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マストアイテムというコトバがある。
どうしようもない和製英語ではある。しかし、マストである。ねばな
らない、持たねばならない。
「・・・はマストアイテムですよ」
と同僚に言われたときに僕の心はひどい動揺を覚えた。せなあかんのか。持た
ねばいけまへんで(人にプレッシャーをかけるには関西弁が良く似合うで・・
・じゃないや、似合うね)。
独り暮らしも10年目。今の家に越したのは5年ちょっと前だ。
そのときに真っ先に購入したのは空気清浄機であり、次にMDプレーヤー、
その次は冷蔵庫・・・あとはナンだっけな? クーラーも除湿機も加湿器もP
Cも買った。部屋の広さが以前の2倍弱ということで、それだけ家財を増やす
ゆとりがあったのだ。
もちろん人生には優先順位というものある。「生活レベルは上げたら落とせ
ないもの」だということも知っている。たとえば、コショウを引く道具すら買
わなかったのだ。粒コショウを買い続けるコストだって考えるべきだ。
でも、クローゼットも買った。20万以上した。赤外線ストーブもソファも買った。幅が1メートル40センチもある書
斎机も買った。ダブルベッドはもちろんだ。洗濯物を干すためのパイプセット
(っていうのかな?)も買った。去年なんか液晶TVまで買
った。
残っていたのはDVDと・・・である。
きっかけは小さなことから。
7月15日、5年くらい前の生徒様に貰った小さな「それ」をつけてみた。
単三電池2本で動く。なんと頼りないことか!
いいものが欲しい。高くても
いい。いや、安いって聞いている。安物で良ければ2000円で買えるって知
ってる。欲しい。嫁の次に欲しい。たまらない。
翌日、僕は動く。ついにそれを購入するのだ。
アイマイな記憶によれば、箱に入ったそれはかなり巨大なはず。高さ1メー
トル弱、幅は60×60くらいあるだろう。マイカーが自転車である僕だから
、持ち帰りはできないだろう。いいさ、金ならある。配送させるさ。予算は本
体3000円、配送代で1000円。大丈夫。きっと僕も文明人になれる。大
手スーパーへと愛車を駆る。
2000円のそれはいかにも安物だが、イメージ通りだ。悪くない。これで
文化生活が手に入る。あれ。5000円弱の品物がある・・・。
すごい薄型。しかもマイコン搭載(マイコンって何だ?)。奥行きは20セ
ンチ以下だ。ディスプレイされた現物の下に、箱詰めされたそれがある。え?
小さい。これならちょっと頑張れば自転車でも持ち帰りできる。ダンボール
箱で20×50×80くらいか。
5000円弱は少々予算オーバーだけど、えいやっとベージュのそれを買う
ことにする。10年も生きてきて、やっと僕の家財道具に仲間入りするのだ。
大切なことは値段じゃない。このチャンス=気持ちの高揚を心のどこかで待っ
ていたのだ。
持ち帰って組み立てる。汗がしたたる。
家電製品の組み立てはいつも落ち着かない。無駄な(としか思えない)包装
にジャマをされる。どうせ「これはとっておきなさい」とかマニュアルに書い
てあるんだろうけど、構わない。
ええいままよッとビリビリと破く。
お持ち帰り
されたモノはいつもこうやって抵抗するのだ(何かに似ているな)。
20分後、僕はそれを手にする。10年弱と5000円弱をかけて、ついに
僕のものになったのだ。そしてコンパクト。そしてシンプル。ちょっと愛想に
は欠けるけど、恵みを確実にもたらす。きっと、季節を問わずに使える道具だ
ろう。嬉しくて涙が出る。いい買い物だった。ステキだ、愛している。
早く名前をつけてあげるべきだろう。
・・・扇風機。
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