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南東北激走!3 10月9日
  まだ2時にもならない。しかし、どこに泊まるか検討する時間になってきた。国道13号を北上する。
  赤湯温泉、上山温泉を通り過ぎる 。赤湯温泉には数年前に入浴したことがある立派な宿があった。ちょっと時間が早すぎるし、飛び込みで泊まらせてもらうレベルの宿じゃ ない。蔵王が国道の右側に見えている。
  山形に泊まろうかと考える。ビジネスホテルをとり、市街に飲みにいく。悪くない。昨日の温泉宿の寂しさもちょっと思い出す。しかし 車はどんどん走る、つまり交通量が少ない。3時前に山形の近くまでくる。晴れている。ようし、ちょっときついけど山を越えて仙台まで 行っちゃおう(と考えたのが間違いだった)。


  山形から仙台までは「山形道」という高速道路が開通している。旧道、つまり一般道は山を越える険しい道のようだ。しかし、今は晴れ ている。時間も早いし、旧道で行こうか。だいいち、僕は高速道路があんまりスキじゃない。飛ばしたところで先に何が待っているんだい ? 短縮した時間は何に使うんだい? だったら旧道に決まってる。山の空気を吸うんだ(まだ間違いには気がつかない)。

  まあまあの山道になってくる。すこし雲が出てくる。山道だもの、それが普通だよねと思う。旧道は杉林に入る。すげえ道だなあ。くね くねと曲がりくねる。それほど高い峠を超えるわけではないのに。周りの車の数が減ってくる。道路が狭くなってくる。やたらと道路標識が出てくる。
「こっち に行けば高速道路」
  知るかっての、俺は山道を堪能するの(このへんで間違いに気がついてもいいような気がする)!

  雨が降り出す。あれま。やっぱ山道だからなあ、道路も空いているし(対向車なんかいやしない)ゆっくり行くか。あれれれれ、道がど んどん険しく、ますます雨が強くなってくる。杉林はいいとして、それぞれの木の高さが尋常ではなくなってくる。空が見えない。うーん 、やっぱり高速道路を使うべきだったか(やっと気がつく)

  気づいてみればもう後戻りはできない。道幅は狭く、路肩は雨で不安な状態だ。一度ほれてしまった人妻との逢瀬のように、それは止め ることのできない力を持つ。ワイパー全開。大雨なんていうレベルじゃない。視界がなくなっていく。杉林はますます高く、濃くなり続け る。受験英語でいう「すればするほど構文」の世界である(これでこのシリーズ3回目だ、実に便利な構文である)。

  あ、これはまずいことになったぞ。視界は10メートルを切る。スコールのせいか杉林のせいか、カーナビ(=人工衛星からの電波で車 の位置を捕捉するのだ)が作動しなくなる。ヘッドライトを上向きにして、時速は15キロ。雨をやりすごすべきか? ガソリンはたくさ んあるし、お茶のペットボトルが1本ある。ちょっとしたおやつもある。一晩過ごすのには問題ない・・・。
  この雨の杉林の中で?? 一人 で???


  走るしかない。たとえ時速15キロでも前には進むのだ。明けない夜がないように、におわない生ゴミがないように、いつかこの山道は 抜けられる(と神様に願う)
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