予備校講師でわるかったな!





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虫けら 11月30日


  8時半起床。
  夢は5つも見たけれど、採集にはほとんど失敗した。成功したのは授業シーン ものだけ。

・「下線部と同義語句を本文中から探して指摘せよ」という問題の解法を説明し ていたら、「そんなの、無理に決まってんだろ」と指摘されて、「無理だから教 えているんだろうが」と逆ギレしたものの、「だって生徒なんだからそんなこと できないよ」とごもっともな反論をされて困った。そりゃそう言ってしまえばそ うなんですけど・・・。


  朝食にラ・フランスという果物を食べる。
  名称に自信なし。たしか人生で1回だけ食べてまずくて、10年くらい避けてき たはず。転居してから果物を朝食に加えるという良き習慣が失われてしまったの で、そろそろ戻そうという作戦。何かをするときに、「〜する作戦」と名前を付 けるのは男性だけと聞いている。本当かな?

  さて、ラ・フランス。
  西洋ナシみたいなものですかね。むにゅっとしている。お味は、甘酸っぱいと 酸っぱいの中間くらい。えー、まずいです。また10年後にお会いしましょう。


  10時前からヒミツの花園。
  今日も寒い。空もどんより、ときどき雨。どうしちゃったんだろうというくら い寒い。たしか昨年は暖冬で、今年は夏が暑かったから、そのコントラストで寒 く感じるんだろうとは思う。やはり少し騒がしい加湿器の音を聞きながら1時間 半。午後にも30分。

  お昼前に整骨院。
  喫茶店とレストランの中間のような店に飛び込んで昼食。こういう店、きわど いんだよね。一つ間違えるとべチャベチャの昭和系ナポリタンとか出てきそうな 雰囲気。ビーフシチューを注文すると、意外に旨かった。ナイフとフォークとス プーンだけではなく、お箸が出てくるのも助かる。わしら日本人、フォークなん て不細工で原始的な食器(手の模写ですよ、あれ)は使いたくないものですな。 たまには使える店かしら。

  安いほうのスーパーに寄る。
  そろそろ年末モードで、ふところ具合が心配になってきたため。いろいろと正 月はお金がかかるのだ。ボーナスなんてものはないので本当に苦しい。今年は住 宅ローンは始まるわ収入は激減するわで家計は火の車。ついでに銀行によって通 帳の残高を確認すれば、ため息ばかり。お金が全てであるわけはないが、貧すれ ば鈍するというのは世界の事実だ。


  安い食材を買い集めて帰宅。
  吐く息が白い、というところまではいかない。恒例の読書。こういうときに限 ってこういう本なんだよな。

  『無能の人・日の戯れ』つげ義春を読了。
  著者は漫画家。12本の漫画が収録されている。圧倒的名作。

  以前に書いたように(ヒマここ)、つげ義春の漫画を読んだのは1回きりだっ たと思う。
  本書に収録されている「無能の人」の第4話『探石行』がそれである。つまり 僕は6作で完結する「無能の人」の途中の一話だけを読んでいたことになる。ど ういう機会で、どういう漫画雑誌で読んだのかは、全く覚えていない。どこまで も人生に後ろ向きな、止まった時間が流れる漫画だった、という記憶はある。

  「無能の人」の第1話は、売れなくなった漫画家が「石屋」を営む話である。
  多摩川の中流で石を拾い集め、川原に店を開いて売る(もちろん1つも売れな い)。漫画家の店がある川原には競輪場があり、向こう岸からやってくる客たち もいる。以前は渡し舟があったけれど、今はもうない。生活に苦しむ漫画家は「 渡し舟を俺が再開すれば儲かるのでは」と妻にもちかけるけれど、相手にされな い。

  いつまでも石は売れない。
  川原では貸しボート屋が支店のようにして渡し舟をやっているが、多くの客を さばききれない。待ちきれない客たちは、服を脱いで歩いて川を渡ってくる。そ う、それほどの深さのある川ではないのだ。漫画家(石屋だ)はふんどし一丁に なる。自分が客を背負って、川を渡してやるのだ。1人100円でいい。これでも生 活の足しにはなるのだ・・・。

  くたくたになって渡した客は12人だった。
  陽はくれて、石屋(漫画家)は店をたたむ。喘息もちの息子が迎えにくる。石 を店に残したままでいいのかと問われると、石屋は「あんなもの盗むやつはいな いさ」。

