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僕が「激走」という言葉を好んで用いるのには理由がある。
「激しい」というのはスピードのことでも距離のことでもない。世の中には数字を自
分の基準にする人がいる。何キロ出したか(出せるか)、何キロ走ったか。そんなこと
で自分の存在の何かが表せるのだろうか。大学入試とか営業マンの成績とかはしょうが
ないけれど、何でもかんでも数字に置き換えてしか自分を把握できないなんて哀れなこ
とだ。
自分を測れる「ものさし」を持つこと。
それは、世界に属する自分を意識する最初の段階なのだ。
竹富島といえば水牛車観光が有名だ。「赤い屋根で平屋」を建築条件に課された古い
町並みを激走する水牛車を扱う業者が2つある。いずれも料金は1000円。所要時間
はそれぞれ30分と40分と公称されているが、それは一つの目安に過ぎない。だって
、水牛が歩くんだもの。
水牛は、まあつまり牛である。大きさもあんな感じ。体重は1トンくらいだろうか。
車は最大で大人が20人ちょっと乗れる。それを水牛が引っ張って町を歩くのだ。すご
い力だよなあ。
それぞれの車には案内人がいる。地理や建物を説明し、三線(さんしん)という楽器
をかき鳴らして唄ってくれる。非常にソフィスティケートされた「観光システム」なの
だ。
2年前に乗ったそれと同じ業者を選ぶ。港から集落まで1キロ弱を車で送ってくれ、
客の人数が揃ったところで出発。業務はテキパキと進み、本八幡のマックのように待た
されていらつく感じもない。集落について10分ほどで乗り込む。
今回の水牛は人間の年齢に直して79歳だという。時速は2キロ・・・ないか。1キ
ロは超えている。ちなみに人間は4キロくらいで歩く。しかも水牛は途中で適当に立ち
止まる。個人的に休憩を取るのだ。あげくに案内人兼運転手(というのかな?)も「あ、疲れた
みたいですねえ」とノンキものん気なものだ。さらに道中には水牛に水をかけるための
水道まで用意されている。
人間の思惑は完全に無視して、水牛はもったらもったらと歩く。もちろん誰も気にす
る人はいない。結局、1時間近くかかって元の場所に戻った。
港まで帰りたいとスタッフに言うと、5分ほどで来たときと同じワンボックスカーが
用意される。車はやはり3分ほどで僕らを運ぶ。
水牛が歩いた1キロほどの道のり。これを激走と呼ばない人がいるのだろうか?
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