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前記:この旅は2008年2月に決行された。
上野発の夜行列車降りたときから〜、じゃなくて、夜行列車「特急あ
けぼの」は21時45分に上野を発車した。
「しんだい・・・とっ・きゅう!」
の感動は前にも書いたので(ヒマここ)、早くも先を急ごう。
この「あけぼの」は従来型の寝台列車である。
機関車が客車をひっぱるという牽引タイプである。これとは異なり、客車それ
自体に推進能力があるもの(つまり一般的なイメージでいう電車)を「電車特急
」という。仮名として「あけぼの」のような寝台列車を「牽引特急」と呼んでおこう。
先のリンクのエッセイで書いたように、「牽引特急」のほうが乗り心地が良い
。
エンジンの響きが直接床から伝わってくることがないためだ。悪いところは、
列車全体が発進するときに、連結器の振動が伝わってくることである。具体的に
は、駅から発車するときに、
ググッ
という振動が列車全体を貫くのだ。しかし、それがまた、いいのだ。テツとして
。ああ俺たち私たちはこの瞬間にこそテツしている。世界を清めるテツとして存在している。おい、そこの非テツ、読み飛ばすんじゃないッ!
停車駅ではない長岡駅を「あけぼの」は出発した。
いわゆる運転停車であろう。乗客の乗降は扱わなくても、ダイヤの都合で手
駅に止まることを運転停車というのだ。非テツはよくよく知っておくように。
寝台列車は、1種の暗渠(あんきょ)である。
時刻表でダイヤを見てみよう。
高崎 2320
長岡 ↓
新津 ↓
新発田 ↓
村上 320
あつみ温泉 408
「↓」は通過の記号で、数字は24時間制の発車時刻である。
本当に通過したのだろうか。ワープしたのではないのか。乗客が眠っているあ
いだに、何が起こっているのか。乗客の、つまり僕の預かり知らぬうちに暗渠
の中を通り抜けたのではないのか?
これが、やはり先のエッセイのシリーズでひいた、
「せっかくの寝台だから寝たくない。でも、せっかくの寝台だから眠りたい!」
(出典多数につき引用原典省略)
という情況である。暗渠を抜けたのかどうか、確認したいのである。
さて、「あけぼの」は日本海側に出たようだ。
まだ朝の5時くらいなのだが、雪景色であることは確認できる。車両編成に視
点を移そう。テツとして非常に重要な部分だ。
前回の「サンライズ瀬戸」は新しいタイプの寝台特急であったが、この「あけ
ぼの」は古い。
僕は今回も個室寝台Bを取ったが、なんと室内で煙草が吸えるのだ。大丈夫な
んだろうか。一応は
>寝タバコ禁止
という表示が出ているけれど、例によって狭いので現実的にはどうなんだろうと
思われる。煙もこもるし、僕は座ってドアを開けて喫煙するようにしていた。
編成は、
・個室B(2階建て)
・個室A(2階ぶち抜きで幅も広い)
・B寝台(蚕だな式の2段)
・ゴロンとシート(自由席で寝台料金不要)
である。
おどろいたのはゴロンとシートだ。「サンライズ瀬戸」ではぶち抜きの部屋に間仕
切りとカーテンを入れただけのものだが、
「あけぼの」ではB寝台と同じ車両
を使っている。つまりベッドを独占できるわけで、もちろんカーテンもあり、実
質的にはB寝台と全く変わりがない。いくら自由席だと言っても、カーテンを開
けてベッドに寝ている他の客を追い出す人はいないだろう。B寝台のために寝台
料金を払った人は、くやしい思いをするのではないか。
車内放送は5時から再開した。
寝台車では夜間は停車駅があっても放送をしないのが普通で、このように早朝
から放送が始まる。列車は定刻通りの運行。しかし6時46分着予定の秋田には、
3分遅れとなってしまった。雪の影響か。あるいは、どこかで列車の遅れがあっ
たのかもしれない。羽越本線はもちろん単線であろうから。ホームで朝食用の駅
弁「比内鶏弁当」を買った。本物だろうか。
乗車率は上野から2割程度だった。
秋田を過ぎたあたりからはガラガラになった。日本海側を回るから、終着の青
森に向かう人が使う列車ではないためだろう。上野から青森までの所要時間を比較しよう。
・東北本線周りで新幹線と特急利用
→4時間半。
・上越線・羽越本線周りで「あけぼの」利用
