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大阪は梅田駅を9時過ぎに出る。
梅田駅は阪急電車の始発。線路は北上し、まずは十三(じゅうそう)駅へ。こ
の駅で京都線と宝塚線と神戸線に分かれる。言い換えれば梅田→十三間は3路線
が平行して走っている。
つまり6つのレール(正確には12本のレールになるが)が横にならんでいるわけで、3本の
上り電車と3本の下り電車、計6本の電車が同時に動きながら横に並ぶという驚天動地の景
観がみられることもある。
「・・・どこが景観なんですか?」
いいからッ!
土曜日なので特急は空いている。
ダイヤが濃い(=電車がたくさん走っている)区間なので時刻表は持参しなか
った。特急は一気に京都・河原町へ至る。河原町駅は鴨川の西岸にあり、そこか
ら鴨川を越えて3分ほど歩くと東岸に京阪電車の四条駅がある。このあたりは、
時刻表も地図も要らない。
京都を訪問するのはこれで10回目くらいか。
高校生のときは修学旅行で、大学生のときはクルマで夜行電車で、社会人にな
ってからは新幹線利用の日帰りでなどなど、人生でもっとも数多く来ている観光
地だ。寺が多すぎて名称はハッキリしないが、有名な場所なら観光ガイドブック
がなくても移動できる。
まさに今、何も見ないで例をあげよう。
界隈の湯豆腐で有名な南禅寺に行きたいとする。京都駅にいる。さあどうする
?
・バスで直行するなら「5番」に乗る。
これが一番わかりやすい。所要時間は20分くらいだろうか。「5番」
は東山(ひがしやま)と呼ばれる地域を走る路線で、一気に銀閣寺や修学院離宮
まで行くことができる。
・少し工夫するなら地下鉄。
北上する地下鉄の3つ目くらいの駅で、東西に走る地下鉄に乗り換えて(京都
には地下鉄が2本しかない)、終点近くの「蹴上(けあげ)」駅で降りて、北に
向けて歩けば徒歩10分くらいで南禅寺。
このくらいの知識があれば、もちろん京都駅が始点であればということだけど
、大まかな移動手段がわかる。
ということで今回は京都観光ガイドブックを持参しなかった。1日しか滞在し
ないから、なんとでもなるだろうという読み。最近はケータイのナビゲーション
がなければ地元である東京すら歩けないお利口さんもいるようだけど、僕はそれ
ほど頭が良くない。
さて地下にある河原町駅から地上に出る。
四条通りを東に向けて歩くと、左手から北に向かうのが先斗町(ぽんとちょう
)。お高い料亭で有名だけど最近は俗化されてただの観光地になっている・・・
なんて書くと京都の人が怒るからやめよう。
そのまま京阪四条駅に行くのはつまらない。
散歩がてら先斗町を北に向けて歩くことにする。まだ朝の10時なので人通りは
少ない。ちゃんと路面に水が打ってあるところもある。なかなかすがすがしいで
ござるよ。
先斗町を抜けると三条に出る。
三条通りが鴨川を渡るあたりに出てくるわけだ。ここの川岸にはスターバック
スコーヒーがあるはずだ・・・あったあった。知っている場所にもう1度たどり
つく喜びもある。
テクテクと橋を渡り京阪三条駅へ。
このあたりの京阪電車は地下を走っている。終点の出町柳駅まで2駅。地上に
出て本日のお楽しみ叡山電鉄に乗り換え。終点の鞍馬駅まで往復すると880円く
らいということで、スバヤク1日乗車券1,000円を購入。1回の途中下車でモト
が取れるだろう。叡山電鉄の時刻表を調べてこなかったが、予想通り1時間に3
本ほどはあるみたいだ。
鞍馬へ向かう路線と、比叡山方面へ伸びる路線がある。
いま乗ったのは比叡山方面に行くもの。出町柳駅で叡山電鉄のチラシをもらっ
ておいたのだ。途中で乗り換えようかと考えたが、そのチラシを見ると比叡山方
面の終点の八瀬比叡山口駅から大原へ向かうバスがあるという。本数は不明だが、まあ1
時間に2本はあるだろう。幸いなことに雪も積もっていないし、勝負ッ!と八瀬
駅まで。
徒歩3分くらいのところに大原行きのバス停を発見。
またまたラッキーなことに10分足らずでバスが来るようだ。もうこのあたりは
比叡山のふもとということで寒い。雪がチラチラと舞ってくる。
15分ほどで大原に着く。
