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このHPを始めたことを契機として、高校生も楽しめるであろう本をできるだ
け読むようにしている。
はじめから高校生に向けて書かれた本もあれば、結果として高校生にも楽しめ
る本もある。そういう本たちが本当に高校生にとって役立つものなのか、高校生
を教える僕にとって役立つものなのかはわからない。
それでも、何かのチャンスを求めて読んでみる。
本の中に何かを見つけるのではなくて、たくさん読んだ経験を持つ自分の
中に何かを探すために。
『高校生のための論理思考トレーニング』 横山雅彦
論理思考がどういうものなのか、英語との比較で論じる本。
なんて書くとあんまり面白くなさそうだけど、全体の一貫性はともかくとして
個々のトリビアな知識や話題は面白い。
たとえば、日本語が英語化しているコミュニケーションの例として、生徒との
やり取りを収録している。目上の人の家に招かれてコーヒーとケーキを出された
とする。あなたは何と答えるか。著者の想定は「どうぞお構いなく」である。
>ところが、最近になって、その質問にはあっけなく「いただきます」と答える
生徒が増えてきて、この得意技(信原注:授業の仕込みとしてのトーク)が通用
しなくなっている。わずか10年前の生徒なら爆笑したはずの落としどころ(信原
注:この部分は本稿では割愛した)で、笑いがおこらない。
この経験を著者はカルチャーショックと感じ、それは以前にも経験した記憶が
あるという。それは20年前にアメリカを初めて訪問したときに感じたカルチャー
ショックだという。それゆえに、日本語が英語化していると著者は主張する。
上記のような「ああなるほど」という体験談やネタが興味を持つに足る内容な
のに、肝心の「イイタイコト」の記述がアヤフヤなことが多い。
>ロジックは、特殊英語的な発想法なのであって、決して普遍的ではないのであ
る。
おい、本当かよそれ。
日本語と英語を比較することで日本語の非論理性を説明し、英語的な論理を身
につけるべきだとしている。
>「論理的(ロジカル)」とは「英語的」と同義の言葉だからである。
そんなバカな話があるのか?
日本語の「言わなくてもわかる」という論理を「ハラ芸」と名付け、ロジカル
以前の段階にあるとして「プレロジカル」と呼んでいる。もともとの日本語に論
理は存在せず、明治時代の英語の流入により導入された翻訳語句を使うことで、
やっと日本語は論理の真似事を始めたらしい。まあそれはわからなくもないが。
>(パソコンのキーボードで日本語を入力するのは)日本語を文章化する前に、
いったんアルファベットに置き換えているわけで、その思考が英語化するのは当
然である。
そんなはずがない。
「かな入力」ではなく「ローマ字入力」をするのは、日本語の発音は母音が軸であるためだ。発音そのものと、思考が関係するはずがない。本書では、この
手の強引な「後付け」の記述が非常に目立つ。予備校講師のトークではあるまい
し、もっともらしいことを書くべきではない。
>国語の教師の多くが、論理的読解の教材として「天声人語」(信原注:朝日新
聞の超有名コラム)を無批判に使用している(使用せざるをえない)ところに、
現代国語教育の混乱と混迷が如実に表れているように思えてならない。
「天声人語」なんかイマドキ使っている教師がいるのかあ(いたりして)?
あの文章の非論理性というのは、僕が大学受験をしていた80年代後半でもフツ
ーに言われてたことだぞ。
しかし、全体的な一貫性ではなく個々のネタに限って言うなら、本書は読む価
値がある。個々の部分を楽しむだけの目的、ときちんと割り切って読めば面白い
のは間違いない。マジメに、本書から「論理思考とは何かを学びとろう!」など
と思わなければ、と念押ししておく。
最後に、そしてちなみに、著者はT進予備校の予備校講師(英語)。
「ロジカルリーディング」という怪しげな教え方で人気のあった(ある?)人
である。それを踏まえると、「らしさ」がよく出ているとは言えるんだけどね。
『なぜモチベーションが上がらないのか』 児玉光雄
本を選ぶ理由はいくつかある。単なる好奇心を満たすため、仕事に役立つから
、ただの野次馬根性。
本書は2つめの「仕事に役立つ」という観点(または希望的観測)で購入。
もちろん僕自身はモチベーションの塊みたいな存在だから、自分のためにとい
うことではない。生徒様のモチベーションの低さをどうするか考えているのだ。
以前は、モチベーションが低い生徒様がいるのは志望動機や志望対象がアイマ
イだからだ、と考えていた。しかし最近になって考えているのは、「志望が決ま
っていてもモチベーションを持てない生徒様がいるのではないか?」ということ
である。そんな奴はただ怠慢なだけだ、ただのニート予備軍だ、逝って良し!と
しても仕方がない(仕方があるような気もするのも事実)。
