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一瞬の雨になれ 10月27日


  9時半起床、雨、朝風呂。
  昨晩の鍋の残りで雑炊を作る。新聞を読むと、今日から読書週間という記事が たくさん。そうなんだ。


  毎年のように、同じような記事が出る。
  ひそかに楽しみにしているのが小・中・高生への読書アンケート。「今年の5 月に読んだ本で何が面白かったか」のベスト5までを紹介するものである。今年 も、あさのあつこの『バッテリー』は中学生男子を中心に人気だったそうな。僕 もちらっと立ち読みしたけど、読むにはちょっと年を取りすぎたかな、と思われ る。

  おもしろいのは、中・高生女子の人気作品だ。
  ベスト5までのほとんどが、いわゆる「ケータイ小説」だった(詳しくは毎日 新聞のここの記事)。男子は高3で『恋空』が3位に入っているくらいで、ほと んど人気がないのと対照をなしている。そもそも、我が「よびわる」読者には、

「ケータイ小説って、何それ?」

なんて人もいるかもね。そんなアナタ、時代に遅れすぎです(^.^)


  ケータイサイトに連載された小説が、書籍化されてよく売れてるんですよ。
  素人さんが書いているからウブくて、内容的に「大人」が眉をひそめるものが 多いそうですけど、とにかく人気なんですね。僕もときどき書店でチェックして いますが、買う気になったことはないかな。それにしても、女子中高生にここま で人気とは知らなんだ。

  よし、わしも連載を始めるか。
  読書週間は2週間だから、14日間で読みきりだ。


『一瞬の雨になれ 第1章』

僕は36歳で、そのとき木次線のシートにすわっていた。
その古ぼけたディーゼル車両は濃い緑のなかをくぐり抜けてスピードを落とし、 備後落合駅に到着しようとしているところだった。
2月の冷ややかな雪が大地を白く染め、JR西日本の制服を着た駅員たちや、文 字のかすれた駅名標や、色あせたコカコーラの自動販売機やそんな何もかもを池 袋モンパルナス派の陰うつな絵の背景のように見せていた。
やれやれ、また未乗区間が減ったか、と僕は思った。


「盗作じゃねーのか、おいこらッ!」

  まあそう言いなさんな。あらゆる芸術は模倣から始まるのだ。では続きは来年 の今日ということで。ホントか(^^)


  午前中はヒミツの花園。
  外は本気の雨。台風がやってきていることは昨晩まで知らなかった。いきなり なんだね。少し風が強い程度で、それほどの被害で出るようなレベルではないの かも。各予備校のサイトを見ても休講情報などはない。この雨の中でスーツ出勤 というのがイヤだな。

  午後になってお仕事少々。
  少し汚い言葉だが、「人様のケツを拭く」という言い回しがある。自分で拭け バカってことである。その内容はオトナの事情で書けない。他にも予習少々。昼 食はパスタを作って食べる。残っていたエリンギが使いきれてうれしい。


  では読書週間なので読書の午後。

  『見えないドアと鶴の空』白石一文を読了。
  文字ギッシリの長篇小説。まずまず良い。

  この著者の小説は文庫化されると必ず買っている。
  以前にも書いたように(ヒマここ)、緊張感のある息苦しい描写と、ぐいぐい と読者を引き込むストーリーテリングが好きなのだ。本書にもその特長はよく現 れている。

  しかし今までと異なる点が多い。
  食事の描写が異様に丁寧になり(以前は生活感のない小説ばかり)、オカルト に近いシーンが頻出する(今まではリアリズム小説ばかり)。後者で読者の好み が分かれてしまうだろう。いくら小説とは言え、魔法が出てくるというのはどう なんだろう。ハリポタじゃないんだからさ。僕はそこが気に入らない。ただ、記 述そのものは漢字が減ったぶんだけ、わかりやすくなった。

  また気になるのは、ストーリーの構造がそっくりの小説が以前にあったという ことである。
  それは村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』。ネタバレになるので詳しく書か ないけれど、あまりにも同じ構造が高い頻度で現れすぎる。ある小説へのオマージュ としての小説というのはよくあることで(ここの感想文日記など)、それ自体は 何も問題ではないと僕は考えている。あるいは、小説はストーリーが全てである とする読者にとっては、不快そのものであるかもしれない。この面でも読者を選 んでしまうだろう。