♪ 京都大原三千院
恋に疲れた女が一人・・・
という唄があったはずだ。まあ、今の場合は「テツに夢見る男が一人」なんだけ
ど。
バスターミナルのトイレに入る。
ここからは徒歩移動が多くなるから寒いだろう。そこでリュックから薄手の携
帯用パジャマを取り出してズボンの下にはく。モモヒキの代わりということだ。
旅慣れているのではなくて、単純に寒がりなのだ。
バスターミナルから東に行けば三千院。
西に行けば寂光院。両方とも周るつもり。三千院まで徒歩15分くらいか。門前
までいって引き返す。2回はいったことがあるけど、たいしたものではないので
。大原は田舎町で、そこを歩くのが観光だと僕は考えている。何でもかんでも観
光施設に入る必要はない。
バスターミナルまで1回戻り、今度は寂光院へ。
観光客はほとんどいない。例年ならまだ雪が積もっている時期で、完全なオフ
シーズンである。晴れているけど雪がチラつく。悪からず。
寂光院は6年ぶりに来た。3回目だ。
建礼門院(=平清盛の娘・徳子)が住んでいたということ。ところが西暦2000年に放火があって、本堂が焼け落ちてしまった。1000年も前のものに放火したボ
ケナスは捕まったのだろうか。さくさく捕まえて火あぶりの刑にすればいいのに
。時を超えて存在し続けるモノの価値がわからない奴は死んでよろしい。真面目
に。
曖昧な記憶では、1992年ごろに僕はその本堂を見ていたはずである。
しかし2001年のときには本堂がなかった。そのときすでに「再建するために寄
付金を!」という張り紙が出ていたと思う。ところが今日は「ついに本堂再建な
りました」と門前に掲示が出ていた。ほうほう、と中へ。拝観料500円くらい。
確かにピカピカの本堂ができている。ちゃんと建物に上がれるようになっている
。ま、中を見たからどうだ、というものでもない。お寺の観光とはそういうもの
。
バスで市内に戻ろう。
叡山電鉄の宝ヶ池駅まで戻りたい。しかしバスはそこには止まらない。唯一持
参している京都市内バス路線図を見ると止まりそうにみえたのだが。
地図上でバス停「宝ヶ池」の西隣にある「花園橋」がアナウンスされたので降
りてみる。
太陽を見上げて方角を確認し、東へ歩く。いつの時代の旅なんだよ。
徒歩5分で宝ヶ池駅に到着。
ここもタイミングよく鞍馬行きの電車が7分の待ち合わせでやってくる。20分
ちょっとで鞍馬駅に到着。下車せずに折り返す。もちろんそんな乗客は僕だけで
ある。
鉄道というのは目的地に着くのが目的なので(当然だが)、着いたら降り
るものである。しかるに、この行動。テツに生まれて、すみません・・・。
そこから南下すること15分。
僕は回りに何もない二軒茶屋駅で降りる。
<中略>
長いエッセイですのでここで読者も一服どうぞ(^^)
(→大学潜入記はここのエッセイ)
京都産業大学潜入を済ませてから、今度こそ本当に市内に戻る。
叡山電鉄で南下、終点の出町柳駅で下車。ここからは「テツわる」ではなく「
バスわる」になる。
京都のバス。
便利、複雑、安価、混乱、観光、混雑。
いろいろな感想はあるだろうが、まあそういうことである。
市バスと京都バスで共通のカードがないとか(←あるかもしれないが知らない
)、観光地から観光地への移動が難しいとか、いろいろな問題点はある。しかし
、このバスをうまく利用してこその京都観光と言える部分もある。もう少し言え
ば、この混乱を招くバスで移動することそのものが京都観光の一部である。
さて出町柳からどうやって銀閣寺に行くか。
東の方角に京都大学のある百万遍があるから、その方向に行くバスを選べば何
とかなるかな。つまりバスそのものではなく、方角と道路とバス停を見ながらバ
スを選択するわけだ。お、ちょうど「銀閣寺」という表示があるバスが来た。さ
すが俺だねと乗り込む。
このバスがどこ行きなのかわからない。
京都市内のバスは循環型が多いせいもあるのだろうが、表示には行き先だけで
なく経由先が複数書かれているのである。でもちゃんと、京都大学の前や北白川
のあたりを東に向かっていく。銀閣寺方面に向かっているのは間違いない。アナ
ウンスが。
「次は銀閣寺道です」
さあどうする?
