各ページのご案内はコチラ
Copyright (c) 2004
takeshi nobuhara All Rights Reserved.
|
|
今となっては昔の話。うん、たぶん携帯電話でメールを使うのが普通になった直後だ。
彼女は実に元生徒だった。どこか遠くの専門学校に入学して、僕とコンタクトを取ろうとしてくれた。元生徒と会うのはどちらかといえば好きなほうだ。彼ら彼女らが生徒であったころとは違う付き合いかたができるし、それが長い人間関係になることもたまにあるからだ。市進で教壇に立たせてもらった初年度(もう8年前なんだ)の女子生徒と今でも年賀状のやり取りをしている。もう実際に会うことはないんだろうけど。
彼女は僕に話があったんだ。それは知っていた。だからというのか、それが怖くて僕は彼女を避けた。どうしても2人で会ってくれなんて昔の生徒にイキナリ言われても困るじゃないか。しかもメールで。そりゃ、それしか彼女にとってはそれしか連絡手段がないんだけどさ。
やはり女の子と2人で会うのは、基本的に危険な要素をはらむ。デートでなくても、たとえば2人で何かを食べたりするだけでもそれは危険なのだ。食事がセックスの代替行為であることに気がつかない人は多い。まして、元であろうと彼女は生徒だったのだ。そして特に親しくした生徒ではない。
彼女はアポの取り方が下手だった。アポを取る原則は自分でも相手でもいいから忙しい人に合わせること。山手線と九州新幹線の関係に似ている。相手を立てるのではなく、都合を先に設定し積極的に働きかけ、クールに割り切る。考えてみれば僕の数少ない友人たちはみんなその原則を守ってくれる。それが異性であろうが同性であろうが元生徒だろうがスタッフだろうが。
だから僕はそれをハッキリ言う。そんなアポの取り方じゃあ相手にできないよと。彼女は元生徒だが、生徒ではない。生徒相手でも大人の礼儀を優先するのに、それが守れないのでは話にならない。僕は野獣ではないので、ただ単に僕を狙う元生徒と・・・することはしないし、そんあことに興味を持てないのだ。醤油差しに話しかけるほうが楽しいのだ。
彼女は僕にとって最悪の手段を取る。悪趣味になるからそれはここでは書かない。僕はキッチリと返事をする。答えは一つしかないし、それを選ばせたのは彼女なのだ。そして最後のメールが来る。それ以来、彼女からは何の連絡もない。
「先生と出会えたことは私の幸せでした。先生はきっと私のことを忘れてしまうけど、私はできるだけ覚えておきます。本当にありがとうございました!!」
彼女が幸せに生きていることを願う。僕も死ぬまでできる範囲で覚えておく。ちょっとはいいところもあるじゃないか。
|
|