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炙り料理の奥義 2月18日
  僕はまずい料理を出す店が大嫌いである。自分が料理を好むという事情もあるのだが、ラーメン屋から飲み屋から高級中華料理店に至るまで、まずい料理を出す店だけは許せないし、絶対に行かない。

  僕が作る料理は完全な家庭料理であり、決して金を貰って食べさせるものではない。それでも僕はちゃんとした料理を作るし、それは来客がいなくても同じである。アマチュアにはアマチュアの料理があるべきだし、食事をないがしろにする(=どーでもいいやとする)人生は選ばない。
  だから外食(古い言葉だなあ)するときは、きちんとした料理を出す店を選ぶ。もちろん高級で雰囲気を楽しみにすることもあるが、原則は「きちんとした味」の料理を出してもらうことだ。


  家族に招待されて、千葉県某所の「炙り」料理を出す小さな店に行った。今回が3回目の訪問である。
  店の主人は僕の家族の同級生である。本来はイタリアンのシェフであったが、4年前に独立して「炙り料理を出す」飲み屋を始めた。カウンターに8人程度、テーブル席は4人がけが2つ、従業員は主人と奥さんだけという小さな店だ。

  イタリアンから飲み屋の主人に転じた理由は知らない。その経歴から「なんとなくイタリアン」の料理を出すのかと思いきや、ほとんどの料理にその匂いはない。メニューの1例をあげよう。

<本日の刺身>
  白魚、しめ鯖の炙り
<本日のオススメ>
  鶏肉のキッシュ、猪と大根の煮物、砂肝の煮こごり
<薩摩地鶏>
  刺身、生つくね刺、手羽先味噌づけ炙り
<宮崎地鶏>
  スモーク刺、胸肉・モモ肉炙り
<定番>
  牛タン(炙り・ゆで・シチュー)、ポテトサラダとスモーク玉子、季節野菜の炙り
<おつまみ>
  干物炙り、サーモンのハラミ炙り、クリームコロッケ
<お腹イッパイ>
  カレー、イタ飯(←内容不明)

  こういう調子だ。ここで紹介したのは半分以下、全てのメニューの半分程度が「炙り」料理である。見てわかるように、イタリアンを感じさせる料理は3品程度だ。
  どれから行こうか、悩むしかない。

家族「目移りして困るんだよ」
店主「白魚はお通しで出すよ」
家「ああ、あれは干物にできないからなあ」
主「余っても困るんだよね」

  こういう調子だ。まあこれは同級生同士の会話であるとして、若い主人はほとんど喋らない。


  料理の旨さを説明する語彙を僕は持たない。「炒め」でも「焼き」でもない「炙り」の味。油っこい食材から油が抜け、うまみだけが残る。とりわけ牛タンは別格の旨さだ。仕込みに6時間かけるというそれは、「これが舌なのか?」と思わせるほどのやわらかさを持つ。「牛タンなんかァ、ガムみたいでいやぁ」などと言っている若い婦女子に食わせてやりたいくらいだ。
  何を食べても旨いという店は非常に珍しい。酔っ払う前に食いすぎるという意味では多少の問題がある。ここで紹介できないのが本当に残念である。

  本当のプロが出す料理。1人の予算は飲んで食って5000円ちょっと、まあ安くはない。やっぱり、外食ってこうでなきゃね。
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