予備校講師でわるかったな!





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予備校講師の実情その7 9月25日
  今回は休講(=授業が突然中止になること)について。

  予備校講師だって人の子だから(たぶん)、どうしても担当する授業を休むしかない場合がある。その理由の筆頭はもちろん病気(という名目の寝坊や二日酔いもあるかもしれない)。あるいは予定された冠婚葬祭。講習のときには、講師のダブルブッキング、つまり同じ時間に別の予備校の講座を入れてしまった、などという笑えない話もある。

  予備校は一つの講座を一人の先生が通して担当するものだから、その担当講師が休んだ場合は「休講」になる。とりあえずその日の授業を行わないことにして、別の日程で「補講」を行うわけだ。当然のことだが、生徒にはかなりの迷惑がかかる。予定された休講ならば事前告知ができるからいいけど(もちろん良いわけはないが、マシ)、当日に授業のために校舎に行ってみたら休講、これはかなり生徒の信頼を失う。
  「この時間にこれこれのサービス=授業を提供するよ」と言っておき、生徒様から前金(授業料)を頂いておきながら、当日ドタキャン=休講ということである。病気は予定できないからしょうがないことではあるけれど。

  予備校の事務サイドにも迷惑がかかる。補講の日程を組むためには、教室の確保、日程の調整(その時間に、受講生が他の講座を取っているかもしれない)、人材の調整(教室はもちろん講師室だって受付だって人間がたくさん必要なのだ)。そういう手間を省く最善にして最悪の手段は「代講を立てる」、つまり本来の担当講師以外の講師が教壇に立つことだ。業界全体からすればこれは異例なのだが、補講をやる暇がない講習期間はこういうこともある。ところが、市進予備校は珍しく「代講」が基本なのだ。


  幸いなことに、僕は今まで10年間この仕事をやってきて、当日に突然の休講を出したことがない。38度の熱で教壇に立ったこともあるし、腰痛で歩くのもままならないときでも何とか授業をやってきた。自分が受験生だったころ、僕が教えていただいた講師たちは1回も休まなかったから。でももちろん、予定された休講つまり「代講依頼」は何回かある。例えば葬式。
  市進の場合、代講を頼むときは事情を職員に説明し書類を書いて確定する。昨年、祖母が逝去した翌日に僕は早速校舎の職員に報告した。つまり「明日か明後日、代講を出すことになる。本部に伝えて手配の準備をしておきたまえ(こんな偉そうな言い方はしないよ)」と伝えるわけだ。突然の代講をお願いするわけだから、予備校側からすれば講師の手配は最も大切なことだ。もし授業が不成立になったら生徒に返金しなければいけないらしい(あ、裏事情を書くんじゃなかった)。逝去の3日後、つまり僕が職員に事情を話して48時間後には代講の講師が僕のクラスを担当した。

  難しいのは結婚式だ。同じく「冠婚葬祭」であるから、休む口実はある。実際にそうして休む講師は多い。でも、僕にはそれができない。僕が担当する授業は、予備校からすればそうじゃないかもしれないけど、僕からすればそして生徒からすれば信原が担当する授業なのだ。僕が担当しなければ、それがたとえ1回きりの授業であったとしても、それは意味を失う。葬式はその1回が弔うチャンスだが、結婚式は後でも祝福することができる。何しろ彼ら新しい夫婦はそれからも生をつむぐのだから。


  世間に義理を欠くのが基本の予備校講師。それでも僕は思う。俺たちは自動車教習所の教官ではないのだと。そこに自分がいることが存在価値なのだと。決して教官たちを悪く言うわけではないけれど、「教壇にいるのが自分であること」が一番大切な職業の一つなんだと。
  そういうことを理解してくれる人は少ない。そのminority(=少数派)が僕に残された少ないながらも全ての友人(=what few friends I have)。あるいは生徒。ちょっと話それちゃったね。
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