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essay エッセイ
どういう文脈だったの? 3月23日
  問題ごとの難易差が激しい春期講習Fクラスの短文編から。

The lilies are in bloom a little later this year, (          ) is lucky for you.

  どうという問題ではない。
  実際には選択肢があったけれど、ここに示すまでもない。もしこの問題の答えを言いなさいと指名して、万が一にも生徒様がお間違え遊ばされたならば、

「ハイ、きみ明日からLクラスへ行ってよし!」

ということだろう(仮定法)。冗談はともかく、実際に間違える人は1人もいないと断言できる。


  それはいいとして。
  単純な文法問題って、ほとんど意味を考えないで解きますよね。選択肢が存在すると特に。いやモチロン、つい意味を考えるのは(そして念のために答えを決めてから確認するのは)普通なんだけど、この英文、何が言いたいのですか。予備校の和訳を写します。

>ユリの花は今年はやや遅咲きですが、それは君にとって幸運ですね。

  どういう文脈なんでしょうか?
  ユリの花の開花が遅れることにより、何かのメリットが「君」に生じる。えーと、どういうメリットですか。

>ユリの花が開花すると、君の嫁はとつぜん機嫌が悪くなると聞いているよ。2月14日には私にチョコをちょうだい、と言い出すとか。ところが今年は、地球温暖化の影響が出なかったのか、ユリの花の開花が遅れたね、いやぁ、君にとってスーパーラッキーだったね?

とか。どういうことなんだよ(@_@;)


  ここで考えられることがある。
  入試の英文はヘンなものが多い。ということはずいぶん昔に会員ページに書いたし、だいたい陳腐だし、このページはエッセイだから書かない。考えられるのは、こういったフレーズが

何かの文学に登場していた

という「有名な」事実である可能性だ。非常によく知られた言い回しであるのに、僕だけが知らないという悲しい事実だ。まずいよなぁ。おれ、いちおう英文学科出身だもんなあ。ひょっとして、こんなページを読んでいる暇な関係者に、

「おいお前、恐ろしいほど世間知らずだな」

と笑われているかもしれない。だって知らないんだもん・・・。


  笑った読者様に質問です。
  同じテキストに掲載されている大阪大学の英作文、日本文の出典は何でしょう?

>ただ僕は思うのだけれど、自分の思っていることを日本語ですらすらと表現できない人は、外国語をいくら熱心に勉強したところで、その言葉でもやはりうまくは話せないだろう。


  誤解のないように言えば、知らなくて良いのである。
  英作文なんだから、意味を理解してちゃんと訳せればいい。受験生も生徒様も講師も同じ条件である。知識なんて、あっても偉くはない。ただ、もしささいな知識があれば、

「ああこの文ね、これは・・・」

とウンチクを語れてカッコイイ(またはイヤミったらしい)と思われるかもしれないな、というだけのことだ。

  では正解は、このページの下のほうに追記のかたちで。








追記:正解は『やがて哀しき外国語』村上春樹;170ページ。原文は以下の通り。
>ただ僕は思うのだけれど、自分の思っていることを日本語ですらすらと口語的に表現できない人は、外国語をいくら熱心に勉強したところで、その言葉でもやはりうまくは話せないだろう。これはもともとの性格的傾向の問題であって、なおそうと思って簡単になおせるものではない。日本語の歌をうまく歌えない人が、英語で歌ったところで急にうまく歌えないのと同じことだ。

追記2:出典年度は1997年(前期)。今世紀に入ったギリギリあたりかと思ったが、さすがに忘れていたのでこのエッセイを書くために調べた。もちろん、電話帳にも日本文の原典などの記載はなかった。本当に覚えていたわけだ。

追記3:どうでもいいが、この大学の前期日程の英作文はいつも「外国語・英語・言語」がネタになっている。過去問はたくさん遡ると傾向が見えるという典型的な例である。

追記4:大切なのは、事前の下調べナシで語れることにしておくことだろう。生徒様にとつぜん質問されて、サクサクと具体的に答えることだ。本質と関わらない事柄であるからこそ、そこには「余裕」が見られるわけだ。

追記5:調べて語るのは深みがない。ネットの検索エンジンを使うと、たぶん原典をたどることができるだろう。調べて知っていることと、調べなくても知っていることとのあいだには、野球とベースボールの関係に似た大きな隔たりがある。


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