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たぶん形作りでしょう。  
画面奥はスキー場らしい  
  

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essay エッセイ
信州でも激走! その1 12月1日
  長野県に初めて行ったのは16歳のときだ。

  テツ(=鉄道オタク)のデビュー戦に選んだのは仮称千葉駅と松本駅の往復。
  往復して、松本駅周辺を観光してトンボ帰り。一人で長距離電車(今はなき急行 「松本」だったと思う)に乗る緊張と興奮を覚えている。

  旅費を慎重に計算したことも覚えている。
  16歳の予算では、1万円を超えることはできなかった。
  16歳の勇気では、 一人で宿を取ることもできなかった。


  35歳になった僕は、6時24分に東京駅を出る始発の新幹線「あさま」に乗 る。
  7時42分に佐久平駅に着く。予約しておいたレンタカーの支店へ。手続きを 終えてクルマを出したのはちょうど8時だ。まずは軽井沢を経由して浅間山へ。

  佐久平まで東京から6170円。2日間のレンタカー代は17000円。
  うん、安くはないけど高くもないねと35歳の僕は思う。
  自分で稼いだお金で 自分の旅を組み立てる。宿も取る。今になれば当たり前のことだけど、僕はこう なりたいと子どものころから思ってきた。あくまで常識的な範囲の金額ではある にせよ、自分のためにお金を使うこと。稼ぐこと。

  そうだ、僕はもう16歳じゃない。


  トーンは変わる。

  浅間山の近くの「鬼押し出し園」へ。
  ええと、ここは(いつかの)浅間山の噴火による大きな石がゴロゴロしてます 。そこに神社だかお寺だかがあります。入場料600円。入り口から参拝(って いうんですか?)する場所まで徒歩8分。きちんとした観光地。

  着いたのが9時前なのでガラガラ。天気は快晴。周りには大きな石だらけ。は あ、お寺か何かがあるんですか。歩けって言うんすか。はい。歩きます。
  まばらな観光客はフルムーンのカップルみたいな「ややお爺さんとややお婆さ ん」ばっかり。
  はあ。楽しいなあ(-"-)

  浅間山はバリバリの活火山ということで、頂上には噴煙が見える。
  大丈夫なんかいなと思って境内を歩いていると、ヘンな休憩所がある。コンク リでできたコの字型のプレハブみたいなもので、その下に3人がけくらいのベン チが2つ。
  喫煙所とかそういうアレかね・・・と近寄ると「避難所」と書いてある。
  はあ 。それで頭上にコンクリがあり、左右にコンクリがあり、筒抜け型に入り口がつ いてるのか。これで「イザ爆発」の場合には避難しろと。

  しかしコンクリの厚さは15センチくらい。
  周りにある大きな石は直径2メートル以上が基本。どのくらいシェルターにな るのかなあ、なるわけないよなあ、ないよりマシなのかなあ・・・と激走旅に戻 ることにする。


  トーンは変わる。

  菅平高原を抜けて黒姫高原へ。今が盛りのコスモス畑があるのだ。冬にはスキ ー場になるらしき斜面に一面のコスモス。花を見るのがけっこう好きだ。満開直 前くらいのお花畑。

  畑の中央に大きな木があり、その木陰にベンチがいくつかある。観光客がくつ ろぐために設けてあるのだろう。一人客は僕しかいない。別にかまわない。ベン チに座る。
  斜面の途中にあるから、コスモスたちを見下ろすことができる。青い空、淡い ピンクのコスモスの花。忘れかけていた昔の恋人のことを思い出す。

  あの娘は花が好きだったな。

  あちこちに観にいった。今こうやって座っているみたいに、ベンチに2人で座 って花を愛でた。ぼーっとしながら2人で観ていた。
  ぼくたちは同じ場所で2年連続で秋のバラを観た。毎年かならず観にこようね って約束したから。周りに人がいないタイミングを見計らって、ぼくは彼女を背 中から抱きしめた。
  そして3年目はこなかった。


  20分くらい座っていた。
  思い出すこともなくなった、あのバラ園と目の前のコスモス畑を重ねながら。
  うん、激走旅に戻ろう。キリがないし、もう彼女とは終わったんだ。

  コスモスの花言葉は、「少女の純潔」。
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