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見つかれば、でも見つからない。 10月19日


  10時前起床。
  寝坊。7時くらいからウトウトして、5種類くらいの夢をみた。その1つ。

僕は古い民家に住んでいて、部屋のあちこちに虫が飛んでいる。僕は『氷殺ジェ ット』を手に「一人一殺主義」を掲げる。ところが殺虫剤の利きが悪く、苦戦。 PCかケータイがうるさく鳴っている。とりあえず古い4畳半は制圧したか。ケ ータイを放置しておいたら、とつぜん誰かが家に来ている。なんで電話に出ない のだと言って責められる。なんだようるさいなぁ、と言って目覚め。


  夜更かししたのだった。
  昨晩読み終えた本の話から。

  『走ることについて語るときに僕の語ること』村上春樹を読了。
  日本を代表する小説家によるエッセイ。
  1つのテーマで1冊のエッセイを書くことが少なく、自分や自分の仕事を語る ことがほとんどない著者としては、非常に珍しい本。秀逸。

  こんなに早く読み終えたくなかった、というのが僕の本音だ。
  たぶん4日くらいで読んでしまった。上記のように、春樹は自分自身や書くこ とそのものについて語ることを避ける作家であり、この種のエッセイは特にこの 10年ほどでは珍しくなったからだ。それでも一気読み。一語一語を大切にし、巧 妙な比喩を楽しみ、あるいは休憩を取りながら読んだのに、こんなに早く読み終 えてしまったことが残念。

  春樹の本なので詳しくは後日のエッセイに譲る。
  5回くらい再読してから書くつもりだから、そのエッセイのアップは早くても 来年の今ごろになるだろう。僕は作家としての村上春樹を敬愛し、その作品に畏 怖を抱くが、自分が春樹のようになりたいとは全く思わない。本人に会いたいな んて思ったこともない。

  ただ、春樹が書いていることを自分の中に取り込みたいと思うことは多い。
  感想文を書くということではないし、真似た文章を書くということでもない。 春樹がいる「向こう側」の世界への壁を抜けたい、とでもいうのか。それはとも かく、春樹は僕にとってこの20年弱にわたるナンバーワン作家である。ま、この へんもまたいつか。

  春樹が専業作家になったころから続けているマラソンに関するエッセイである 。
  2005年のニューヨーク・シティー・マラソンに向けた調整の日々を語っている 。その中で、走ることと語る(書く)ことの相違点と類似点を語るように書いて いるけれど、実は「書くこと、書いている自分のこと」だけが本書で語られてい る。走ることに仮託した書くことに関するエッセイとでも言うべきか。

  100キロを走破する「サロマ湖 ウルトラマラソン」に参加した春樹は、残り20 キロを過ぎたところで限界を感じる。
  ストレッチのために休憩はとっても、走ることを放棄しない。その極限状態の 中で、走ることに比喩を求めて春樹は「書くこと」について語る。

>どんなに走るペースが落ちたとしても、歩くわけにはいかない。それがルール だ。もし自分で決めたルールを一度でも破ったら、この先更にたくさんのルール を破ることになるだろうし、そうなったら、このレースを完走することはおそら くむずかしくなるだろう。

  小説のことである。
  走ることと、書くことのあいだに共通点を見つけ、走ることを語るように見せ ながら(実際にそういう意味もあるだろう)書くことについて書いている。文壇 からのありとあらゆる罵倒を受けた作家による独白である。詳しく説明すると日 記としては逸脱するのでやめておく。

  本書に1つ欠点があるとすれば(ケチをつければ)、春樹が今まで書いてきた フレーズや文章が散見されることである。
  もっとも、これは「前書き」の中で春樹も断りを入れている。ああこれは春樹 の昔の文章のどこかにあったなと思えるなら、その読者はハルキスト(春樹の熱 心かつ病的な読者)である。もちろん僕も同じである。

  日記的感想文としての結論。
  春樹の小説にピンと来たことがあるけどエッセイは未読、というハルキスト初 心者にオススメ。おそらく文庫化は2年後だから、それまで待ってもいいかもし れない。村上春樹は、時間を超えても色あせないエッセイを書ける、きわめて珍 しい語り手でもある。


  朝食は昨夜のキムチ鍋の残りにご飯を入れて。
  卵を切らしていたのがちょっと残念。すぐに整骨院へ。最近は週2回のペース で、腰痛レベルは1から2で推移している。レベル2で「ちょっと行動に気をつ ける」くらいの痛み。帰りしなにスーパーへ。地道なチェックの甲斐があってビ ールが安く買えた。6本で1,038円。お値打ち価格だ。嬉しい。もう正午を過ぎて いる。ちょっと寝坊しすぎたか。

