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essay エッセイ
はじめてのMRI 2月19日

 生まれてはじめて脳MRI検査を受けた。
 正確にはMRIとMRAというそうだが、よく知らない。頭痛ともう1つの症状があって、

これを機会にちゃんと調べてもらおうか

と思ったのだ。細かい事情は2017年2月9日の日記を参照のこと。

 某大病院。
 土地柄もあるのか、なんか客層が異様にゴージャス。駐車場にジャガーとか停まってるんですけどその隣BMWなんですけどその隣プジョーなんですけど外車ばっかなんですけど、おっと国産だ、あら

日産『キューブ』、ぷ、恥ずかし(*^▽^*)

なんてことはなくて、しっかりレクサスでした。そういう感じの人が集っております。受付のあるロビーではグランドピアノが自動演奏・・・。

 紹介者のT君と落ち合い、さくっと診察へ。
 事実上の予約なので待たされず。神経学的問診というのか、あっちを叩かれたり歩かされたり音叉みたいなのをあてられたり、靴下を脱がされて

猫じゃらしみたいなのでくすぐられたり

とか、わけわからん。これ本当に診断してんのかよ。ずいぶん昔、

>医者の聴診器をあてる時間は短すぎないか、あれちゃんと聴いているのか

疑惑を書いたことがあるけれど、あれも濡れ衣だったしなあ。先生のお言葉。

>診たところでは、神経学的な異常はありませんね。でもまあ脳の中なんてわかったもんじゃないですから、やはりMRIを撮りましょう。ミリ単位で血栓とか見つかりますから。

おお望むところよ。ちょっと怖いけど・・・。


 別のフロアへ。
 幸いなことにMRIには空きがあって、15分待ちくらい。貴金属類を外し、放射線ドバドバの部屋へ侵入(注:イメージです、MRIで被ばくはしない)。すると

検査技師のお姉さんがめっちゃカワユス

で惚れた。小柄なスレンダーで、黒髪のショートボブで色白。それを際立たせる黒縁メガネ。小顔で目がクリッとしていて、まあつまり俺の好みなんだが許せあおい、これはただの浮気なんだそのうち戻ってくるからと念じ、誰に語りかけているのかわからないけど、つまり

15年前の小西真奈美にクリソツ

だったわけです。あんなに耳は尖っていなかったが。ああいうの好みなんだオレ。


 システムそのものは、CTスキャンに似ている。
 エントリープラグ挿入、みたいな奴ね。違うのは頭部を固定されること。ヘッドギアみたいなものに頭を突っ込む。聞いていた通り、騒音対策のためヘッドホンを装着させられる。さらに頭部を確実に抑えるために、

スポンジみたいなものをグリグリとヘッドギアと頭のすき間に挿入

してもらう。何かあったときのために、緊急呼び出しボタンみたいなものを持たされる。以下、そのやり取り。

真奈美(以下、真):MRIは初めてですか?
僕:はい、いろいろ教えてください。
真:(いろいろ?)動かないようにしてください。
僕:動かない?
真:画像がブレちゃうんですよ。
僕:なるほど。
真:まばたきもダメです。
僕:え?
真:目をつぶっていてください。
僕:寝てもいいんですか?
真:(寝ないだろ)いいんですけど、寝るとつい動いちゃうのが良くないので。
僕:寝言とか言ったりしてね。
真:(なんだこの患者は?)目をつぶっていても、眼球を動かさないでください。
僕:それ、ホントですか?
真:すごい微妙な画像なので。
僕:音がうるさいそうですね。
真:ええ、ですからこのヘッドホン。
僕:うわ、すごいな、素敵な声が聞こえない
真:え?
僕:あ、聞こえるな、何分くらいかかるんですか?
真:15分から20分ですね。
僕:けっこう長いですね。
真:動かないのがちょっと大変かもです。
僕:それは何ですか?
真:スポンジです。
僕:防音、ってこと?
真:いえ、動かないように、です。
僕:動かない、まばたき禁止、目をつぶる、寝てもいいけど動かない。
真:そうですね。
僕:あなたとは15分の別れ。
真:は?(いまなんて言った?)
僕:冗談です。
真:なにかあったときは、これを強く握ってください。
僕:呼び出しボタンですね、ナースコールみたいだ。
真:そうですね、同じ仕組みです。
僕:これを握れば、キミが助けてくれる。
真:(なんなんだこいつは)撮影を止めるだけですが。
僕:なんか緊張するなあ。
真:そうですねえ、でもそんなでもないですよ。
僕:うるさいだけで。
真:そうです、うるさいとは思います。
僕:そして君に会えなくなる。
真:(無視)では始めます。
僕:生きて戻ってきたら・・・。
真:どう転んでも戻ってこれます(苦笑)。
僕:(ちょっとウケたなw)僕は死なないよ、君が守るもの。
真:・・・。(無視)
僕:さよなら。
真:(無視)

