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東京は飯田橋駅の、新宿寄り改札を出る。
目の前は外堀通りをまたぐ牛込橋である。右に行けば東京理科大、左に行けば
法政大である。女子学生比率を考えて左手にお城の跡みたいな石垣が見
えるので左へ。石垣は江戸城の門跡のようだ。牛込門だったと思う。ここから皇
居まで歩けば20分以上かかるから、やはり江戸城というのは巨大な城だったとわ
かる。
JR総武線の飯田橋から市ヶ谷にかけての車窓。
千葉方面からの上り電車の場合、左手は崖で右手は外堀である。つまり総武線
は城跡のヘリを走っていることになる。やはり鉄道たるもの・・・と書き出すと
「テツわる」になっちゃうな。
左手の崖の上にあるのが「外堀公園」。
公園といっても崖の上にある幅10メートル足らずの散歩道である。桜の名所で
、ちゃんと時期になれば花見客がブルーシートを敷くところだ。ときどきTVの
ニュース画像にもなる。
公園を歩いていくと左手に大きな病院がある。
10分足らずで本日の目的地、法政大学に到着。3月初旬ということで入試もす
でに終わっている。大学の授業がなくてもキャンパスは開いている。大学潜入家
として一言申し述べておくと、3月は大学構内を散歩するのに適した季節である
。サークル活動などでほどよく学生がいるし、大学院生や教授風情もチラホラし
ているし、潜入者=不審者とはなりにくい時期なのだ。
門前には警備員がいるが無視。
「なんだ、あいつは?」くらいには思われているかもしれないが、たいていは
こっちの自意識過剰である(と思う)。
門の左手で大きな工事をやっている。
何かの建物の落成が近いようだ。工事の概要を示す掲示があるが、大学潜入家
はこういうものを凝視してはならない。不審者候補に昇格する恐れがあるからだ
。
まずはキャンパス中央部の掲示板へ。
ちょうど卒業や進級の発表時期なのか、チラホラという形容詞ではちと足りな
いくらいの学生風情がいる。大学潜入家も大学生に混じって掲示板を見る。教務
課の「学生呼び出し掲示」とか、なつかしいよね。
校舎に潜入。
横長の建物の左側が「55年館」で右側が「58年館」というらしい。そのわりに
2つの建物は棟続き。増築されたとか、そういうことなのだろうか。建物は古い
。
20人乗りくらいの巨大なエレベータが全部で6つくらいある。ドアの開閉速度
が非常に遅い。「天の岩戸」とか「インディー・ジョーンズ的」という比喩を献
上したい速度だ。もちろん巨大なドアなのだが、開閉に2秒くらいかかるのでは
ないか。デパートの三越日本橋本店にあるような開閉スピード、と言えばわかっ
てもらえるだろうか。
この55年というのは昭和ではあるまい。
しかし、西暦だと築52年くらいになってしまうのだが、どっちなんだろう。築
52年で7階建てとすれば、今はともかく当時は相当立派な建築物になる。
6階へ。
最上階の7階を試したいが、最上階は警備されている可能性があると見たため
自重。幸いなことに学生も警備員もいない。吹きさらしの喫煙所に出てみる。す
ると、外階段が全てスロープになっている。車椅子でも昇降できるくらい。うー
ん、築52年ですでにバリアフリーだったのだろうか。あるいは後年になってこの
外階段を付け加えたのだろうか。それにしても、スロープも建物と同じくらい古
びている。
喫煙所から隣の敷地を見下ろす。
中学校か高校らしい。このあたりは共立女子とか和洋九段とか嘉悦女子とか、
比較的古いというか名門というのか、女子高が多いことを僕はあらかじめ知って
いる。この法政大学もそうだし、靖国神社の近辺は意外な文教地区なのである。
あ、調べたのではなく、職業上知っているということです。誤解しないように。
(今ネットで調べたら三輪田学園という中高一貫校だった。ジロジロ見てしまっ
たのはまずかったな)
古いボロいと悪口を書いたが、トイレだけは例外だった。
ピカピカである。トイレだけ改装したらしく、「我が大学は、トイレだけは平
成時代ですから! ミレニアム越えですから!」という大学当局の意気込みが感
じられる。ウォシュレットまではなかったが、ちゃんと手を乾燥させるアレ(←
なんて言うんだっけ?)も装備されている。学生がいない時期ということもある
のだろうが、掃除も行き届いている。
「58年館」の隣にタワービルがある。
これは知っている。有名なボアソナード・タワーだ。ボアソナードは法学者で
法政大学の創設者(だと思う)。早稲田でいう「大隈講堂」の現代的法政版とい
うところだろうか。26階建ての象牙の塔。すごいね。
観察すると、最上階の26階には「ラウンジ」と「スカイロビー」があるらしい
。
勇気を振り絞ってエレベーターへ。さっきのエレベーターの3倍くらいのスピ
ード。3倍は大げさかな。でも2倍じゃないと思う。耳が痛くなった。
26階で降りてみると警備員はいない。
「ラウンジ」からは外が見下ろせるようだが、何かのイベントをやっているよ
うで入れない。「スカイロビー」は結婚式のロビーみたいな作りで、ドアがたく
さんある。外を見下ろせる大きな窓があるが、バカっぽい法政大生♂3人が地べ
たに座って占拠している。渋谷ストリート系というのか、腰からクサリをぶら下
げているようなファッション。
バカか、お前ら。
六大学だ(野球用語)MARCHだ(受験業界用語)の1つに数えられている
くせに、「六大学・MARCHの落ちこぼれ」なんて言われるのはお前らのせい
だ。地べたに座るのはイヌネコだけだろうが、腑抜け。ってか、オレが外を見れ
ないじゃないか、どけッ!
という勇気はなく、代わりにエレベータホールから外を見る。
なかなかの絶景。まあ、夜になれば法政的バカップルがチューの1つもするた
めに集まってきているのだろう。すごい偏見だな。
一気に地下へ。
そこに学食があるという掲示をチェックしておいたのだ。大学潜入家として、
学食のチェックは最優先事項。さっきの「58年館」のほうは時期的なものか営業
していなかったのだ。
ほう・・・。
オッシャレーな(死語)カフェテリアのようだ。中に踏み込める雰囲気はない
。けっこう多くの学生がたむろしているからだ。メニューなども店の奥のほうに
あるようでチェックできず。後の課題にしよう。大学潜入家たるもの、1度の潜
入で全てを知ることはできないと自覚を持たなければならない。
さて帰るか。
ここでもトイレをチェックしておこう。女子トイレがあって・・・ん? 女子
トイレのドアには張り紙がある。隣の男子トイレのドアには張り紙がない。なん
だろう。間違えたフリをして女子トイレのドアに近づく(潜入家たるもの一人芝
居は必須科目)。
It reads; (和訳=以下のように書いてある)
「このあたりに不審者が出没するので・・・」
文末までは読めなかった。即座に建物を出て、キャンパスの外に出た(小走り)
。
私は名誉ある大学潜入家として、不審者扱いされたくはないのだ。
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