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essay エッセイ
what it/I used to be 1月2日
  元旦は千葉県某所の実家へ。ドアからドアまで1時間もかからない。スープは冷めるが 酔いはさめない距離である。
  受験の英語にありがちな表現として
“My hometown is different from what it used to be.”
というのがある。和訳は「僕の故郷はもう昔のそれじゃない」となる 。


  2005年元旦午後2時、僕は酔った頭を抱えて散歩に出る。お昼前に元旦の食事を終 え、夕飯は5時半の約束だ。父は実家でのんびりしていて、母はどこかに行ってしまった 。兄弟は夕飯には間に合わない外出だ。
  駅前に出る。町並みが大きく変化している。マクドナルド? いや、これは1年前には あったと思う。100円ショップ? これもあったかもしれない。しかし僕の記憶は9年 前で停止している。小学生のころに通ったおもちゃ屋、中学生のころに通ったレコード屋 は健在だ。まあ、それほど変わってはいないさ。そう言い聞かせる。

  商店街を抜けて、小さな床屋の前を通る。高校時代の友人の実家だ。そこには時間が流 れていない。ふん、時代が変わっても同じものがあるのさ、と誰かに向かって微笑む。
  その近くに公園が見える。僕が幼稚園児のときに遊んだ公園だ。まだ残っているんだな あと思うが、そこには近寄らない。もう、過去でいいじゃないか。


  駅前のパチンコ屋に入る。2軒あったうちの一つは駅前の再開発の流れで数年前に閉店 してしまった。高校生のころよく通った店だった。もう1軒はそれなりに近代化してはい る。しかし客は少ない。ざっと店内を散歩してから出る。徒歩20秒の新しい店に入って 2時間弱で2万円ばかり負ける。

  実にキッチリと5時前に実家に戻る。したたかに酔って帰宅の途につく。駅に向かう途 中に小さなレストランがある。僕が10年以上昔に愛した女の子がアルバイトをしていた 店だ。もちろんその恋はどこにも行かなかったけど、それは大切なものだったのだ、少な くともその頃の僕にとっては。
  雨の中、彼女を待ちながら店先にたたずんだことがある。数年してから、それを小さな 文章にまとめたことがある。そんなことも昔なのだ。そして僕は今日もここにいる。


  そのレストランは名前を変えていた。
  故郷が今の姿になっていたのか、それとも僕が昔の姿になっていたんだろうか?
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