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おい、そこのハゲ。
これほど人を、特に男性を侮辱するに適切な表現はないだろう。
またあるいは、
四の五の言ったってさ、あいつはハゲだからな。
というのもキツイ。ハゲと言われるくらいならば、人格を否定されたほうがマシである。それほど、ハゲとは厳しい侮蔑語である。
ハゲは、少しも悪いことではない。
理由は3つほどある。まず、予防できない。進行の抑止などという小技はなくもないが、基本的に運命である。遺伝ゆえか環境ゆえかという学説は処々あるようだが、ハゲる奴はハゲなんだし、ハゲてしまえば遺伝要因でも環境要因でもハゲはハゲ。赤い糸で結ばれた異性とはたいてい出会わないように、ハゲ化の運命を背負って生まれてきたからには、ハゲライフをレッツ・エンジョイ、これ以外に選ぶ道はないのだ。
2つめの理由は、ハゲは社会に一切迷惑をかけない。
ハゲは明らかな身体障害の1つではあるが、老化で足腰が弱くなって人の通行をさまたげる、なんてことはない。駅の階段で杖をついた老人が自分の前を歩いてれば、しかもそれがラッシュ時であれば、声に出さずとも「ジャマだな」と誰もが思うだろう。老人を否定する意味ではなく、「ちょっと配慮しなきゃ」と思うというだけのことだ。つまり、ハゲが前方を歩いていも「ああ、そこにハゲがおるな」とは思うが、それ以上のことは誰も何も考えない。誰も全く迷惑していない。
最後の理由は、ハゲは意外にカッコイイ。
いまの厚生労働大臣などもハッキリ言ってハゲだし、俳優の渡辺謙なぞも明らかにハゲだ。サッカー選手のジダンだってハゲだ。しかし、彼らを「ハゲだからカッコ悪い」という人は少ないだろう。職業としての坊主なども人工的ハゲと言って何ら差し支えないが、「坊主はハゲだからカッコ悪い」なんて思っているのは子どもだけだろう。坊主はうつくしい。ハゲには、人を高尚たらしめる霊力が宿っている、という考えかたもあろう。
しかるに、そこにハゲがいる。
あ、ハゲだ、とあなたは考える。すると、急に、
ってか、ハゲだから、あの人。
と考えたくなる。繰り返すがハゲで悪いことは何もないのに、ハゲ的状況は人をして「ハゲだから的否定的認識」を持たしめる。もし万が一、ここまで読んできて
「くそー、ブチ殺してやる信原ぁ!」
と思った人がいても、
「でも、やっぱり、オレ、ハゲなんだよな」
という自己否定の物語を形成しているはずだ。ハゲは肉体的現象であるのみならず、人に自己尊厳の欠落をかならずもたらす心的現象でもあるのだ。
さて、ここで私見を述べよう(上記は全て一般論である)。
ハゲは少しも悪くない。ハゲを非難したことは一度もない。僕の過去日記から「ハゲ」を集めてみた。失礼して自己引用。
2007年7月26日
>次にハゲ。大まかに言えば、30を過ぎて数年すると「あれあれあれあれ・・・」とガクゼンとする人が半分くらい。これはほとんど防げないだろう。
2007年4月6日
>昨日の飲み会で薄毛が話題になった。
アバウトに4割くらいの参加者は気になっているという。「女とプールに行くのはイヤだ」「髪を洗うとゲッという瞬間がある」などなど。ハゲなり薄毛なりは自分の努力どうなるものでもないので、悩みは深刻なようだ。
僕の場合は3年に1回くらいのペースで「げ。薄くなってる」と思うことがある。たいていは精神的な問題がある時期で、おおむね半年くらいで元に戻る。今はふさふさの時期で問題なし。
2005年12月14日
>断っておくと、僕自身はカツラをしていることに対して何の偏見もないし、むしろそうしている人は外見に配慮するお洒落な人だと思っている。じっさい、他の項目(まあたとえば肥満とか)に比べて予防するのが相当難しいし、僕もハゲ家系のようなので「イザとなったらズラだよな」と思っている。
したがって姉歯氏がズラであってもなくても信条的にはどうでもいい。ベツの言い方をすれば心情的には気になると言えなくもないわけだ。
ほれ、ハゲの悪口はどこにも書いていない。
むしろ、ハゲを肯定・援護していると言って良い。別にハゲで何も悪いことはないですよ・・・。
と書ける条件は何か。
これがこのエッセイの主題である。人が他人のハゲを擁護することができるのは、どういう場合か? ってことですね。それはもちろん
自分がハゲではないこと
に決まっている。ひるがえるに、
自分がハゲていたら弁護も擁護も不可能
であり、しかも、
自分がハゲてきたらどのように精神の安寧を保てば良いのか
という問題点が残る。そうです。オチはわかりますよね?
2007年夏〜秋、信原はハゲ進行中。
ああ、なんてことだ。
どうするんだ。どうなっているんだ。上記の引用にあるように、数年おきに「げ。薄くなってる」という時期が来る。それはわかっている。このハゲは一時的なもので、半年もすればフサフサに戻る。たぶん、この夏は異常に暑かったし、新居騒動で何のかのと精神的に不安定になっていた、というところだろう。
しかし。
もしこのままハゲたらどうするんだよぉぉぉ!
だってそうでしょう?
フサフサに戻るというのは戻ったあとだから書けることであって、ハゲ進行中の今の僕が未来のことを知っているわけじゃないですよね。このままのペースで抜け毛が進行すると、来年の春あたりがヤヴァイ。今年度の生徒様にはいいですよ。毎週のように観るから進行に気付かないだろうから。でもですね、来年の3月に新年度が始まって、その新しい生徒様が、
「今日から英語の授業だったんだけどさ、なんかハゲの先生だったよ」
「授業はいいけど、っていうか、ノブってハゲ?」
なんて言ってたらどうするんだよぉぉぉ!
ということで、このエッセイは最初と最後でループしているわけです。
追記:このエッセイがシリーズ化されないことを真剣に望む(-_-;)
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