予備校講師でわるかったな!





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授業衣装のスーツについて 3月30日
  僕の場合はと先に断っておけば、授業衣装がスーツに限られるときは1年に2回ある。
  3月中旬の開講初日の週と、10月中旬の最後のタームの初回の週だ。前者は1 年を通した気合と礼儀を示すために、後者は最後のスパートに入ったことを示す ために着用される。3月は涼しいが、10月はまだちょっと暑い。

  もちろん他にもスーツ着用の日がある。
  寒いせいもあるが冬期・直前講習や、春期講習である。同じ時期の体験授業も そうだ。初顔合わせの生徒様に不信感を与えてもメリットはない。外気温が18℃を超えることの多い5月以降は禁止


  スーツは難しい。
  物理的に授業衣装としての適性度合いは低い。黒板とチョークを使うから、ネ クタイですらジャマ。座って講義をする人はどうでもいいだろうが、僕はそうで はない。たくさん書くし、たくさん動くし、汗かきだし。物理的にいいことは何 もない。

  できる限り、値段が高いものを着る。
  スーツは全てオーダーメイド(仮縫いなしのイージーオーダーだけどw)だし 、シャツも同じ。カフスもつけるし、シャツのほとんどは袖にネームを入れてい る。安っぽいスーツ姿ほど貧乏くさいものはない。そうは言っても、ネクタイの 平均単価は1万円くらいで、要するに安物が多いのが弱いけど(^_^;)

  サラリーマンの場合は「仕事着」という面が強いだろうから、安物を使うのもいいだろう。
  毎日着るだろうし、通勤ラッシュもある。しかし、僕はそうではない。あくまで授業「衣装」だ。お金と手間と時間をかけて身につけるものだ。

  腕時計は9年前くらいに買ったものだ。
  当時住んでいたアパートの家賃に換算すると、40か月分くらいの値段だった。 4ヶ月分ではない。安物ではないだろう。時間を管理する職業だし、死ぬまで使 えるだろうし、スーツに似合うだろうし、仕事に使うものに金をかけるのは当 然だと思っている。


  ま、そういう嫌味な話はいいだろう。
  この程度ではイヤミどころかギャグにもならない。


  問題は靴なのだ。
  立ち仕事なので足が蒸れる。1日4コマの場合はサンダルを原則としている。 足が蒸れることでイラつくのは損だ。身体的に、いかに快適に授業をするかどう かは、僕にとって大切な問題だ。

  スーツだともちろんサンダルというわけにはいかない。
  校舎に着いてからサンダルに履き替えるなんていう人もいるけれど、まあ個人 的なことだからいいのだが、それに反感を買うから書きたくないが、しかし当然 のように書くのだが、

スーツにサンダルなんて、美意識欠損の証拠

だろう。通勤中が恥ずかしいなんて論外。生徒様の前に立つときは、誰に対する よりも礼儀を払う瞬間であろう。電車の中の汚いオッサンよりも、我々の生計を 支えてくれる生徒様は神に等しい存在である。

  またあるいは、トータルコーディネイトという感覚がないというか、足元の大切さを知らないというか。
  『おっとっと』、まだ売っているのかな・・・とゴマカす(^。^)


  で、足元だ。
  そもそも、靴というものは人間の性質に逆らっている。文明開化以来の習慣なの だろうが、あれほど不自然な衣服はないだろう。せめて、草履か下駄レベルで進 化を止めるべきだったかと思われる。詳しいことは知らないし知りたくもないが 、靴ほど「非文明的」なものは少ないかと思う。

  どうせなら、草履だ。
  下駄はうるさいからね。いや、できれば、足袋(たび)がいいか。うむ、足袋 なら、紋付き袴(はかま)がよろしいか。紋付き袴なら、ヘアースタイルも揃え たい。チョンマゲだ。足袋、紋付き袴、チョンマゲ、最高のトータルコーディネ イトではないか。


  あなたが予備校講師だとする。
  ああ足元が蒸れるな、草履にしよう。いや、足袋だな。そうさな、紋付き袴とチョンマゲも欠かせないな。そのスタイルで教壇に上がる。生徒様の注目が集まる。

・足袋、紋付き袴、チョンマゲの男、教壇で直立


  あなたが予備校に通う生徒様だとする。
  イヤだな、講習なんて面倒だよな。でも受験だもんな、しょうがないよな。ち ょっと予習テキトーだけどまあいいかな、勉強イヤだな、英語なんて英語ばっか り書いてあるし、てか、単語の意味わかんないし。ああ講師が来た。

・予備校講師が足袋、紋付き袴、チョンマゲで教壇に立っている


  チャイムが鳴り、予備校講師が喋りだす。

>おはようにございまする。拙者、このクラスを担当する信長健志門左衛門にご ざいまする。よろしくお願い申し上げたいでござる。では、帳面を開いて、テキ ストの弐ページを開けてもらいたく思いまする。


  生徒様は、どうすればいいのか?
  ここはどこなのか、教壇は現実なのか、自分は誰なのか、なぜ僕は私は生きているのか、という基礎的な哲学問 題を君は与えられた。選択肢も与えられた。

1、黙って退出する
2、この先生(チョンマゲ)の授業は今後は受けないようにする
3、この予備校を退学する
4、自分もチョンマゲにしてくる

  どうするか、やはり4か、いや3が普通か。
  普通とはなにか、あぁ。本当のボクはどこにいる?



  従って。
  このような混乱を避けたいがために、ときどき僕はスーツ姿で教壇に立つ。足袋をはけばチョンマゲが義務付けられるし、スーツなら革靴だからその問題が回避できる。退学者を出すよりも、僕がガマンしたほうがいいだろう。蒸れる足元をガマンするのってつらいけど、しょうがないじゃないか。


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