもはなってない、昔は良かった。テレビに出てくる女子アナはみんなバカだとこきおろし、その一方で自分が好きな競馬騎手の武豊と松井秀喜だけは理由もなく絶賛。それでいうことが「贔屓だからしょうがない」と来た。もうしばらくこの作家を読むことはないだろう。

  棋士の谷川浩司の「集中力」。10年以上前に羽生善治が台頭するまでは完全なトップ棋士だった。21歳で最年少名人。しかし羽生世代が活躍するにつれて失速。90年代後半は屈辱の時代を送ったが、この数年は復調気味。
  一度負けて、そこから再び巻き返した(そうとしている)人は尊敬に値する。タイトルは勝負に勝つ能力の中で最も大切なのが集中力である、ということらしい(次点は思考力、記憶力の順)。将棋の具体的な上達法などの指導もあるが、誰にでも読める内容であり、ある物事に向かうための心の持ちようがわかるような気がする。将棋好きな人なら、羽生という絶対に近い存在を谷川がどのようにとらえようとしているか、そういう側面から読むことができる。僕は羽生が好きだけどかえって面白かった。

  「「わかりやすい説明」の技術」。この手のハウツー本はほとんどが下らないのだが、意外に役に立った。当然のことながら「わかりやすい説明」なんて予備校講師の技術の初歩中の初歩である。あまりにも初歩のことなので、自分にとって復習になった。
  面白い例が一つあった。説明上手な人は、1つのテーマについて講演を依頼された場合、それが3日コースでも6時間コースでも1時間でも10分間でもまとめることができる。なぜなら説明する事項の優先順位=見出しを細かくつけてあるから。下手な人は一部を説明しすぎて時間が足りなくなってしまうのだ、と。
  僕は基本的に授業を延長しないことをモットーにしているから、こういうものごとの考え方がいつでもどこでもできるようにしておく必要がある。プレゼンテーションが苦手な会社人の人は読んでみてください。

  小説に戻る。村山由佳「すべての雲は銀の・・・」。日記でもちょっと紹介したけど、実に特徴とつかみどころのない小説だった。結末もないのと同じ。そのくせ、スイスイと読めたし、実際に読後感も良かった。自分の中に何かを残してくれたような気もするし、単なる時間つぶしに過ぎなかったような気もする。でも、すごく爽やかで良かったよ。

  読んでも読んでも、本当に凄い本にはなかなか会えないものですね。だから読むんだろうけど。
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