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狂気を呼ぶ月は 9月7日


  3時に暴風雨で目が覚める。
  本格的だなあ。もちろん窓は閉め切ってある。外が見えないのがつまらんな。 風がよほど強いのか、バルコニー側にある網戸が独り自動ドアごっこをやってい る。さみしいやつ。すぐに寝床に戻る。

  7時起床。
  まだまだ猛烈な雨と風。こんな状況で通勤する人はたまらないだろう。新聞を 取りにマンションのエントランスに降りていくと、まさに通勤せんとすの新婚( かどうか知らない)夫婦に出くわした。ご苦労なことだ。しかしこのマンション 、予想されたように若い夫婦が多いな。昨夜は暴風雨楽しんでいたんだろう。 涼しい顔しやがって。むかつく。


  8時から活動。
  風はひたすら強く、雨もちらほら。盛り上がりにかける台風だったなあ。もう いいから、早く雨やめよ。風が強すぎて部屋の換気をすることができない。気分 悪いなあ。予習をしたり本を読んだり。

  『おまけより割引してほしい』徳田賢二を読了。
  専修大学経済学部教授による、「経済心理学」のオモシロ本。

  まずタイトルで「ナンじゃそら」と手にとって、サブタイトルの「値ごろ感の 経済心理学」で「ほう」と思う。
  値ごろ感とは、価値を費用で割ったものである。500円の価値があって500円で 売っていれば値ごろ感は1になる。それが100円割引されて400円で売られていれ ば値ごろ感は1.25である。「はあ」と思うだろう。このあと、全6章にわたっ て価値を上げる(または下げる)要素と、費用を下げる(または上げる)要素が エンエンと説明される。

  値ごろ感はあくまで感覚であって実在するものではないが、様々な現象が価値 と費用に影響を与え、値ごろ感が形成されるという。
  それらの現象の例がなかなか面白い。

・フリーペーパーはなぜ値ごろ感が高いのか
・貧乏な学生はなぜ時にタクシーを使うのか
・モスバーガーの匠味十段はなぜ1,000円でも人気があるのか
・衝動買いや大人買いにはどう値ごろ感が働くのか
・ついで買いでなぜ値ごろ感が上がるのか

  読んでいるほうはオモシロおかしく進んでいくのだが、著者は大真面目でこれ らの現象を説明していく。
  そのギャップがおもしろい。時間費用や優越欲求(有名な?マズローの欲求階 層説)や回転寿司やマックのスマイル0円が平等に扱われているのである。それ でいて著者は真剣に考えているようで、「あとがき」は以下のように始まる。

>この本の執筆を続けている間に、何から何まで値ごろ感で考える癖がついてし まった。

  大学の授業で寝ている大学生はどういう値ごろ感を持っているのか、体育会の テニスプレイヤーはいかなる値ごろ感をもってして勝負ショットを放つのか。
  著者は値ごろ感を説明づけようと、どこまでも本気なのである。新古書店のお かげで、定価700円の本書を350円で買えた。価値は1,000円以上ありそうなので、 ざっと値ごろ感は3くらいだ。ぜひ立ち読みから始めてください。


  10時半に1回目の昼食。
  残りご飯とキムチなどで簡単に。台風ニュースを観てみると、おかしな報道が チラチラ。もう昼の11時も近いというのに、

「××線 通勤ライナーは運休」

なんていうテロップが混ざっている。もう通勤時間じゃないやろ。たぶん内容の 検討をしないで垂れ流しているんだろうね。もう1つは

「多摩川で遭難あいつぐ」

というお話。いやもちろん遭難があるのはおかしくないのだが、「中州に取り残 されている」とか「河川敷に取り残されている」とか「多摩川を見に行くと言っ たあとで行方不明」とか、ヘンなのばかりである。

  関東の被害は昨晩から今朝にかけてが中心である。
  すると、夜とか早朝とかに「中州」とか「河川敷」とかにいた人がいたのだろ うか。何のために。キャンプでもやっていたか、あるいは花火か、BBQかもし れない。台風の夜に、どうして?