  それこそ、ケータイ小説になじんだ読み手がこういう本に入っていけるかどう か。
  善悪の問題ではない。この手の本を好む僕がケータイ小説を手に取る気になれ ないのと同じことである。どちらに真実だの本質だの芸術だのがある、という話 でもない。むしろ、ケータイ小説という新しい文学が誕生したことをありがたく 思うべきなんじゃないかな。ある立場からの一方的な嫌悪感なんていうものは、 たいした問題ではない。まとめとして、ちゃんと立ち読みしてから購入を決心し てください。いい小説です。


  掃除などして過ごす。
  明日の来客に女子が含まれなければこんなことはしないんだがね。そうこうしているうちに、出勤時間だ。

  外は大雨。
  けっこうシリアスな降りかた。風も強くなって、暴風雨と言えるくらい。どう なってるんだよ。それでもやはり各予備校とも「平気で授業やりますから」とい う様子だ。えー、マジですか。さすがにスーツはやめておく。

  外に出ると「ちょっと身の危険を感じる」くらい(結果的にピーク時に出勤だ ったようだ)。
  マンションのエントランスの軒下に避難してきたサラリーマンのおっさんがい た。全身びっしょりで、比喩ではなくて濡れネズミ状態だ。使い捨ての傘の骨は 2本ほど折れている。営業の途中で被害にあったのだろう。


  日本の傘の1年間の消費量は、人口と同じくらいの数だと聞いた。
  もっと多かったかな、とにかく1年に1人1本を使い切るという話だったと思 う。日記としての時系列が乱れるが、今日の僕は校舎に着いた時点で傘が壊れ( もともと骨が1本折れていて、2本目も折れた)、校舎に捨ててきた。これで1 本使ったことになる。

  さて、傘に対する日本人の愛着が薄れているのだろうか?

  違うと思う。
  単純に傘が壊れやすくなっただけじゃないか。「使い捨て」と呼ばれる100円か ら300円のビニール傘は確かに壊れやすく、それだけ無駄に資源を消費しているこ とになる。しかしそれは問題ではなくて、実は3,000円くらいする「ちゃんとした 傘」が壊れやすくなって、コストパフォーマンスの悪さに消費者がウンザリして 、安い傘を使うようになったのではないか。

  そして、安い傘は、今日のような台風で簡単に壊れる。
  だからまた、人々は、あるいは僕は安い傘を買う。だって、すぐ壊れるから安 いほうがいいじゃないか、と考えて。明白な資源の無駄遣いである。さて、悪い のは誰だろう。使い捨てればいいとする消費者か、それとも世間か、あるいは?
  わりにわかりやすい比喩なので、傘のところにお好きなものを代入して楽しん でください(^_^)


  校舎に早めに到着。
  やはり電車は少し遅れていた。ジーンズはぐっしょり。やはりスーツを着てこ なくて良かった。タオルで吸水したものの、乾くはずもなし。授業中にベタベタ して気持ちわるかった。生徒様は来るかな、ちょっときついだろうなあ。僕がそ うであるように、予備校への通学時間帯が最悪だったのだ。

  教室に行けば欠席率が6割以上かな。
  さすがにそんなもんでしょう。僕は仕事だから来るけれど、生徒様からすれば 「えー、マジですか」くらいだろうし、外に出るのが怖くて休むのはアリだろう 。やはり、結果的には校舎にたどり着けさえすれば大したことはなかったけど、 それはただの結果論

  なごやかに授業を終える。
  「人様のケツを拭く」話題を校舎のスタッフと話しておく。有能な人なので解 決に向けて動いてくれるでしょう(よいしょ、よっこらしょ)。雨は小降りにな って、風も弱くなっている。帰宅して夕飯。


  ヌル燗は岡山県の『酒一筋 純米』。
  雑味がないことを唄っているが、そうでもないような。やや辛口。わりに普通 。こういう極端というか個性的なネーミングの酒はイマイチという気がするけど どうだろう。決して悪い酒ではない。どちらかと言えば熱燗か常温で呑むものか もしれない。

  日付が変わって、雨がやんだ。
  風は少々あるけれど、完全に峠は越したようだ。明日は朝から晴れるだろう。 一瞬の雨がタイミング悪くやってきた一日だった。
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