 断るまでもないが、一部脚色である。
 本当は

>手を握っていてくれますか?

とか言ってみたかったけど、これでもハイパー人みしりの僕としては会話を引き延ばしたほうなのだ。いやー、本当に可愛かったな、なんてことはいいからMRI搭乗の話です。ノビィ、出撃しまーす!


 ものすごい騒音(@_@;)
 ビルの工事現場でむざむざドリルの音に耳をそばだてている、といった風情。写真を撮っているというより、

頭を切り刻んで何かしてるんじゃないのか

と思うほど。ゴリゴリガリガリガリガリ、ごぎゃごぎゃぐいーーーーーん、ドッドッドッドッ。なんの責め苦ですか。

 ヘッドホンでは何かの軽音楽がかかっていたけれど、ほとんど聞こえない。
 耳はふさげないからなあ。どうしてこんなすごい音がするのかググってきたら、

>傾斜磁場コイルがローレンツ力によって振動するため

とあった。「振動」以外の言葉がわからなかった人、手を挙げなさい。はーい。

 ただ、昼寝が得意な僕なら眠れるとは思った。
 しかし真奈美(仮)と話した通り

眠ったら動いちゃうよなあ

と思ったので我慢。体を動かさないのは平気だったが(僕は日常生活でそういう訓練をしている、貧乏ゆすりなんかする奴は軽蔑している)、眼球を動かさないのは大変だったし、実際少しは動かしていただろう。

 閉所恐怖とかはどうなんだろう。
 ベッドはシングルベッドの半分くらいの細さで、ドーム状の室内はタンニングマシンより少し狭いくらい。僕はどちらかと言えば狭いところが好きなので気にならなかったものの、人によっては

>え、こんなところで20分? ちょっと困るんだけど

と思うのではないか。目をつぶっていても、広さと狭さは自覚できるものだから。


 さて診断。
 いろいろ事情があって撮影の10日ほど後になった。そこまでの経緯は

・数日後に先生からメールがあり
・病変(脳腫瘍・脳梗塞・脳内出血など)はない
・しかし生まれつきの変化がある
・心配はいらない、今度の診察で説明する

というもの。「生まれつきの変化」って、要するに奇形じゃねえのかと僕は予想した。


 予約だったが36分待ち(+_+)
 さて肝心のMRI・MRA画像を拝見させていただく。素人が見てもわかるわけないけど、形式的にそうするのだろう。画像の枚数は100枚くらいあるのだろうか、全方向から見て

まるでCG画像のようにぐるぐる回る

というものだった。ファイナルファンタジー[みたいだ。脳みそ自体(タラの白子みたいなアレですね)もさることながら、血管もかなり詳しく写っている。この30年くらいの脳医学の進歩って凄いんだろうなと想像する。

