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温泉宿は1泊2万円が一つのラインだ。
・1万前後→旅館ないしは民宿レベル。それはそれで悪くない。ド田舎にいくと
破格にステキなことがある。
・1万5千前後→このあたりが最も危険。ツアー客が多い。よほどの田舎でない
限り、さみしい思いをさせられるだけ。
・2万超→ハズシはない。ただし1人客はお断りが多い。
・3万超→まず大丈夫。不愉快な思いをすることはない。しかしやはり、1人客
だと値段が跳ね上がることが多い。
・5万超→カンペキだろう。泊まったことがないから知らないけど、マチガイな
い。
今回の宿は1泊1万8千円で8畳の部屋。きわどい。
6時に着いて、食事は6時40分でどうかと言われる。普通は7時でいいです
かと言われるパターンだが、オフシーズンなので客が少ないためだろう。
慌てて風呂へ。これが絶品。
露天と屋内が男女ともに2つずつ。「空いていれば貸切OK」の屋内が1つ。
1時間3000円の貸切露天(←いいなあ・・・)が1つ。混浴の足湯が1つ。
全部で20部屋程度の小さい宿なのでゼイタクである。露天を1人占め。
「半かけながし」であるのは残念だが、松本市内なのでこれなら上出来だろう
。
夕食もなかなか良かった。岩魚(いわな)の刺身というのは人生初だ。旅館で
生ビールが飲めたのも良かった。
2日目は美ヶ原高原へ。標高2000メートルを超えるほどの高原なのだ。
かりそめの愛人、じゃないや愛車はトヨタ・プラッツという小さいクルマだ。
高原道を登ったり降りたりで「息が切れる」感じ。僕はスピードを出さないから
小さい排気量のクルマを好むにせよ、ちょっと山道はきついよな。
山道をひたすら走りまくる。とくに観光するべきものはないから、霧が峰→白
樺湖→蓼科高原とバリバリ移動する。
道の名前が「ビーナスライン」とか「メル
ヘン街道」とかヘンなのが多い。もちろん景色がイイのだ。
旅の締めは蓼科の『マリー・ローランサン美術館』へ。
20世紀初頭の女流画家である。パステルカラーを用いた珍しい画家であり、
あんまり観たことがなかったのだ。旅行に出る前に「ここには寄ろう」と予定し
た唯一の場所だ。
なんでこんな山奥に専門美術館があるのかと思ったら、どっかのお金持ちのお
じさんが買い集めたのが始まりらしい。蓼科は高級別荘地なんですね。
絵はあんまり好みじゃなかった。結婚に失敗して同性愛の傾向があった画家ら
しい。そーなんだ。それで女の子の絵が多いのね。
日帰り温泉に入浴して、中央線の茅野駅に戻りクルマを返す。2日間で470
キロ。
電車を待つ小1時間を飲み屋で潰し、「特急あずさ」に乗る。
中央線は旅情レ
ベルが高いことで一般に(少なくとも一部の鉄道好きに)知られている。
暮れていく甲州路をボンヤリ眺める。
MDで倉木麻衣が『明日へ架ける橋』を唄っている。
甲府駅に着く直前に夜になる。16歳のときも、同じような時間帯だったかも
しれない。
そうだ。旅の大切な部分は移動なんだ。人生は航海に似ているという決まり文
句があるけれど、旅の移動も人生にちょっと似ているのだ。
その途中にはいくつかの思い出があり、少しだけ反芻しながらも、すぐに後ろ
に去ってしまう。
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