  息子は父(石屋)に「虫けらってどんな虫?」とたずねる。
  世の中の何の役にも立たない人のたとえなのだ、と父はこたえる。なんでそん な話をするのかと息子に問う。

「母ちゃんがね、父ちゃんは虫けらだって」

  積極的に人生を切り開いていけない、消極的な人生しか選べない自分を恥ずか しく思う。
  何かを夢見ているわけではなくて、できればこうして隠遁生活のようなことを して生きていきたいのだ。それは確かに、つらくて情けない、虫けら同然に生き ることなのかもしれないが・・・。父は答える。

「うんそうだ、虫けらとは父ちゃんみたいなものだ」


  確かに、売れない漫画だとは思う。
  ただ、こうして文章という器に盛っても理解され尽くすことはない、そういう 淋しさを絵にするのが非常にうまい漫画家だ。つげ義春はまだ存命のようだけど(失礼) 、どこかでこういう漫画を描き続けてくれないかな、と切に願う。


  プールへ。
  20分、体重は理想より1.2キロオーバー。とってかえして2回目の昼食は日本ソ バ。昨日の煮物の残りをアレンジして。それなりに美味しく作れてしまうのが嬉 しいというか悲哀というか。校舎へ。

  授業は少しハードに。
  Cクラスはふだんの手応えよりも定例試験の偏差値が低かったため。問題は生 徒様が帰宅してから何をするかであるのは事実だが、そうも言っていられない。 前々から書いているように、予備校に行けば勉強ができるようになる、合格でき るというカンチガイが横行しているように見える。何かをしなければいけないの だけど、僕もその何かを見つけていないような気がする。ムキになって授業を進 める。


  帰宅の途はBBQ数学講師とともに。

信「今年も終わりだねえ、明日から師走じゃん」
C 「正月は実家に帰るんですか?」
信「帰るよ」
C 「独りで?」
信「ああそういう意味か、独りだよ。正月に連れてくって、婚約者以外ありえな いじゃん」
C 「だからそのへんを何とか」
信「景色が変わればそっち関係も変わるって言ったの、お前じゃないか。ちっと も変わらないぞ、どうなってんだ(逆ギレ)」
C 「通勤経路を変えるとか」
信「変わったよ」
C 「早めに来て、駅の周りをウロウロするとか」
信「授業前に嫁探しのハイカイ、か」
C 「行きつけの喫茶店を作るとか」
信「ハンカチも落として歩かないと(*^_^*)」
C 「八方手を尽くせば何かが」
信「あ、そういえば、××××のとき、10年くらい前の教え子に会ったよ」
C 「ほう?」
信「いや、顔みただけで、確信持てないからそれだけだけど」
C 「10年前じゃな〜」
信「いや、けっこうなついていたんだぞ」
C 「10年前は・・・」
信「うるさい。こっちから声かけるのもどうかって」
C 「まあ確実に」
信「ふむ」
C 「ってか、誰? と」
信「だろうなあ」
C 「説明をするのにものすごい時間がかかり、しかも思い出してもらえず」
信「だから声かけられないだろ」
C 「声かけなきゃ良かったってなりますね」
信「どっちにしろダメじゃないか」
C 「もうハイカイするしかないんですよ」
信「仕事が減って、収入が減って、ローンが残って、やることなくて嫁探しか、 しかもハイカイ」
C 「人生台無しですね」
信「お前が言うことじゃないんだよッ!」


  帰宅して夕飯。
  豚肉の西京味噌漬けは良かった。1週間寝かした甲斐があった。1枚140円くら いの安い肉だったけど、漬け込めば味がよくなることがわかった。限界はありそ うだけど。いつか石が売れたら、じゃないやお金ができたら牛肉で作ってみたい 。

  この秋2回目の生ガキはポン酢で。
  バルコニーから青ネギを刈り取って刻んでいれる。美味。あわせるのが大根オ ロシだけでは淋しいので、七味を入れてかき混ぜる。これでインチキもみじ下ろ しの出来上がり。本当は大根に穴を空けてトウガラシを詰め込んでから下ろすの だけど、そんなことまではやらない(それはそうだろう)。これでもそれなりの 味になる。酒飲みだったら、これだけでツマミになるかも。

  他にはシイタケと白ネギの煮物など。
  虫けらのことを考える。生み出す、作り出すということと、世間的成功は違う んだよと言い聞かせたい。いやそれでも、とも思う。僕もだんだんと虫けらとな っていくのだろうとも思い、そうはなるまい、なっていないと思いたがっている 。救いのないほど暗い日記で失礼した。

  明日から先生は走る。
  師走・・・(^.^)/~~~
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