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それは別にかまわないのである。
人生は一度しかないんだし、自分が人生をかけてやりたいことなんてのも一つ
くらいしかないだろうし、人生なんかどのあたりで「はいこれで人生一つあがり
」と言っていいのかわからないし、やりたいことなんて見つからないままにイチ
またはイチ未満の人生を終えるのが普通であるからだ。
いいじゃないか、人生を踏み外すってやつ。
そもそも、踏み外さない人生なんてあるのか。外す、というからには、「踏む
人生」というのはあるのか。やいそこのお前、例を挙げてみろ。
>現役合格した慶應大学経済学部を卒業して、(現)東京三菱U×J銀行に入社
。
29歳のときに知り合った南関東支部長の娘(26歳)と結婚して、31歳のときに長
女が34歳のときに長男が生まれ、40歳で支店長代理に昇進。
42歳で年収は1,800万を超え、世田谷区等々力に建てた家のローンは46歳で完済。
横浜市都築区の支店長を経験したのちに、54歳で本社営業本部副部長に。
60歳で取締役で定年退職したときには、子どもたちは社会人になっていた。
引退後は相談役となり、67歳で正式に引退。
すでに孫は小学生になろうとしていて、これからの楽しみは孫の成長を見守るこ
と。横浜時代に神奈川県は葉山に買った別荘をテコ入れして、老後はそこで暮ら
そうか。引退しても年収は個人年金を含めて700万以上あり、夫婦2人何も心配す
ることはない。
おい、ちょっと待て、それで人生アガリなのか。
その程度で「人生を踏んだ」と言い切れるのか。お前、人生を踏み外さなかっ
ただけのことじゃないか。お前が後世に残したのは名前か地位か金か名誉か子孫
か墓か?
それにひきかえ。
「演劇を本気でやろうと思ってるんだ」
そう語る若者よ。
美しいじゃないか。演劇だぞ、演劇。舞台芸術。再生されることのない一瞬の
美が舞台の上にある。相撲取りは土俵の上に何かがあると信じてチャンコなぞバ
カ食いしておるが、演劇を目指す君は舞台の上に夢をみている。はるかに美しく
あるまいか。
年収は軽く100万を超える。
ただしお金を稼いでくるのはコンビニのバイトだ。舞台は芸術だから、いっさ
い金を産まない。金を産むようでは芸術といえぬ。それどころか、1回の公演を
するたびに「持ち出し」があり、練習をするにも稽古をつけるにも演出をつける
にも金がかかる。
恋愛もやりたい放題だ。
総合芸術たる演劇、そこには人生の全てがある。もちろん恋愛も含まれる。本
気の恋愛もあれば、擬似ゲームとしての恋愛もある。舞台で恋愛を演じる男女と
もなれば、舞台を離れても恋愛をしなければならぬ。そうでなくても人間臭い連
中が集まってくるから、いついかなるときも恋愛は泥試合。二股どころか三股四
股素股は当たり前、
気がつけば、この子誰の子、誰かの子、
なんていうのも当た
り前。
人生の苦しみ辛さ恨み哀しみもすべて舞台にある。
どれほどの愛があろうともそれは憎悪の裏返し。虚栄心は嫉妬心、嫉妬は世の
中、世の中は魑魅魍魎の住むところ、ああわしのココロにサソリが走る、誰かこ
のサソリを殺しておくれ。このあたり、自分が創作したのかシェイクスピアから
パクッたのか、そんなことを考えている暇はない。世界は舞台で舞台は人生、人
生は演劇、全てはカオス。道。道だと。そんなものがこの世にあるのか、全ては
混とんの中にあるのだ!
さて、あなたの友人が、君に打ち明けたとする。
「演劇を本気でやろうと思ってるんだ」
あなたはどうするだろうか。
本気で止めるだろうか。笑うだろうか。薦めるだろうか。元気づけるだろうか
。彼のご両親に電話をするだろうか。保健所は関係ない。いや、取るべき道は一
つしかない。
「・・・そうか、人生は一度キリだからな・・・」
演劇を志すものは、誰にも止めることができない。
そして、誰もが「それではいけない」と思っている。本人以外は。
追記:友だちがこういうことを言い出して自分は言葉を失う、これは誰もが1回
くらいは経験するものだと思う。僕自身は、演劇それ自体の是非を問うことはし
ない主義です。
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