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@徳島駅。車両脇に子どもがいる。イメージ写真ということで。  
バッグの上にズボン、その上にガイドブック、その上にTシャツ、その上に愛読書にして旅の友が・・・  
こっちが「足側」なんだと思う、たぶん。閉所恐怖の人にはキツイだろうか。  
  

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テツわる四国編その1 8月7日
前記:この旅は2006年2月に実行された。

  東京駅を22時に出る「サンライズ瀬戸」に乗る。
  寝台特急、何年ぶりだろうか。からだが震える。しんだいとっきゅう。響きがいいじゃないか。君よ、一息で発音するなかれ。

          「しんだい・・・・とっ・きゅう」

これ! この間合い!!


  さて、ここで一般の読者が消えたので以下はひたすらテツ的記述に移れる。
  だいたい、テツじゃない奴なんて世界観が狭すぎるんだよな。狭い寝台車から広い世界を見るかどうかが人間力ってもんだ。

  「サンライズ瀬戸」は原則的に個室寝台。
  まず例外を語っておくと、ノビノビ座席という車両がある。これは「間仕切りのある雑魚寝空間」である。つまり実際には座席ではなく、板の間である。それぞれの板の間にはカーテンがあるので、一応はプライバシーがある。
  もちろん盗難や盗撮(え?)の心配はあるが、若い人ならこれで充分ではないか。だって、東京→高松の特急料金は3150円である。乗車券はもちろん別だが、寝台料金はかからない。ゼロ円ですよ? 半分中年の僕だって、若い彼女ができたらここに乗るね、できないからいいけど(-_-;)


  さて、僕が乗るのはシングルソロBという一番安い寝台。
  寝台料金は6000円。個室でこれは安い、という感じ。さてさてさて、実車です。


  個室は2段になっていて、僕は下段。
  通路を挟んで向かいの個室は若いギャルの2人組が上下段を使っている。僕が人見知りじゃなきゃなあ、個室じゃなきゃなー。そんな話じゃなかった。

  狭い。非常に狭い。
  ベッドは横幅60センチくらい、縦幅190センチくらいか。それはまあ鉄道車両だからいいけれど、寝台の入り口になる「土間的空間」が狭い。長方形で30×80くらいか。荷物と靴を置けばそれでおしまい。着替えるのはベットで半分中腰というセクシーな姿になる。

  考えるに、これは
「とにかく個室になった(=カギがかけられる)」
ことにメリットがあるのだろう。
  従来の寝台はプライバシーと盗難の問題が避けられず、特に女性が乗ることはためらわれる空間だった。しかし、居住性を別とすれば、とりあえずこの一番安い寝台でも個室であるから問題は解決する。それでいい。じっさい、個室に入り込んで備え付けのガウンを着た瞬間、

「おおおお、オレって旅人? これって旅情? 旅って自由??」

と盛り上がれた(自由は関係ないと思う)。


  東京駅で買ったツマミでビール。
  寝台特急は横浜駅を過ぎる。仕事で帰宅が遅くなったリーマン・城南予備校チューターがホームでたたずんでいる。ザマミロ。オレは寝台でガウン着てビールだもんね。

  ウイスキーに切り替える前に車両点検に出る。
  点検とはまたの名を見物と言う。上記のような座席(寝台)システムの確認、喫煙所の確認、乗車率(混雑の程度)の確認。やたらと確認事項が多いが、これをせずして何がテツか。いみじくも先人も言っている。

「せっかくの寝台だから寝たくない。でも、せっかくの寝台だから眠りたい!」
                 (出典多数につき引用原典省略)


  僕の部屋(へや! ベットじゃなくて部屋!)がある車両にはロビーラウンジが併設されている。
  もちろん自由席で、窓を向いたスツールが4脚づつ。椅子に座りたい客もいれば、友と語り合いたい客もいる。そのために自由に使える空間だ。いいぞJR、いい仕事だ!