「銀閣寺道」というバス停は銀閣寺へ至る道の入り口にあり、そこから銀閣寺
までは徒歩15分くらいかかる。しかしもう1つ「銀閣寺前」というバス停もある
のだ。そこからリアル銀閣寺までは徒歩5分。
<北>
・→→→→・→・
銀 銀 銀
閣 閣 閣
寺 寺 寺
道 前
<南>
バスの表示に「銀閣寺」とあったなら「銀閣寺前」まで行くんだろう、と読者
は思うだろう。
それが違うんですねえ、京都の場合。観光客用に表示を設定しているせいなの
か、「銀閣寺」という表示は「銀閣寺道」を通るときも「銀閣寺前」を通るとき
も使われるのである。つまり、バスの表示自体は
「ま、銀閣の近くを通りますどぇ。関東もん? あらあら、なら、ぶぶ漬けでも
食べてっておくれやす」
としか言ってくれないのである。
手元にはバスの経路図がある。
しかしそれだけではこのバスが「銀閣寺道」から「銀閣寺前」まで行くのかど
うかわからない。いや、正確にはわかるはずなのだが、鉄道と違って「駅間距離
」が少ないから検討する時間がないのだ。
安全策:ここで降りれば銀閣寺まで徒歩15分
冒険策:1駅(バス停か)待てば銀閣寺前か、それ以外
冒険してもいい頃。
「銀閣寺道」を通過し、バスは左に、つまり北に曲がった。この時点で冒険は
失敗とわかる。「銀閣寺前」に行くならバスは直進するはずなのだ。すぐに降り
ますブザーを鳴らす。北白川高校前で下車。1駅(バス停だってば)ぶん歩いて
銀閣寺道に戻り、銀閣寺前までポツポツ歩く。このあたりは京都産業大学と違っ
て観光客がけっこういる。当たり前か。
「銀閣寺道」から「銀閣寺前」までの道は散歩に適している。
バスが通る道でありながら、そのわきに小さな川があり、散歩用の道が整備さ
れている。川辺には桜の木が植えられている。まあ今は桜の季節ではない。この川の北岸
に旨いソバ屋があったのだけど、もう店名は覚えていない。
バス停「銀閣寺前」に着いた。
さあ銀閣寺へ、なんてことはしない。あまり面白い寺でもないので(すいませ
ん)無視して哲学の道へ進む。銀閣寺無視→哲学の道というコースはもう4回目
くらいだろう。ゆっくり歩いて30分もすれば南禅寺にたどりつく、勝手知ったる
コースなのだ。
哲学の道それ自体は、それほど歩きやすい道でもない。
ただクルマが通れないために落ち着きがある。こうやって銀閣寺あたりから南
下する場合は左手に山を見ながら歩く。紅葉の季節も悪くないが、ここも桜の季
節がいちばん美しい。
南禅寺に着いた。
さてどうするかな。今は3時過ぎ。6時に祗園近くの店で友人と待ち合わせの
約束がある。手土産を買う必要を考えながら行動することになる。まずは西に向
かう。蹴上のインクラインから流れる疎水をみながら、動物園の前を通る。もう
少し時間が早ければ入園したけど、夕方の動物園ってのも不気味だし。さらに歩
いて、大きな鳥居で有名な平安神宮前に着く。
「銀閣寺道」からバス停で数えると、11個ぶんの徒歩移動である。
さすがに歩きつかれて、バスに乗ることにする。このあたりは観光客でごった
がえしている。つまりバスの本数も多い。京都駅直行のバスをやり過ごしてから
、四条方面に向かうバスを見つけてのりこむ。
7つ目の四条河原町で降りる。
ここが京都の中心的な繁華街。デパートもいくつかある。その1つの中に手土
産購入にふさわしい売り場があることを確認してから喫茶店で一休み。いかにも
玄人好みの渋い喫茶店であったが、マンデリンブレンド380円はいま一つのお味
。5時前になったのでデパートへ戻り、手土産を買う。
さて、待ち合わせの祗園方面に行こうか。
店は祗園より少し北にある八坂神社(←隣に知恩院)のとなり、桜の名所とし
て有名な円山公園の中にあるという。行けばすぐに見つけられる自信はある。四条河原町から歩いても30分くらいだろうし、バスを使えばもっと早いだろう。
でも暗くなってきたことだし、万が一迷って待ち合わせの店が見つからず待た
せるというのも悪い。
安全策でタクシーを使うことにする。そうすると、ちょっと時間が早い。たま
には雑踏を歩くのもいいか。修学旅行生がオミヤゲを買うための「新京極通り」
を散歩する。あれあれ。
ずいぶんと様変わりしている。
観光客をダマすための土産店が多かったのだけど、普通の中
高生が出入りするような店が今は多くなっている。感覚としては、渋谷と原宿を
足して2で割ったような。ゲームセンターなぞもたくさんある。ま、ありがちな
ガキの街である。修学旅行生は「新撰組Tシャツ」とかどこで買うんだろう?