 まずは奇形について。
 脳のど真ん中あたりに大きな穴が空いている。専門的には「中間帆槽」というらしい。

>これは生まれつきですね
>はぁ・・・なにか障害が出たりするんですか?
>なにも出ません
>ではほっておけばいい?
>普通の人と形が違うだけですね

要するに脳みそスカスカということである。そうじゃないかと昔から思っていたけどな。


 しかし、残念ながら小さな病変が見つかった。

「右中大動脈未破裂小動脈瘤」

 MRAの画像だと、大動脈から出る小動脈に2ミリほどの突起がある。あとで渡された「検査リポート」から引用する。

>MRA上、右中大動脈M2起始部に1.2mm程度の微小な動脈瘤を疑いますが、脈管起始部の屈曲との識別が困難な像です。

 小さかろうが何だろうが、動脈瘤である。
 先生とのやり取り。

>2ミリくらいですね(クルクルと画像を回しながら)、ちょこっとだけ突起してるでしょう、左側と比べて
>・・・(マジかよ
>それ以外はなんにもないし、気にするようなことでもないですけど
>気をつけたほうがいいことはありますか?
>高血圧じゃないって言ってたよね
>ええ、ぜんぜん
>煙草は?
>吸います
>まあ、やめたほうがいいよねえ
>そうですよねえ
>こんな小さいのだと、破裂するのは1,000人に1人くらい
>はあ(1人破裂するんじゃねーか)
>煙草、別に今はいいんだけどね
>はあ(つまり・・・)
>破裂させるのは高血圧と煙草なんです
>はあ(そらそうだ)
>3年後とか5年後を考えるとね
>はあ(潮時かな)
>そうですね、3か月後くらいにもう1度来てくださいよ

 薬などの処方はなし。
 いわゆる経過観察。

 費用を簡単に。
 頭痛の自覚症状があったので、すべて保険(3割負担)が適用された。初回は初診料コミで9,000円(MRIが6,000円ほど)、2回目は390円。保険適用とはいえ、

これだけ詳しい検査としてはけっこう安いな

と感じた。前に受けたCTスキャンは同条件で4,000円ほどだった。


 よくある議論。
 健康診断や人間ドックを受けるべきか。もちろん受けたほうがいいのだが、少なくない意見は

・無駄に調べられて、自覚症状もない病変を見つけられてしまうから損だ

というもの。おおむね40代くらいからは、実際にこのような小さな病変が見つかりやすいのが相場のようだ。大きな病気が見つかるならまだいいとして、

わざわざ(些細な)不具合を見つけてもらう必要があるのか

といった話だ。僕は80になった父に相談されて

「体の具合が悪くないなら、受けなくてもいいんじゃないの」

と進言したこともある。失礼ながら年齢的にもどっちみち、と正直に言った。健康観や人生観にも左右されるので、どちらが是か非かという問題ではないと考える。

 僕の場合はどうなんだろう。
 こんな小動脈瘤なんて絶対に普通の健康診断では見つからない。頭痛その他の症状があったからまだマシではあれ、

見つけてもらって良かったのだろうか

という思いがある。なお、動脈瘤は大小に限らず「明日破裂することもあればそのまま墓場へお持ち帰りすることもある」ものらしい。独り暮らしで破裂されたら確実に死ねるという気もするが。


  最後に。
 結果的には痛み分けかなあ、が感想になった。寄る年波の困るところは「自分の死の影を確実に意識するようになる」ことではあるものの、同時にそれを知るないし意識することで

よりいっそう多重性を帯びた人間になれる

とも言える。僕が10年後にこのエッセイを読み返した時、「フン、まだ若いね」と思うのだろうか。読者様は

>よし、俺も私もMRI受けよう!

と思っただろうか?


「いやちょっと、もう少し待とう」
「先生みたいにおっさんになってから」
「すぐに申し込みます!」
「予約が取れないのよね」
「検討してみます」

ほら、先延ばしにする人のほうが多いじゃん(^.^)/~~~

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