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下風呂温泉の宿は「じゃらん」で探した。
古いが綺麗で料理が旨いという触れ込み。温泉は掛け流しで泉質もいいという
。1泊2食で8000円。けっこう高い気もするが。
ディープな民宿であった。
懐かしさを通り過ぎた、昭和40年代の宿だ。
6畳、風呂トイレ洗面所共同。し
かし食事は部屋食(食堂がないためらしい)。
小学生3年生の夏に千葉県の九十九里で泊まったことがある。
正確な記憶がないが、僕と兄弟と母の家族旅行だったはずだ。まだ実家周辺以
外の場所しか知らない僕にとっては、「宿に泊まる」こと自体が新鮮だった。た
ぶん、今日の宿と同じような「住環境」だったと思う。
しかし、今の僕は小学3年生ではない。
家族旅行でもない。京都の超老舗旅館「柊屋」にも泊まったことすらある。20
歳のときには名古屋の1泊3000円の激安・激汚(読みは不明)ビジネスホテルで
つらい一夜を過ごしたこともある。なつかしいとは思うが、希望するタイプの懐
かしさでもない。
部屋にはちゃぶ台が1つ。
クーラーはない。まあ、それほど暑くはない。窓から海が見える。湿った風が
部屋を流れる・・・と書きたいが風通しはよくない。扇風機を回して煙草を吸う
。もやーんとした空気がかき回される。
5時に村営放送。
「本日のイカ1箱の取引額はイカほどであったか?」
今の読者様と当時の僕は脱力して、僕は風呂へ。
半地下にあるそれは、4畳半くらいの湯船にカランが2つ。なぜか椅子がない
。体の洗い方が難しい。ヤンキー座りで洗うのは難しい。風呂場を独占できるの
がせめてもの救い。
風呂は良かった。
源泉の温度が高いらしく、水でうめなければならないのが(うめるとそれだけ
コボレルのが)残念ではあったが、ヌルリとして濃厚な白濁泉。半地下という怪
しさがなければ、かなりの名湯ではないか。海を望める露天だったらいいんだけ
ど、それほどの客は来るまい。ここは最果ての地なのだ。
もちろん豪華な脱衣所なので入浴後のくつろぎをする場所はない。
急ぎ部屋に戻れば5時半。僕の部屋は2階。部屋数は20近くあるようだが、今
日の泊まり客は3組くらいか。4人くらいの家族連れと、2人くらいの中年カッ
プルだったと思う(目にすることはなかった)。
6時に夕食。
「じゃらん」の風評とは異なり、可もなく不可もない民宿料理だった。たしか
にイカ刺しは旨かったが、特筆するにははるかに足りない。7時半には食べ終え
て、もちろん呑み終えて、もうやるべきことはない。温泉街の楽しみはないし、
宿にはゲーム機1つない。外出したとて、自動販売機があるかどうかという田舎
だ。9時前に眠る。
海の音が聴こえる。激走旅は明日で終わる。
長めの追記;
翌朝は7時に朝食。朝方は漁港に集うらしきカモメの鳴き声に閉口。
雨をついて下北半島の東端の岬へ激走した。寒立馬(かんだちめ)で有名な場
所である。豪雨をついて探し回ったら、たしかに海岸にいた。寒そうだった。豪
雨の中の濡れた馬と僕。もちろん観光客はいなかった。孤独を感じる余裕はなく
、うすら寒い恐怖に似た感情をよく覚えている。
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