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クルマが嫌いなのではない。
数々の激走旅の記録でわかるように、運転するのは大好きだ。旅先に限らず、
自宅の近くでレンタカーを借りて出かけることもある。まあ、1年に10日間くら
いはクルマを運転しているだろう。
ただ、それを日常の中に含める、つまり自分でクルマを所有するという方向に
はいかない。
実はクルマを所有していたことはあるのだけど、もう1度所有したいとは全く
思わない。環境にも良くないし、人生の4大出費の1つである。
ところが、大人の男性はみんなクルマが好きみたいだ。
みんなというのは言いすぎじゃないかと言われるかもしれないから少し譲ると
、大人の男性の9割はクルマが好きだ。前にも書いたと思うけど、僕がクルマを
持っていないと言うと「じゃあ買いなさいよ」とクルマ好きの10割が言う。僕は
自転車に並外れた愛情を注いでいるけれど、人に「君も自転車を買いなさいよ」
なんて薦めたことはない。ヘンな感じだ。
クルマのことになると、クルマ好きの男性はクルマが何か特別でありなおかつ
神聖なものであるかのような口調になる。
その証拠に、クルマの話題になると彼らは嬉々として語りだす。自分が乗った
ことがなくても、
「あの××はなんとかかんとかで」
「でも○○はどうとかこうとかで」
と盛り上がる。
しかもその知識が異常である。
クルマにはまず会社の種類がある。ベンツを扱うヤナセとか、カローラを扱う
トヨタとか。さらに車種がある。日産のクルマにはローレルとかマーチがあると
か。さらに車種の中にも1,300CCのハッチバックとか1,000CCの3ドアとか、様々なタイプ名があるのだ(あるんだよね?)。
自分がクルマを所有している場合を考えてみよう。
たとえば、トヨタ社で(会社名)、ヴィッツで(車種名)、1300CC直列4気筒
DOHC2WD(タイプ名)なのである。つまり、数あるクルマのほんの1種を
たまたま持っているだけなのだ。
それなのに、男どもは、正確にはクルマを所有する人々は、
「マツダのRX8と言えば6速マニュアルの4ドアクーペがいいよね」
「そうかなー、6速マニュアルならスカイライン(日産)でしょ。350GTプレミ
アムだよ」
と、こういう意味不明な会話を平気な顔でするのだ。専門性が高すぎないか?
男どもよ、立ち止まって考えてみよ。
たとえば、多くの大人の男性が所有していると思われる他の商品のことを想像
してみよう。TVとか、冷蔵庫とか、財布とか。自分が持っているものすらちゃ
んと説明できないんじゃないか。まして、他にどんなタイプの品揃えがあるか、
友だちと議論できるか?
「うちのTVアクオスだよ。37?インチかな。42だっけかな。20万切ったよ」
「冷蔵庫? ドアが、あー、6つあるな。なんか、野菜室とかあったかも」
「財布は、革製だな。ロレックスじゃなくて、ラルフローレンじゃなくて、えー
と、ナンだろこれ(取り出す)。コーチって書いてあるな」
ところがどうだ、ひとたび話題がクルマとなれば。
「いやいや、やっぱりジャガーでしょ。できればSタイプ Sovereign だよね。至高
ってやつ。熟練の技が仕上げたレザーとバーウォール(←ここ巻き舌)ナットウ
ッドのインテリア、気品と個性に満ちたエクステリア(←ここ唄うように)、先進テクノロジーが融合した一台だよね 」
とこうなるのだ。何語で話しているのだ、そこの君。
不思議な話である。
僕はいつもその話題についていけなくてさみしい。もしできることなら、
「やっぱりさー、あの西船橋駅の2・3番線ホームに千葉方面から電車が入って
くるのって萌えるよね」
「いやいや、総武線各駅停車で武蔵小金井行きを見かける瞬間の、レアでもない
けど普通でもない感じがいいよね」
「萌えって言えば、地下鉄東西線の妙典・原木中山間の車両基地に電車が吸い込
まれていく瞬間、あれじゃん?」
と語りあえる知り合いが欲しいよね。僕と彼らのどちらが異常か?
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