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南千住は不思議な街だった。
駅前徒歩30秒にコンビニがあり、小さなロータリーの向こう側にはタワーマンションがあり、3階あたりまで店舗が入っている。松屋とか焼き肉屋とか寿司屋とか。その隣には小さなパチンコ屋がある。それらの裏側に回ると、普通の住宅のあいだにポツポツと飲み屋がある。ヘンなのと思って駅から離れてみると、
徒歩3分で銭湯
があった。還暦過ぎくらいのガテン系お父さんがねじり鉢巻きで入店する午後4時10分。デジカメを持ってくるべきだったなと思うくらいの下町である。
そもそも、駅が凄い。
つくばエクスプレスのホームは地下のようだが、日比谷線も常磐線も高架駅。しかし3線とも駅入り口は地上で、
狭い歩道を挟んで3すくみ
というディスプレイ。さらにJRの貨物線が分岐しているから、
工学的テツにも初級萌えポイント
くらいだと思う。そのくせ人の気配は少ないし、なかなかの異次元ワールドだった。常磐線とJR貨物の駅のあいだにショッピングモールがあるようだが、そこまで行く時間はなかった。
業界関係者のW氏と再会。
5年ぶりくらいかなあ。彼は僕の家に運んでくれたこともあるそうだ。正直言ってまったく記憶がなく、話をつないでいくうちに
ああそんなことあったかな
と思った。自分でも「そこまで老化したのかよ」と思う一方で、思い出しやすいほど昔になってはいないのかな、とも。
お店はW氏行きつけの寿司屋。
しかもカウンターであり、氏は店員さんと「ははは、また来ちゃったよ、角の席でいい?」なんて言っている。正直に書くと、
・南千住で寿司屋なんてはずはないし、まあソーシャルディスタンスとか誰も知らないようなモツ焼き屋でホッピー祭り、3時間でお会計は1人3Kって、誰が儲かるんやねん
という展開を予想していた。だって荒川区だし(失言)。それが寿司屋で、カウンターで、W氏は「お刺身をみつくろって、あ、別盛りにしてね」なんて言うのである。常連である。
サッポロ生ビール、うんまあ(*^_^*)
何しろ2年ぶりの外飲みだから、生ビール自体も同じなのだ。ためらわずお代わりをしたところで刺盛が出てきた。
ブリ・トロ・赤貝・ボタンエビ・ヒラメ・卵焼き。
くうう、旨い。赤貝はまるで、あ、これ問題のある比喩だな削除、ヒモよりも身が旨い。トロは旨い魚屋さんと同じレベル。卵焼きはややぼやけていたが、ヒラメもキリッと引き締まり、まるで、あ、以下同文。こんなもので生ビールなんて、人生の至福・・・。
なにかツマミましょうや、とW氏がいう。
いや、もうつまんでますが・・・。しかし形式的にメニューを見ると、サラダでも基本的に1皿4ケタである。寿司屋としては標準だと思うにしても、僕なんざは
レタス・自家製豆苗・パクチー・玉ねぎで実質70円で山盛りですが何か?
なんてものしか食べられない。お任せします、できれば揚げ物がいいっす(ウチでは揚げ物をしないので)といって出てきたのはホタテとニンニクのフライなど。
ビールを終えて、日本酒に行こう。
メニューを見ると、僕からすれば平凡なものばかり。陸奥八仙とか八海山とか飲み飽きている(見栄・呑んだことがあるだけw)し、10種類ほどは全て呑んだことがある。W氏は甘口がダメだし、熱燗がいいということで、
もっとも安い白鹿大徳利780円
に落ち着いた。僕はすでにお勘定が気になっている。
当たり前ながら、締めは寿司になる。
すでに日本酒は2人で6合(大徳利は1.5合の様子)である。なう7時半過ぎ。マンボウ対策でアルコールの注文はラストオーダーなので、白鹿を追加。多少の雑味はあるものの、白鹿は
熱燗で呑めばじゅうぶん楽しめる中辛口
である。ちょう旨いはずもないが、ハズシのない一般酒だ。いわゆる「地酒」で1合600円もしながら、冷酒設定しかないので不愉快な思いをしている人は多いはず。この話は『よびわる』開設時から何度も書いているが。
そうだ、寿司だ。
W氏は「5貫おまかせ、あればサバ入れてちょうだい」。お会計が気になる僕は、すでに酔っていたこともあるにせよ、
こんなに酔って握りもあるまい、そんな身分でもない
と判断して巻物を注文。トロたく・穴キュウ(どちらも500円と確認した)は文句なく旨かった。これでも、ハードワープアの僕としては数年に1度だけのゼイタクである。
本題のお会計。
滞在は4時間弱、上記の通り酒はともかく食べまくり。ああ15Kでもうしょうがないなあ、家呑みの15倍くらいだなあ、
これで半月分の夕食代が飛んだなあ
でもそれだけ呑んだし食べたし洗い物しなくていいし、外飲みってこういうことだよなあ。
W氏がカードで支払い。
これは常識で、誘ったほうがまずは払うものである。ここで誘われた方は5割弱ほど払うのがマナー。僕は誰と呑みに行ったときで同じようにしている。よほど社会的地位が違う(社会人と学生、年齢差が10歳以上程度)なら別だが、
全ておごったりおごられたりはありえない
と考えている。富豪と乞食が呑んだわけではない。互いに「ちょっと高かったな、でも次もそうしたいな」と思うのが最良の関係性である。
ところがW氏。
「いらないいらない、会社が出すからさ」。ありがたいと思うよりも、かなり驚いた。わかりやすく言えば、
・予備校が講師に酒食を提供する
という20世紀の習慣を見たのだ。僕が同じ経験をしたのは、日記に書いたか忘れたが、せいぜい15年前だ。ここで僕が思うのは、
>この恩を良き授業で還元しよう
である。というのは半分(9割か?)くらい嘘で、本音は
>バカ―ッ、先におごりだって言えよッ、仕上げは上寿司盛り合わせしかなかっただろ、さすがに武士の情けで特上にはしないけどな
である。店を出ると早春の雨が降っていた。
(完)
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