  HPの作業。
  今月分の「一膳」を書く。ただのレシピではなく「物語」を添えるのが僕のル ール。料理それだけを取り上げるならプロに任せればいい。食べること、それを 作ることには一定の世界観があると(けっこうマジメに)思っている。食べるこ とに物語がないとすれば、それはエサの摂取に過ぎないと言えば言いすぎなのか も。いつもそうだと言うわけではないし、誰にとってそうだと言うわけでもない 。僕にとってはそうだ、というだけのこと。料理について語るときに僕の語るこ と、というわけだ。

  30分で書き上げて、サポーターにメール。
  天気は下り坂。それでも昼過ぎまでは太陽がちらちら見えていて、昨晩から干しておいたカー テンが乾いた。ついでに洗濯もする。今夜は雨だけど、明日からの天気の回復は 早いようだ。急速に天気が崩れるなら、回復も早いのがふつうだ。寝坊するとい けないし、部屋も広くなって部屋干しするスペースもあるから、いまのうちに片 付けておくという作戦。いつも真剣に家事を回すことを考えている。とてもいい 気分。


  予習チラリ。
  時間がないので作業的なものだけ。すぐにプールへ。今日は目標を持って平泳 ぎをするつもり。平泳ぎは腰痛に悪いから止められているけれど、ちょっとだけ ズルしちゃおう。

  上記の春樹の本に、トライアスロンのスイムの話題があった。
  クロールで1,500メートルを33分というのが彼の目標値らしい。500メートルで 11分。もちろんクロールでも平泳ぎでも問題ないから、クロールのできない僕と しては自分の限界を知っておきたい。この3ヶ月ほど平泳ぎをしてこなかったか ら、感覚が失われている。たしか、ゆっくり泳いで600メートルで15分じゃなかっ たかな。500メートルだと・・・。


  結果は500メートルで13分。
  腰痛を緩和するために息継ぎの回数を減らした。全行程の半分くらいは顔を水 面に出したままだから、スピードは相対的に遅くなる。しかも久しぶりだからも っと遅くなっているかなと思ったけれど、自分なりには及第点かな。

  でも、最初の100メートルくらいで腕の筋肉が痛くなってつらかった。
  最近はクロールで8メートル泳いでは9メートル歩くを繰り返しているから、 連続して泳ぐよりずいぶんとラクをしていたみたいだ。新居に越す前は、つまり 今年の前半は800メートルくらいなら連続で泳いでも何てことなかった。ところが 今日はプールから出たら腕が痛くてたまらなかったし、ああ疲れたなとすら感じ た。

  運動をすると、あの陳腐な決まり文句が身にしみてわかる。
  継続は力なり、というやつだ。少しでも手を抜くと、体はきっちとそれにあわ せて能力レベルを下げてくる。体だけではない。頭の使い方も受験勉強も人生も 、きっとみんな同じだ。そんな当然のことを、そしてできれば避けていきたいと いう怠け心の存在を、しびれるほど痛感する。まあだんだんと元のレベルに戻し ていきましょう。


  雲がどんどん増えてくる空の下で校舎へ。
  先週の土曜日のLクラスで扱った問題(ヒマここ)を演習して頂く。15問で4 問正解というのがLクラスだった。今日のCクラスは1つ上のレベル。同じよう に指名して。簡易解説と同時に採点。

  結果は、12問正解。
  ふーっとため息が出る。

「このあたりは、いま(10月だ)受けても受かりそうだね」

なんていうサービストーク。偽善でしかないのは明らかだが、ちょっと安心。かなりの基礎問題 なので、こうでなければMARCHは春の夢の象徴、というところだった。いわ ゆる日東駒専の下、MARCHの下、そしてその上には、それぞれの壁がある。

  遠くの壁を知っているのは講師ばかりなり、である。
  受験生なり生徒様なりは自分の近くにあるものでしか、判断できない。受験に 関しては素人なんだからしょうがないけど(それでいいのである)。自分の希望 大学の出題を、僕に

「おバカな出題だよね、この大学、大丈夫かな?」

と言われれば腹が立つこともあるだろう。それをどう捕らえるか、捕らえている かが大事だ。受験というのは感情ではなく、非情な理性を保つことで勝つゲーム だ。それを知ることが初歩の初歩で、そこからが長い。受験について語るときに 僕の語ること、というわけだ。


  授業後は業界関係者と懇談。
  正確には懇談という名前の飲み会。例によって細かいことは書かない。ちょっ とショッキングな話も拝聴する。ああそうか、彼女は・・・やめておこう。何か 助けてあげたいけれど、僕は実に無力である。それなりに酔って、この日記を書 く。僕は、何かについて語るときに語るべきことを見つけられるだろうか?

  「何か」すら見つけられないのかも。
  部屋の整理をして、歯を磨いてから眠ることになる、秋の雨の夜。
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