>人は何事かを成し遂げたと感じる時、最大の持続力を手に入れる。思うような
結果を出せなかったり、失敗したりという場合でも、行為そのものの中から充実
感、充足感を得られれば、それらを飛躍への踏み台とすることができる。
本書の内容はそのタイトルと逆である。
つまり「こうすればモチベーションが上がる」という方法を紹介している。そ
の紹介対象はモチベーションを上げる本人(サラリーマン、学生、スポーツ選手
など)と、彼らにモチベーションを上げさせる人(上司、教師、コーチなど)に
分けられている。
たとえば指導者がどうやって生徒(など)をほめるか。
>人間は漠然とほめられてもピンとこないものだが、具体性をもってほめられる
と実感がわく。小さなことを、たくさん、具体的にほめるのが、ほめ方の三大テ
クニックと覚えておいてもらいたい。
著者は大学助教授で臨床スポーツ心理学、体育方法学(←関係ないけど、こん
な学問があるんですね)を専門とするそうだ。
そのためか様々なスポーツ選手を例に出してくる。
>どんなに大きな仕事も、細かい作業の積み重ねによって成り立っている。だか
ら、単純作業を馬鹿にする人に大きな仕事はできない。(中略)イチローはこん
なことを言っている。
「僕は細かいことが気になって仕方がない。何でこんなに細かいことまでと思う
ときもありますが、やらないと気持ちが悪い」
単純作業に没頭できるようになると、「今」を意識しながら行動するパターンが
身につき、内的モチベーションが高まる。
本書の欠点は、各章ごとの論に説得力があるのに、章を超えた一貫性が読み取
りにくいことである。
そこを差し引いても、通読すればモチベーションを上げる(上げさせる)チャ
ンスをつかむことができるような気がする。実行できるかどうかが問題点である
のは、このたぐいの本に共通することだ。
『東大脳の作り方』 安川佳美
著者は東大理科V類で現役で合格した(現在は2年生)。
執筆のキッカケが面白い。著者は大学1年生の夏休みにやることがなくなった
。何をしようか。そうだ、本を書こう! 「あとがき」から。
>さして興味もないのに無理矢理いろんな活動に従事しようとするのはよくない
、と反省した私は、今のこの暇な状態の私にとって最もメリットになりそうなこ
とは何だろうと考えました。
そもそも、このあたりからして「東大脳」は違うということかと読者はヒクか
もしれない。
卑しき大学生であった僕なんか、「暇だな〜、じゃあ、パチンコで儲けてこよ
うか!」と行動してたもんなあ(しかも負けるし)。予備校を卒業した生徒様に
大学に入ったあとの様子を聞いても、似たようなものである。あるいは、この著
者が書くように「さして興味のない」サークル活動に入れあげるフリをする(忙
しいフリもする)なんてことが多いようだ。
さて内容だが、塾・予備校に通うことなく「理V」に入った人生の記録である
。
問題集などの具体的なアドバイスは皆無で、自分がどう考えてどう行動したか
(あるいは幼児期にどう行動させられたか)が現代っ子の語り口調で書かれてい
る。具体的でないのが面白いような気もするし、つまらない感じもする。それな
のにグイグイ引き込まれるように読んでしまうのは、見えない魅力があるのか野
次馬的な好奇心があるのか?
たとえば、小見出しに「私の暗記法」とあったとする(実際にある)。
そこに何が書かれていると思いますか?
その小見出しが来るまでに、「この本はあんまり具体的なことに踏み込んでこ
ないんだな」とわかっていたとして?
僕は「生活の中に取り入れる」とか「暗記という発想をしない」とか「考えて
それに取り組めば暗記を意識することがない」のような、悪く言えばゴーマンな
ことが書かれているのか、と予想した。
しかしなあ、そんなんじゃ平凡だしなあ。さて。
>勉強する時は完全に静止しているということ。そんなの当たり前じゃん、と思
うかもしれませんが、私の場合本当に微動だにしないのです。
読者は、つまり僕は「何の話が始まるんだ?」と不審に思う。
>勉強する時はおとなしく座る、というのを体で教え込まれていた私は、何かを
覚えるときも身動き一つ取らず、暗記するべきものが書かれた本なりノートなり
を見続けるのが常でした。
なんだなんだ。
動かない、それがお前の暗記法なんかッ!
著者がこういう学習姿勢を見につけられた理由は何か?
それは本のコシマキにあるコピー「頭のいい子は親が作る!?」に肯定文で答
えることではないだろうか。
最後に、読者別の読むときの注意点。
1、社会人
→「学生の分際で偉そうなこと言うな!」と思わないこと。ときどき「けッ」と
思わせるような書き方がある。これはしょうがないことだが。
2、高校・大学生
→「自分とは違いすぎる・・・」と遠い目をしないこと。生い立ちなどの環境に
嫉妬しても得るものはない。
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