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何かの機会でY本という食通または料理評論家の人のエッセイを読んだ。
ものすごく高名な人だということは知っていたので、どれどれという感じで読
んでみる。
料理評論家の生計の立て方がどういうものか知らないけど、自分が担当(?)
するTV番組で紹介する料理店に行って出演(というのかな)を依頼する・・・
みたいな日記である。ほとんどが食事をしにいく話であり、「どこそこに行って
何を食った」という話題が徹底して続く。どこかの予備校講師の日記の逸脱ぶり
とかなり対照的だと思う。
高級店に行くばかりではなく、普通のランチを食べにいく話もちゃんと出てく
る。と言っても都内の話だから1030円とかそういう値段で、このあたりもメ
ロンパンを拾って食べかねない予備校講師とはケッコウ違う。
それはともかく、
値段なりに美味しいと彼はのたまう。その1030円の店(焼き魚のランチ)の
店主とのやり取りでこういうのがあった。
>申し分ないと私が言うと、店主は「それでは勉強にならないので、何か至らな
い点をご指導頂ければと思う」と言う。そこで私は「大根オロシの量が少し少な
いのでは・・・」と注文をつける。すると店主は「それなら値段に関係なく対応
できる。教えていただいてありがとう」と答える・・・。
この引用は僕のうろ覚えだ。
何かの雑誌の一部で、それが正確な引用ではない
ことを僕は認める。しかしそれにしても、と僕は感じる。そんなことを、金をも
らって(かどうか知らないけど)書く必要があるのだろうかと。至らない点の「
ご指導」がそんな些細なことなのかと。そんな下らないことを言われた店主のそ
の返事は何なんだと。大根オロシの量が少ないことは、高名な評論家が要求する
ことなのかと。
話は小さくジャンプする。
とてつもない名店なら別だのだろうが、普通の店で出すチャーハンはなぜあん
なにまずいのだろう? 油と卵がご飯にからんでいない程度のものが平気で80
0円とかする。火力がどうの、という以前のものなのだ。
だから僕は好んで自分で作る。
チャーシューの脂身をこそげ取り、油に合わせ
て基本の「油」を作る(脂身は捨てる)。解き卵を中華なべに流し込み、それに
油をからませる。温めておいたご飯を投入し、ネギとチャーシューとカニもどき
カマボコと玉ねぎ(甘くなるので入れすぎないこと)を放り込む。
家庭で作るチャーハンは火力が弱いからダメだというのは、まさに家庭料理の
素人の言うことだ。中火でかき混ぜすぎない、そしてできる限り卵とご飯の融合
・融和をはかる。コショウを多めに使い、味付けは塩を中心にして、醤油はあく
まで香りつけにたらすだけ。醤油を焦がさない程度(焼きとうもろこしに似た香
りが出る寸前)で素早く仕上げることが大切だ。
平凡にして絶品。これが自炊の喜びというもの。
普通の店がなぜ値段に対応する適切なチャーハンを作れないのか。
素材が安い
から、手間をかけられないから、忙しいから、そういうことじゃない。最低限の
素材から最高レベルにもっていくための工夫が足りないからだ。自分の料理人と
しての低い才能を高く見せる努力をしないからだ。それがわかっていれば、大根
オロシが少ないなんていうことはありえないのだ。
そんなことをわざわざ指摘する評論家。
少ないのは大根オロシじゃない。お前の文章力だ。その程度のことができない
店に関して「書くべきこと」は一つしかないじゃないか。そんなこともわからな
いのか、お前は。
そう、その店のことには何も触れないこと。無視は最大の敵意。
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