→12時間。
テツならではの遠回り。ふふふ(^。^)y-.。o○
列車はどんどん遅れていく。
青森9時55分着で、僕は10時00分発の函館行き特急に乗り換える予定。青森ま
で2時間足らずの地点まで来て、20分遅れ。取り返せるのだろうか。車内に、テ
ツに、緊張が走る。車内放送。
>青森で函館方面に乗り換えのお客様にご案内します。接続を取るかどうかを検
討しておりますので、これから車掌が車内にお伺いします。行き先をお知らせく
ださい。
珍しいではないか。
「接続を取る」というのは、列車Aが遅れた場合、乗り継ぎの列車Bがその乗
り換え客を待つこと。八戸→青森→函館は旅客が多い重要な路線(新幹線と接続
しているから)であり、接続を取るための遅延をできるだけ回避したいのだ。
新幹線は病的にダイヤが遵守されている路線
である。さすがにこの事実は非テツの皆さんもご存知だろう。
どうなるのだろう。
「あけぼの」の乗客に行き先を質問するということは、乗り換え人数の多寡に
よって接続を取るかどうかを決めるのだろうか。車掌に質問してみると、
「ええ、人数を知らせまして、ここ(あけぼの)では(上からの)指示を待つか
たちになります」
ということ。たとえば乗り換え客が10人以下だったら見捨てて、遅延の保障(特
急料金の払い戻しが考えられる)をするのだろうか。青森から函館に向かう次の
特急は青森発11時19分である。特急料金の払い戻しは「2時間以上の遅延」がル
ールだったはずだが、特例が適用されるのだろうか?
青森まで1時間くらいのところで車内放送。
少々の遅れなので接続を取るということ。なーんだ、つまんないな。「あけぼ
の」は結局7分の遅れで到着し、青森発「スーパー白鳥」は4分ほどの遅れで出
発した。
☆リラックスタイム★
・以下の記述は「ここ」の路線図を見ながらだと、よりよく楽しめます。別窓で開きます。できれ
ば本物の時刻表が良いのですが・・・持ってないですか・・・。
久しぶりの青函トンネル通過。
たぶん2回目だと思う。新しい路線(ちょうど開業20年)のせいなのか、線路
は直線が多くスピードが速い。乗車率は3割くらい。特筆事項はなく、北海道に
上陸して最初に停まる木古内駅で降りる。ホームには20センチくらいの積雪があ
るけれど、乗客が歩くスペースは除雪されている。ここで江差線に乗り換え。1
時間待ち。
よく晴れている。
特にやることもなく駅前のバスターミナル(バス停は1つだが)を見ると、松
前方面行きのバスが止まっている。今夜の宿泊地は松前なのでこのバスに乗れば
1時間半ほどで着くのだけど、そこはテツ。未乗の江差線で江差まで行くつもり
なのだ。
函館からやってきた江差行きは11時27分発の2両編成。
大学生らしき4人組が車内でいくつかの席に分かれてシートを独占して眠っている。まだ「青春18きっぷ」の季節ではないけれど、おおかた
北海道全線乗りつぶし
でもやっているのだろう。微笑ましいことだ。テツ修行には必須の、若いころの
乗りつぶし体験。俺もむかし頑張ったよ。お前らもがんばれよ。
江差に向かう電車は、高くはない山々を抜けていく。
晴れたり雪が降ったりというのは北国らしい。峠というほどのものはなく、た
だ山間を抜けていくのみ。江差線は函館→木古内→江差を結ぶローカル線で、1
日6往復。函館・木古内間を青函トンネルを通る特急が走らなければ、廃線にな
ってもおかしくない路線だ。終着の江差には12時34分に着いた。
ここからが問題だ。
12時34分に到着して、12時34分に出発するバスに乗らねばならない。事前にネ
ットなどでよくよく調べたのだが、鉄道とバスが接続を取ってくれるかどうかが
わからなかった。
ふつう、ローカル線の駅から出るバスは、数分の接続時間を取る。
駅の規模が小さいので2分もあれば充分なのだ。だからこの「12時34分到着→
12時34分に出発」はダイヤ上のことで、実際には接続を取ってくれるだろうと踏
んでいた。駅舎から出ると吹雪。あっ。
「江差ターミナル行」らしきバスが去っていってしまった・・・。
(その2に続く)
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