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essay エッセイ
『ミリオンダラー・ベイビー』 6月22日
前記:それほどのネタバレはありません。


  大学時代、一応は「映画愛好会」というサークルに所属していた。ちゃんと 会長まで勤めたくらいだ。
  しかし映画のことは何も知らなかったし、今も何も知らないし、これからも 知らないはずだ。


  クリント・イーストウッドという俳優の名前くらいは知っている。M・J・ フォックスの『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でその名前が出てきたシー ンがあったと思う。
  弱虫でありながら「ええかっこしぃ」の主人公が名前を尋ねられて、あくま で冗談として

「イーストウッド。クリント、イーストウッド」

と答える。笑いのシーンである。映画でも予定調和の笑いというものがあるら しく、実際に日本人の観客も笑っていたし僕も笑った。その固有名詞は知って いながら(西部劇の人だっけ?)、固体認識はなかったけど。


  というわけで件名の映画です。
  いつも書くように千葉県の映画館なんてダレダレで、観客は11人。若いカ ップルが1組、あとはおばさんばっかり。人気ないのかなあこの映画。女のボ クシングなんて見たくないなあ。

  2時間以上の映画なので覚悟はしていたけど、展開がゆるくてダルイのなん の。イーストウッド扮するボクシングのトレーナーが金の卵であるボクサーに 見捨てられて、アイルランド移民である女性ボクサーのトレーナーをすること になる。
  タイトルからして、どうせハッピーエンドなのか。ああ下らない映画を観て しまった。ほらほら、陳腐な連勝シーンで主演女優のおばさん(31歳の設定 )がスターダムに上り詰めていく。相手がいなくなって、反則大好きの世界チ ャンプに挑戦する。

  時計を見る。あれ、まだ1時間しかたってない。
  このペースではハッピーエンドが早すぎる。おかしいなあ。


  物語は激変する。
  ここまでの1時間ちょっとは前フリに過ぎなかったのだ。

  映画的なデティールを説明する知識を僕は持たない。でも、「なんか伏線を 張る描写が多いな」とは思っていた。ナレーターが狂言回しになる展開はおな じみにしても。
  結末。ハッキリ言って、「そりゃないよッ!」と思った。でも僕 は物語の終わりと同時に席を立てなかった。

  フィルムの全てが終わるや否や、劇場が明るくなる前に外に出た。
  イーストウッドの苦悩に満ちた(演技の)顔が記憶に残る。もっと宗教やア イルランドの知識が僕にあれば、もっと感動できたのかもしれない。

  このエッセイを書きながら、僕の中にある断片的な知識をまとめあげてみる 。


ここから下にはネタバレはありませんが、この映画を前知識なしで楽しむ予 定の人はパスしてください。もちろん、前知識なしでもOKの映画です。


・主人公の本名はマギー・フィッツジェラルド。アメリカ大統領J・F・ケネ ディーのFはフィッツジェラルドであり、これはアイルランド系の出自を示す。

・主人公の愛称としてのリングネーム「モ・クシュラ」はゲール語。アイルラ ンドの公用語の1つだが、あまり使われていない言語。別名ケルト語。イース トウッド扮するトレーナーはこの言語の知識を持ち(つまりアイルランド移民 だという示唆)、主人公はその知識を持たない(同じ移民でも世代が違う) 。

・主人公とトレーナーはともにカトリック教徒。アイルランドといえばカトリ ック教であり、前述のケネディーがカトリック教徒でありながら「プロテスタ ントの国、アメリカ」の大統領になったのは有名な事実。

・カトリックは生命に関する倫理観が非常に強い(悪く言えば古臭い)宗教であり、それゆえに尊厳死や妊娠中絶は認められていない。


  実は↑の「知識」の中で、僕が鑑賞している瞬間に忘れていたものが1箇所 あった。こうやって文章にまとめてみたら思い出すこともあるわけだ。
  うん、知識がないから(なくても)楽しめたとも言えるだろう。
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