  「見に行く」というのも良い。
  見に行ってどうするのかよくわからない。農業関係者が田んぼを気にして、と かそういうのはよく聞く。しかし、彼は多摩川の何を見に行ったのだろうか。屋 根の修理もそうだが、台風の襲来はある種の人々に精神的な混乱をもたらすのか もしれない。台風のために異常行動が促進されるのかもしれない。満月の夜に、 馬がいつも以上に激しくいななくように。

  当たり前だが、馬の話は比喩であり寓話である。
  月、または月の満ち欠けが狂気をもたらすというのは昔からよく言われている 。月の女神はルナ( Luna )、形容詞はルナティック( lunatic )。後者の単語はアクセ ント規則の例外として有名だが、頻度はどうですかね・・・気になる受験生は辞 書で確認しましょう。珍しく英語の話なんか書いちゃって、イヤあねえ。


  正午またぎで整骨院。
  のちにプール。午後になったら晴れてきたが、強風は変わることもなし。ああ 、今の表現で思い出した。とつぜんだが、藤原道長の歌。

この世をばわが世とぞ思ふ望月の
欠けたることもなしと思へば

  この時点で狂っていたのでしょうかね(・_・;)


  午後はダラダラ過ごす。
  2回目の昼食は地元スーパーの「シメジご飯弁当」。味を見るために試してみ たものの、ちょっと厳しいかな、というところ。しかし、セールとはいえ390円っ てのは安すぎるような気がする。本当に困ったときに使う程度かしらね。油も悪 くて少し胸焼け。さあ2学期開幕です、校舎へ。


  Cクラスから開幕。
  人数は少々とはいえ増えて、教室もサイズの大きいそれに移った。人数の増え 方としては悪くはないくらいですかね。経営という側面からすれば、「夏から増 える」ことの最重点ポイントを低学年に移すべきではと思わなくもない。もちろ ん僕の関与すべきことではないにせよ。

  授業そのものは、ちょっと僕の落ち着きがなかったかも。
  1週間ぶりで、教室も大きくなって新顔の生徒様もいれば、そういう流れにな ってしまうこともある。逆に言えば、良い意味で授業に(青臭くも)熱中できた かな、というところ。

  授業内演習では、小手調べに熟語の問題。
  ざっとのぞいたところ、rely on と put up with のデキが良かったのは安心。安 い、つまりレベルの低い熟語がわりに上位の大学で出題される時代になっている からだ。正直なところ、上記の2問を落とすのでは

「入試よりも人生を考えるべきでは?」

となるところだが、出題される以上はそのレベルで振り落としができる入試にな っている。


  ところで、ある歌に関する余談をした。

♪おーブレネリ、あなたのお家はどこ〜?
  ワターシのおうちは、スイスなのよ〜

  こんな感じだったけど、これであってるのかな。この手のことを調べる趣味も なければ、授業前に準備することもしない主義。ヒマなうえに知っている人は教 えてください。この余談で、ちゃんと長文の内容とリンクさせているのが自分で も恐ろしい。


  授業は1分ほど延長。
  『攻略センターゼミ』の宣伝をムリヤリ入れたため。企業の犬としては、あっ 、生徒様のためを思えば、大切な情宣活動である。この講座に関しては「ここ」 の過去日記から追いかけていってください。今年は10月6日と13日の講座の担当。

  なお、今年度も直前講習の『センター英語』の担当はないため、エッセンスは 全部『攻略センターゼミ』で吐き出してイキます。
  あの方法論を使っている問題集はないし、そういう授業をしている講師もまず いないと思われる。そう言うからにはもちろん諸刃の剣(もろはのけん)で、イ ンチキな部分もある。それは認める。ただ、

「第2問Aの取りこぼしがないように」
「時間配分に気をつけよう」
「読解力が勝負だ」

なんていう正論は、高い受講料と時間を引換えにする意味を持たないと考えてい る。そんなものは、市販の問題集にも書いてあるので・・・。


  あついあつい蒸し暑い。
  台風の吹き返しの風で湿度が高い。帰宅して、珍しく夜にもエアコンを使う。 夕飯は地味に昨日の続き。マグロのすき身・西京味噌漬けの豚ロース焼肉・茹で モヤシの自作チャーシュー添え・モロキュウ・生レタスなど。

  久しぶりの授業で、ビールがひどく旨かった。
  湿度のせいで、すぐにグラスに張り付く水滴が気にならないくらい。キリッと 冷えたグラスに、ピシッと冷えたビール。淡い琥珀色の液体が、乾いたノドを通 り抜けていく。ああ授業があるっていいんだな、楽しいなとゴキゲンな夜。月は 見えない。


追記:エッセイ270「ペットの外出許すまじ」をアップしました。ペットを飼って いる人はクリックしないように。ダメ、ゼッタイ。

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