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今回は女性をめぐる2冊を紹介。
少子化の進む日本で、女性は自分の性にどう向き合うかを40代の女性2人が全く逆の視点から語る。
まず、楠木ぽとす「産んではいけない」。
要約すれば、「子供なんか産むと、とんでもない苦労をする。自分の自由はなくなるし疲れるし旦那は協力しないし金はかかるし、ロクなことはない」という視点である。
個々の話題が具体的なのが面白い(笑える)。
子供が2人いて、下の子が病気になる。熱っぽいので家に寝かしておくしかないが、今度は上の子が病気になる。こっちは病院に連れていって薬を貰わねばならない。病院に行って診察を受けて帰ってくるだけでも1時間かかる。しかし2歳児の下の子に1時間も留守番ができるわけがない。従って連れていかなければならないが、何しろ熱があるので簡単なことじゃない。厚着をさせて抱き抱えて外に出れば今度は上の子が泣き出す・・・。
という調子である。子供を一人持ったために、母親の人生は20年間もストップしてしまうから、子供なんか産んではいけないというのだ。
もちろんこの意見には反対する人も多いだろうが、現実的な側面を見ると「そうかもなあ」と思わなくもない。僕は男性なので実感という面ではピンとこないけれど、子供を育てることにウンザリしている女性からすれば「痛快」なのかもしれない。
しかし1つだけ残念な部分があった。終章の一部を引用する。
>人口が減れば食料問題や環境問題の解決にもつながるし、地球規模でみれば、生まない方が、人類のために多少なりとも貢献できるというもの。つまり、今の世の中、「子供を産まない」ことこそ正しい選択なのです。
これはかなりの事実誤認がある。人口を減らす必要があるのは(総じて言えば)発展途上国であって、日本のような先進国ではない。先進国のほうが人口抑制問題や環境問題に取り組む余裕があるので、先進国が少子高齢化で国の運営に行き詰るのは世界レベルでは避けるべきことである。
まあ上の僕の考えにももちろん反論はあるだろうが、楠木氏が最後の最後で「正論っぽい」ことを振りかざすのはツマラナイことだと思う。どうせだったら、「少子化がどうなろーが知ったことじゃないんだよッ! やってられっか!」みたいな酒井順子的半ギレで終わらせてほしかった。
次に、三砂ちづる「オニババ化する女たち」。
副題は「女性の身体性を取り戻す」となっていて、何の本かちょっとわかりにくい。
要約すれば、「女性は身体性を失おうとしている。出産やセックスというのは女性の肉体そのものにとって誉れである。これらを避けてはならない」ということだ。もう少しわかりやすく言えば「セックスや出産の楽しみを知らないと、女性は自分の身体を愛することができない」、ということだ。
題名の「オニババ化」というのは、よく童話などに出てくるオニババは「自分が持つ女性性のエネルギーを解放することができず、それが反社会的な行動を呼ぶ」存在ということになる。これは全体の文章の流れから判断するに、後から付け足したメッセージに見える。本を売るための編集者の努力とでもいうか。
引用する。
>女性というのは、自分のからだを使って、セックスしたり出産したりということをしていないと、自分の中の、女性としてのエネルギーの行き場がなくなる(後略)
これをどう思うだろうか? 男性性の僕としては、わかるようなわからんような・・・という印象を受けた。
女性の「性」に関する記述も頻出する。もちろんセックスも含まれるし、出産や生理といった男性にはわかりにくく、ややもすれば男性的には「ヒク」表現も出てくる。たぶん、掛詞ではなく「生理的嫌悪感」を持つ読者もいると思う。
この2冊は、非常にデリケートなものだ。特に後者は読みやすいとは言えないし、前者も「個人的な意見にすぎないだろ」という感想を持つ人が多いと思う。しかし、少子化や身体感覚に関して我々が学ぶ(少なくとも考える)べき点は多いものだと思う。あくまで、個人的に。 |
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