「二条城ペナント」はいずこ? 僕は買わないけど・・・。
三条通りに出てタクシーを拾う。
待ち合わせの店名を告げると、円山公園内にある店は少ないので行けばわかり
ますとのこと。京都のタクシーの運ちゃんは全日本的に珍しくフレンドリーだ。
短距離でも文句を言う人はいない。たいてい話し好き。このおじさんもよく喋る
。出町柳は昔は栄えていたとか、沖縄駐留米軍の話とか。
東山三条で右折。
これで南下することになるから、八坂神社が見えてくる前に左折するはずだ。
しかしクルマは八坂神社を通りすぎてしまう。確信がないまま、えーと、行き過
ぎてないすかと聞いてみる。
「あ、すんまへん。話に夢中になってましたわ。お客さん、関東もん? ほな、
ぶぶ漬けでも喰っていきなはれ」
というのは冗談で、ちゃんと「1メーター分は引きます」とのこと。
当たり前
だろ。ってか、今ここでメーター止めろよなあ。よそ者の俺だって場所がわかっ
てるんだぞ。
無事に店に到着。
以下、個人情報につき大きく省略して翌朝。
お泊りをさせてもらった家族と「梅小路蒸気機関車館」へ。
ここで蒸気機関車が見られるという。しかも、時間によっては実際に走る姿が
見られるという。僕は9時に京都駅を出る特急に乗る予定だったが、1本遅らせ
て観にいこうということになったのだ。
僕は数あるテツの種族の1つ「車両族」ではない。
あくまで実車族であるから(用語説明はここのエッセイ)、蒸気機関車にかけ
る特別な熱い思いはない。特に乗りたくもない。しかし、いやしくもテツ修行中
やり直しの身を名乗る以上は、最低限のテツ的教養として目を養っておくべきだ
と判断した。あくまで理性的・合理的な行動である。
「要するに、蒸気機関車が見たいんでしょ」
非テツは黙っていなさい。
テツにあらずんば人にあらず。
蒸気機関車は15両くらいあるのだろうか。
その半分くらいが実際に動く、つまり「生きた蒸気機関車」であるとのこと。
すげえな。運転席に乗り込むこともできる。もちろん乗り込んでみる。いや、特
に興味があるわけじゃないんだが。
運転席からの視界が悪い。
前方が見えるといえば見えるが、100メートル先に障害物があっても見えない
くらいの小さなのぞき窓があるだけだ。昔は、と言っても50年くらい前だろうけ
ど、こんなんで鉄道が運営されていたんだなあ。
実際に走る姿は見れなかった。
今は午前10時過ぎ。ここから車で京都駅まで5分ほど。11時に発車する特急に
乗るのである。
さあ、テツは京都を駆け巡った。
一時的に大学潜入家を名乗ったり、「バスわる」的な記述になったりはしたが
、テツはブーメランのように鉄道にきっと帰ってくる。なぜか?
そこに、テツ道があるから。ああ。
追記:ぶぶ漬けとは「お茶漬け」のこと。「ぶぶ漬けでも喰っていきなはれ」と
うのは関東人(または非京都人)をバカにするときの表現だとか。「さっさと帰
れや、ボケナス」という意味。本当かなあ。
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