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by coincidence(偶然の一致で) 9月15日
  私はここ10日ほど、仕事に明け暮れる日々を送っていた。
  だから今日はいっさいを放棄して人生を豊かにする余暇を楽しむことにしよう。しかしまずは家事だ。家事をやり残すことにガマンがならないこの性格、美人の嫁を得るためには欠かせない素質だが素質が成功を保証するものでもないらしい。


  まずは豪華な昼飯に挑戦だ。
  4皿ほどで1000円を超えるという超高級回転寿司を堪能したあと、私は映画館に向かった。今日のお目当ては宮崎あお、ではなくウワサの人気映画『NANA』である。観客が女子ばかりというウワサも聞きつけており、館内が暗くなった直後に潜入することに成功した。よく考えると遅刻したように聞こえるが、もちろん予告編(あの邪悪なる時間よ!)の最中ということで許してもらえるだろう。

  館内が明るくなる前に出ることにも成功した(感想はエッセイで)。
  暗い中で様子を探る限り「男子」「初期中年」のいずれかに属する人種はいないように思えたが、これはわからない。
  間違っても後ろ指をさされないように脱出したわけだ。ところが、通路に出てみたら次回の観客が列を作って待っていた。なんということだ。

  行列の脇を足早に過ぎ去ってみる。怪しいヒゲを生やした初期中年男子の観察によれば、やはり行列には男子がいないようだ。真下を向いて気配を殺して歩いたので、とりあえずイヤな顔はされなかったようだ(少なくとも私は気がつかなかった)。


  本屋に寄る。
  村上春樹の新作短編集『東京奇譚(きたん)集』が発売日直前なのだ。案の定、フライングで発売されていたのでホクホクして帰宅する。
  読むのがもったいないが、誘惑に耐え切れず1本目を読む。

>偶然の一致というのは、ひょっとして実はとてもありふれた現象なんじゃないだろうかって。つまりそういう類のものごとは僕らのまわりで、しょっちゅう日常的に起こっているんです。でもその大半は僕らの目に止まることなく、そのまま見過ごされてしまいます。

  春樹らしい語り口だ。私は彼の短編がそれほど好きではないが、今回のそれらは気に入るかもしれない。


  永久機関のように読み続けそうになったので、プールに行く。
  ああ、休館日だった。なんてこった。帰宅して郵便ポストを覗いたら新築マンションのチラシがあった。条件はなかなか良さそうだが、金銭的な折り合いがつきにくい。
  しょうがない、ここは趣味と実益を兼ね備えた騒音の多い場所に出向くべきだろう。ちょうど考え事もあったし、「やむをえない・及び金策に適切な行動」と 見なしても差し支えないだろう。

  43500円目で初の大当た・・・じゃない、考え事に少しだけ着想することができた。おかげで負けを5500円で抑えることができた。起死回生に近い6連チャ、ではない、パ・・・の話は書かない方針なのだ。
  よく考えると、マンション購入資金調達を目的とする行動として適切でなかったような気もしてくる。


  そうだ。
  映画館でも目を上げて歩いていたら将来の嫁に出会っていたかもしれないし、騒音の多い場所でも隣の台に座れば購入資金を補充できていたかもしれない。そう、偶然の一致は実はありふれた現象なのだから。
  ・・・こじつけ。


追記:エッセイ155「世の中研究家→達人への道2」、同156「同3」、同157「『NANA』」をアップしました。
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