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	女性の涙に三角形	11月22日

  あなたがハンカチを固体認識したのは何歳のときだったろうか？

  ハンカチを携帯するのは外出するときである（家の中で携帯してもいいわけだが、普通はしない）。
  ハンカチを使用するのは手を洗ったときである（外国人はハナをかむのにも使うらしいが、日本人はそうしない）。
  手を洗うのはトイレから出たあとである（濡れた手でヘアースタイルを直すという荒業もある）。

  以上の見事な三段論法（注：もちろん本当は違うよ）からすると、ハンカチの固体認識条件は固まった。

・外出して、トイレに行って、自分で手を洗えるようになったとき

  これで良かろう。
  僕の場合は幼稚園の「ふじぐみ」時代ということになる。いきなり「ふじぐみ」などと言われても読者は困るだろうが、僕が５歳で入園した幼稚園には花の名前を使ったクラス名が存在したのだ。

  時は流れる。

  あなたが、ハンカチに関して疑問を持ったその内容は、何であったか？

  疑問は特に感じない（ハンカチを持っていないなど）という読者は読まなくてよろしい。
  僕はいまだに、この質問に過去形で答えることができない。つまり、今も悩んでいる。項目は２つだ。

１、泣いている女子に綺麗なハンカチを差し出すという構図はどのように実現されているのか（いないのか）？

  この構図の実現に必要とされる要件が多すぎる。
  まずハンカチがポケットに入っていなければならない。しかもそのハンカチは「綺麗な」ものであるので、使用後であってはならない。

  ここから考えられることは、外出して１時間以内程度（トイレに行く前）に女子が泣き出す必要がある、という事実だ。
  いかにして自分が外出して１時間以内に女子を泣かせるか、という重要な案件が発生する。差し出すハンカチは綺麗なものでなければならない――ここがどうしても欠かせないことになる。

  現実的に「１時間以内で女子泣かせ」は難しいと考える。
そもそも、女子という生物は男子の全く予期せぬときに泣き出すものである。そこで、時間の条件を省くつまり泣かせるのにかかる手間を考慮すれば対応策は１つしかない。ハンカチを２枚用意しておくことである。

  １枚は自分が使い、もう１枚は女子が泣いたときに備えて綺麗なままにしておく。
  これで解決だ、と思った瞬間、女子が泣き出す。ナウゲット・ざ・チャーンス！（by伊東四朗）とあなたは「泣き出したときに差し出す用」のハンカチを取り出す。

  どこから取り出しますか？

  ポケットじゃダメですよね。
  外出して１時間以上過ぎているから、もう折りジワがついています。男子はハンドバックを持っていないから、手提げカバンから取り出すのでは間に合わない。

  こうなってくると、もはや泣き出した女子に綺麗なハンカチを提供するのはムリということになる。
  解決策としては「どうしても１時間以内に泣かせる」「トイレに行っても手を洗わない」などが考えられるが、現実的にどうなんだろう。「手なんかズボンで拭けよ」という下賎な感想は無視。困った。

  もう１つの疑問に移ろう。

２、少女マンガ（ベルばらなど）でよく見かける、「くやしぃーッ！」と涙ぐんだ女子が口にくわえるハンカチはなぜにあれほど見事な三角形なのか？

  かなり不思議である。
  その構図を見る限り、小学校の給食の時間に使った三角巾のようにしか見えない。そのなぞのハンカチはかならず純白である、というのは納得できなくもない。そんなシーンで、「ちびマル子ちゃん」の図柄が描かれたら絵にならないではないか。さて、三角巾問題はどのように解明されるのか。

  ハンカチってのは正方形だから、半分に折ればすぐに三角形になるじゃん。

  世の中には無分別な人がいる。
  「じゃん」という語尾からすると横浜出身の可能性もある。それはともかく、これでは解決にならない。問題が残っている。

  ポケットの中にハンカチを入れるとき、三角形に折りたたむ奴がいるのか

  ということである。
  だってそうでしょう。今あなたが外出するとして、正方形のハンカチをポケット（女子ならハンドバッグか）に入れるとして、それを三角形に折りたたみますか？　いちど三角形に折ったら、何度折っても三角形のままじゃないですか。

  しかもですよ。
  その「くやしぃーッ！」の三角形ハンカチは、シワ１つないんですよ？

  どうしても解決できない謎が残った。
  実は「くやしぃーッ！」の女子はマギー審司であった、というオチで納得する読者はいるまい。

  僕は２つの謎を抱えながら、１枚のハンカチを四角に折って今日も家を出る。

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