  ところが。
  今夜はロビーラウンジを50代後半のオヤジ8人組が占拠。しかも全員そろって呑み助らしく、大規模宴会が始まっている。とんでもない盛り上がり方。お前ら、乾き物のつまみでウイスキーのボトルまで持ち込むかぁ??


  車両全体の乗車率は2割強くらいか。
  ツインベットのある部屋は様子がつかめないが、僕が取ったシングルソロBは1割程度。空室の部屋はドアが開いているので、「上段」の内装を見るがほとんど同じ。
  シングルソロAはベット幅が広く、いくつかは上下段ではなく天井が高い。ちなみにシングルソロAの寝台料金はBの2倍。コストパフォーマンス的にどうなんだろう。高松まではたった9時間なのだから。


  小田原に着く手前あたりで、個室内に3つあるランプの1つが消える。最初は寝台車にありがちな「夜中につき一部消灯」かと思ったが、個室だもんな。
  しばらく停車して、電源の点検。やだなあ。しかし5分程度で復旧し、出発。

  寝心地は悪くないが良くもない。
  実車している「サンライズ瀬戸」は電車特急。寝台特急は2つのタイプに分かれる。

1、けん引特急(僕の造語)
→電気機関車が先頭で、客車を引っ張る。能力的にスピードが遅いが、客車の動き・ブレが少ないため、特に長距離・豪華寝台(カシオペアなど)に使われる。

2、電車特急(テツ御用達語)
→全ての車両が電車なので、全ての車両にモーターがある。スピードが速い(もちろん首都圏の通勤系電車は全てこの形式)。しかし客車=電車なので揺れが大きく、安眠しにくい。


  わが電車特急は大阪駅で長く停車している。
  寝ぼけマナコで時計を見ると、午前3時か4時か、そのくらい。おかしい。ウトウトしながら様子をうかがうが、1時間くらい止まっているような気がする。時刻表を取り出して確認すると、やはりそもそも大阪には停車する予定がない。ちっ、これは何かのトラブルだな。

  起きだして確認するほどの元気はないので、そのまま寝る。
  ケータイの目覚ましは6時半にかけてある。6時20分ころ、深夜のために休止していた車内放送が再開される。そして僕は目覚める。

>電車は1時間ほど遅れています。電気系統の故障があり、大阪駅で修理をしていました。乗り換えのご案内につきましては、追って放送いたします。くりかえします・・・。

  やはり。
  夜が明け始めた山陽路を眺める。僕の脳ミソも明け始めている。うす曇。


  6時半に目覚ましをかけておいた理由はわかりやすい。
  本来のダイヤは岡山着6:31。ここから電車は宇野線に入り、瀬戸大橋に向かう。もちろん瀬戸大橋を渡る瞬間を見たかったからだ。
  未乗区間の異常な景色。今ここに現れようとしている、知識と現実の一致の確認というヨロコビ。朝焼けの中にありそうな瀬戸大橋通過の瞬間。
  見逃すことができようか、全国1350万のテツたち同志よ。否。


  車内放送は忙しくなる。
  岡山から山陽本線を離れる。言い換えれば岡山で乗り換える乗客は少なくない。そして、この「サンライズ瀬戸」は「サンライズ出雲」を併設している。つまり、岡山駅で「サンライズ出雲」との切り離し作業がある。

  「サンライズ出雲」は、岡山から出雲市に向かう伯備(はくび)線に乗り入れる。
  しかし、時刻表を確認すると(テツ旅には確認が多い)伯備線には快速を誇る「特急やくも」がある。「やくも」は岡山発の特急なので、急ぐ旅客にとっては乗り換えをしたほうがいい可能性がある。その状況と対策を説明する車内放送が相次ぐ。

  うーん、オレはとにかく乗り続けるしかないが、できれば出雲市に向かいたかったナ。 だって、

「時間を気にしながら時刻表とにらめっこ」

の時間が過ごせるもの。
  それはテツ旅の醍醐味、至福の時間。この時点の僕は、それを味わえることになるとまだ知らない。
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