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謎解き上野行脚 10月7日
  上野のマチス展へ。午前中だというのに本当に大混雑している。7割くらいがオバサン、2割くらいがオジサン、残りが僕と同じ世代の ヤング。午前9時くらいの山手線みたいな混雑、という比喩は伝わるだろうか?
  100点以上の展示があって、なかなか大きな展示会である。しかし会場が狭いというか人が多いというか展示物の間の幅が狭いという か、あまり観やすい環境ではない。

  マチスの作品は日本にあんまり存在しないんだろう、半分くらいがポンピドゥーセンターというフランス(だっけ?)の美術館からの借 り物。ネット割引で1200円という値段の高さはしょうがないのか。でも、これじゃあ高すぎて若い人は来ないよ。


  まあまあかな、と外に出る。お昼まで少し時間のある上野公園ももちろん人だかり。カラリと晴れている。動物園に独りで入るのもいい なあと思ったが入場料600円。ちょっと高いような気がする。パス。
  不忍池の近くでは骨董市(露店ばっかり)をやっている。古本の店もあったので覗いてみたら「万朝報」を1部800円で売っている。
  読みは「よろずちょうほう」、日本史で出てくる明治時代の新聞である。そんなものが山積みになっているのも怖いが、見ている自分も怖 い。だいたい、800円というのは高いのか安いのか?

  上野らしく、決まった住所を持たない人たちがあちこちで昼寝をしている。この天気はたまらなく快適だろうなあ。僕はTシャツに長袖 の綿シャツを羽織っている。空気は秋だ。


  地図を持ってこなかったので適当に歩く。すると「旧岩崎邸庭園」というところに出る。ジョサイア・コンドルという建築家の手になる 洋風建築物である。この人も日本史で覚えた記憶がある。ニコライ堂の設計とか、そういう感じだっけ?
  岩崎ということは三菱の創始者(という名前でいいのか?)であり、まあつまり明治時代のお金持ちが
「俺たちはさ、きみたち庶民と違 うんだからね、ふふん」
という意図で建てたということになる。僕はこの手の建築物がけっこう好きなので、ぐふぐふ行って見物する。冷 たい空気をたたえる洋館の中に秋の日差しが降りそそぐ。「サンルーム」まであるというウルトラモダーンな建物だった。もちろんガラガ ラに空いている。

  撞球室(どうきゅう。ビリヤードのこと)の前で誰かの写真撮影をしている。被写体の男(対してスタッフは4人!)はなんとなく見た ことのある芸能人だ。作家だっけ? まあいいや。


  さてここはどこだろう? また適当に歩く。1時になったので昼飯を食べよう。
  小さな居酒屋のランチ750円の「地鶏丼」は旨かった。個人経営らしく、4人座れるカウンターと6人くらい座れる座敷だけ。今日仕 入れた食材がカウンター上のネタケースに入っていて、それが今夜の全てのメニューらしい。カウンターの脇にはそれが出ている。

秋刀魚、カンパチの刺身。水菜と地鶏のサラダ。野菜の煮物・・・。

  せいぜい8品くらいだろうか。清潔でキリっとしている。店主は今日の「お勧め」メニューを墨で書いている途中だった。僕はこういう 店が好きだ。
  店主に「ここはどこですか? 一番近い電車の駅はどこですか??」というズレた質問をする。湯島という地名らしい。台東区と文京区 の境目あたりにある、東京のチベットと呼べる場所だったような(うそ)?


  何かの門がある。なんだろう? あれ、東大の医学部(病院か?)の裏門らしい。例によって勝手に侵入する。僕は大学の構内を見物す るのが好きなのだ。とりあえず自由に入れるし、タダだし。
  ライターを忘れてきたので、スーツ姿で立ちながら煙草をすってメールを打っている謎のお兄さんに火を借りる。なんだなんだという顔 をされる。
  学生なのか職員なのか教授なのか院生なのか、職業地位その他のハッキリしない人たちがチラホラ歩いている。髭を生やしてピンクハウ スを着た怪しいヤング(僕のこと)も自然な感じで紛れ込む。

  どうやら大学病院らしい。東大本体(というのか?)と隣り合うくらいの位置のキャンパスということだ。そういえば「湯島キャンパス 」という言葉があったような気がする(あるのか?)
  大学の構内を都バスが走っている。なんだなんだと行き先を見たら御茶ノ水行きだという。どれくらいの距離があるのかわからないが( バス停の名前すらしらない)乗ってみる。いつかは知っている場所に着くはずだが、いったいここはどこなんだろう? ドキドキする。バ スは5分くらい走ったら御茶ノ水の順天堂病院の前に出る。なんだここだったのか・・・やっと不安な迷子状態を脱出する。

  こういう休日も悪くない。何もかもが未知との遭遇。  
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